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幸せに暮らしましたとさ  作者: シーグリーン


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129/216

ただし3次元に限る

 




『ずっといて下さっても構いません。私になんでも仰ってください。命ある限りヤマ様のお傍におりますので』






 突然始まった、御使いと領主の主従プレイ。


 あー……うん、特に望んでないな。





「……サンリエルさん、神の踊りが終わってもしばらくは御使いが港に留まると、お仕事中の皆さんに今すぐ伝えられますか?」



 あなた達の神とひそひそ話をする時間を下さい。


 サンリエルさんは「かしこまりました」と族長さん達の所に戻って行った。よし、ゆっくりでいいですからね。






「……チカチカさん、サンリエルさんは神の力の恩恵を他の人の3倍は受けてるからあんな感じなんですよね?」



 お願い、そうだと言って。



「元々の性格の影響もある」



 うわ……。



「サンリエルさんて多才だしまあイケメンだしお金持ちだし権力まである上に何でもいう事聞いてくれそうだし、そういうヒーローが出てくる話とか抵抗なく読めるんですけど……」



 サンリエルさんの言動にもっとときめいたり、喜びの感情が湧いてもおかしくないはずだ。

 地の一族の人や美人にはちゃんとときめくし。今日はティランさんにもさっそくときめいたし。



「もしかして私も異世界補正で鈍感系主人公になってます?」



 実は知らぬ間に誰かに好意を寄せられてるのか? 誰だ、出てこい。



「なってないし、異性としての好意も寄せられてない」


「……あの、私口に出してました?」


「はるの思考回路は単純だから」


「…………」



 今とてもロシアン受け身ごっこをしたい。



「……そんなの口に出せないだけで秘めた思いとか抱えちゃったりしてる人がいるかもしれないですしー」


「はるはあの人間を人間と思ってないから」


「……どういう事ですか?」



 いきなり話が変わったし難しくなった。禅問答かしら。



「みんなリアルな創作物だと思ってるって事」


「創作物……」



 あの人間ってサンリエルさんの事だよね……? 創作? みんな?



「はるには難しかったね」



 頭を撫でられている感触がする。

 ちょっとちょっと、勝手に話を終わらせないでください。


 さらに質問を重ねようとするも、サンリエルさんがこちらに向かってくるのが見えた。歩くのはや!



「お待たせ致しました。皆とても喜んでおります」


「ありがとうございます」



 お礼を言いながらもサンリエルさんを改めてじっと見る。

 人間だよねえ……?



「準備が出来ましたー!!」



 チカチカさんの言葉をじっくり考える間もなく、ガルさんの声で意識は祭りに引き戻された。



「ガルさん……少しお声を落とされた方が……」



 笠補正なのかバルトザッカーさんの声もばっちり聞こえてくる。

 まあいいか。今はお祭りを楽しもう。



 ガルさん達騎士の集団は、港のステージのような場所に集まっていた。

 すっと近付いてガルさんに話しかける。



「どの位置からが1番楽しめますか?」


「神の島を背にご覧になっていただければ!」



 上空からなので少し距離はあるが、騎士の人達に近付いたのは失敗だったかもしれない。

 ガルさんは緊張しないタイプなのはわかったが、周りの騎士の人達の顔が強張ったのが目に入ってしまったのだ。



「わかりました」



 余計な事は付け加えずに、すっとその場から離れる。見物する場所も近過ぎないように気をつけた。

 サンリエルさんは船に乗ってまで私の近くに移動してきたが、私の存在に緊張しないという点では助かっているので気にしない事にした。

 視線の強さはそろそろやんわり伝えてもいいかもしれないが。






 騎士による集団演武はひと言で言うと、早送りのアクション映画だった。

 太鼓のような音に合わせて集団が動き、かと思いきや1人ずつ戦い始めたり。

 本物の武器ではないようだがとても迫力がある。


 ガルさんは3人の騎士を相手に華麗に舞っていた。ほんとに舞うように動いていた。

 バルトザッカーさんもガルさんも外見から荒々しい感じを想像していたが、美しいという言葉がぴったりの動き。


 というかみんな腹筋どうなってんの? 腹筋というかインナーマッスル。なんでそこで体がぴたっと止まるんだ? 重力は?


 今回は声を漏らさないように気をつけて録画し、女性の騎士の人達をそれぞれアップにして思う存分堪能した。

 ライハさんと話していた黒髪の女性騎士は動きが早すぎてよくわからなかったけど。でも女性騎士という言葉の響きだけで楽しめる。

 ライハさんは神の踊りに参加するから集団演武には出ていないけど見たかったな。







「素晴らしかったです」



 演武が終わったのでステージに近付く。ありきたりな言葉で申し訳ないが本当に素晴らしかったしね。



「ありがとうございます!」



 ガルさんの声を筆頭に、騎士達全員が何やら同じポーズをとった。やだ、かっこいい。敬礼なの?

 怪しまれるのを承知で写真を数枚とっておいた。ほんとは角度を変えて何十枚も撮りたいけど我慢した。

 これって制服萌の一種なのかしら。


 サンリエルさんはじめ、ガルさん達はカメラを不思議そうに見ていたが、御使いアイテムと解釈してくれたようで質問はされなかった。御使いの肩書便利だわ。





 次の出し物の準備が整う間は関係者席の近くに戻る事にした。


 こういう時はいつもカセルさんとアルバートさんの近くに行くのだが、今日ばかりは近付けない。

 アルバートさん、気楽にな。



「サンリエルさん、族長さん達の席に戻りましょうか」

「はい」



 おお~漕いでるな~。



 よそ行きの御使いはどんな距離感で接していたのかいまいち思い出せないが、サンリエルさんより先にすいっと族長さん達に近付く。

 そもそも御使いは上空でじっとしていればよかったのか? まあなんでもいいや。






「こちらに構わずお話を続けてくださいね」



 使者の対応中だった族長さん達が一斉にこちらに向けて膝をついたので、気にしないよう告げる。

 失敗した。こちらを気にしない訳にはいかないよね。

 もっと空気を読める御使いになりたい。



(やっぱりカセルさんとアルバートさんの距離感が1番楽だな~)



 ぼんやりと空中に浮いて準備が整うのを待つ。

 戻って来ていたリレマシフさんはロイヤルをうっとりした顔で見つめていたので、まあ役に立てたとは思いたい。

 でも他の族長さん達にアクセサリー自慢をするのはやめて欲しい。みんな悔しそうな顔になっているし。サムさん以外。


 作ってもらったアクセサリーは島のみんなに身に着けてもらって写真撮影済みだからね。

 だからガルさん、そんな悲しそうな顔をしないで。ネコ科が落ち込んでいるのは見たくない。


 いつかすべての守役様の姿が見られるといいね。守役様の気持ち次第だけど。

 そして、サンリエルさんの無表情が何やら勝ち誇っているように見えるのは見間違いじゃないと思う。







 演奏の準備が整ったようなので、少し関係者席から離れた。

 あのステージも1週間もたたない間に作ったんだよねえ。すごいわ。


 演奏に参加するメンバーは風の一族がメインだが、他の一族やそれ以外の住民の人もいるみたいだ。

 そして――



(エルフにハープ! エ、エルフにハープ!)



 心の中で大興奮。



 ティランさんはハープっぽい楽器を手に椅子に座っていた。なんて期待を裏切らない組み合わせ。

 他の人達もヴァイオリンに似た楽器を構えていたり、使用する楽器は細部は変わっていたりするが全体的に見た事がある形状をしていた。


 そしてまさしくファンタジー溢れる光景の中始まった演奏もすごかった。


 テンポが速い曲の時の手の動きが恐ろしい事に。

 指つりそう。なんであんなに早く動かせるんだろう。


 しかも歌いながらの演奏。美声過ぎる。これは家でのBGMにするしかない。

 歌っているのは風の一族が多かったので、もしかしてカセルさんも美声の持ち主なのかもしれない。

 モテ要素多過ぎ。これは今度歌ってもらうしかないな。







「皆さんありがとうございます、素晴らしかったです」



 演奏が終わり、お決まりの褒め言葉をティランさんに伝える。

 同じ事しか言っていないが公平な感想でいいと思う。



「身に余る光栄でございます」



 風の一族の人が多いからなのか、大部分の視線がキイロに注がれているのがなんとなくわかる。

 キイロが羽をばさばさやるとみんな「おお……!」ってなってたし。


 キイロなりのサービスかと思ったらただ威嚇をしていただけなのでさっさと関係者席に戻る事にした。





「ヤマ様、これから神の踊りを奉納致します。私は神の音楽を担当致しますので」



 さっそくのアピールありがとう。



「楽しみにしています。神の踊りは島に向けてお願いしますね」


「かしこまりました」



 そして上着を脱ぎ、腕まくりをし始めるサンリエルさん。



「領主様!」

「御使い様の御前ですよ」



 脱ぐの好きだねー。



「衣装に着替えるだけだ」


 そう言ってあのグラデーション衣装を羽織るサンリエルさん。

 え? それだけ? 腕まくりの意味あった?



「ここで着替える事はないでしょう!」



 サンリエルさんはイシュリエさんに怒られながら連れて行かれた。そりゃそうだ。



「申し訳ありません……。恐らく御使い様に近くで衣装を見ていただきたかったのではないかと……」



 申し訳なさそうなサムさん。あなたはなにも悪くないぞ。



「とても綺麗な衣装ですね。技の一族の方達が作ったんですか?」


「はい。技の一族が主導となり、一族以外の住民にも手伝ってもらいました」



 この短期間で色々と完成させ過ぎ。ほんとこの街の人達すごいわ。



「あの! お、私も神の衣装を作ってもらったんです!」

「着てもよろしいでしょうか……!?」



 前のめりなガルさんとリレマシフさん。



「どうぞ」



 にこりと許可を出すと、ここにいるお偉いさん達が全員がさごそと椅子の下から衣装を取り出し始めた。

 まじか。



「……皆さんも作ってもらったんですね」


「代表者の特権というものですね」



 嬉しそうなバルトザッカーさん。



「全住民が衣装の順番待ちをしている有り様でして……」



 ティランさんの困った顔も素敵です。困りながらも衣装はばっちり着込んでますけど。

 使者の人達も驚きの視線を向けているし。

 でも王女様は目がきらきらしていて可愛い。サムさんから衣装の説明を受けて楽しそうにしている。



 御使い的にここは使者の人達と交流を持った方がいいのかしらと考えていると、サンリエルさんがこちらに向かってくるのが見えた。



「あれ? 領主様が戻ってきましたよ」

「私達が御使い様に声を掛けて頂いているのが気に入らないんじゃない?」

「いくらなんでも……」



 いや、そのいくらなんでもを飛び越してくるのがサンリエルさんだからね。なんせ主従プレイを無表情で始める人だから。



「ヤマ様、もうすぐ準備が整いますのでこちらへどうぞ」



 うん、飛び越えてきた。



「まだ準備できてないじゃないですか」

「御使い様に失礼ですよ」



 サンリエルさんてその内下剋上とかされないよね? 一族だから大丈夫だとは思うけど心配だ。



「神の踊りが終わりましたらこちらに戻ってきますね。また皆さんのお話を聞かせてください。では案内をお願いします」



 どっちの顔も立てる大人御使い。



 サンリエルさんが謀反を起こされませんように。





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