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幸せに暮らしましたとさ  作者: シーグリーン


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115/216

性分

 



 もう一度曲を流すと、サンリエルさんもカセルさんも問題なく踊れているようだった。

 アルバートさんの方に意識が向いていたので細かいところは見ていないが、<地球>さんも特に何も言っていないので大丈夫なんだろう。



「それでは今度はカセルさんは女性の踊りを覚えてください。サンリエルさん、指導をお願いしますね。アルバートさんはこちらで。本日すべてを覚えなくても大丈夫ですよ」



 モフモフに囲まれて踊りにくそうにしていたアルバートさんをさりげなく救出する。踊りを教えてあげるつもりだったのかもしれないけどさ。

 白フワは応援女子のポンポンみたいになってて可愛かったけど邪魔でもあったし。



「アルバートさんは部分ごとに分けて覚える方が覚えやすいですか?」


「は、はい……」


「では街に戻られてゆっくり広いところで練習した方がいいですね」

「そこの人間、海の上を歩けるようにしてやった」


「…………」



 やっぱり覚えるまで家に帰す気ないんだな。



「そういう事でして……」


「は、はい! ありがとうございます!」



 真っ直ぐな瞳をしてるな……。カセルさん達も。



「ではこちらは音楽は流さず初めから。――<地球>さん、あちらに音楽をお願いします。ついでに海上歩行も」



 カセルさん達は次でもう振りは完璧に覚えるだろうからどうやってアルバートさんを家に帰すか考えないと。

















「――これはるちゃん好きだと思うよ~」


「どういう感じの味ですか?」


「甘じょっぱい系かな?」



 ただ今、海上ティータイム中だ。サンリエルさん達に飲み物を差し入れしようとしたらこうなった。



 アルバートさんの踊り指導はサンリエルさんとカセルさんに任せている。

 サンリエルさんなんて弦楽器のようなものを華麗に弾きこなして指導しているし。この距離感が1番かっこよく見える不思議。


 予想通りカセルさんは男女それぞれのパートを一度見ただけで覚えてしまったので、アルバートさんは御使いに直接教わるよりカセルさん達に教わった方が良いと判断したのだ。

 街に戻るか聞いたところ、こんな機会はめったに無いとここに残る事をサンリエルさんとカセルさんは望んだ。

 アルバートさんは大丈夫だろうかとちらりと確認すると、カセルさんに教わるという事で嬉しそうにしていたので大丈夫なんだろう。

 そうか、そんなに御使いマンツーマンは嫌だったか。



「あ、美味しい。えーと、これは――代々伝わる……おばあちゃんの作るクッキーみたいなものか」



 目録と照らし合わせながら貢物をむしゃむしゃ食べる。サンリエルさん達には収穫してあったキウイメロンを渡してある。


 さすがに健康水を差し入れするのはまずいと思ったので、木の滝の水で守役スペシャルのお茶を淹れた。

 チカチカさんが神の力をどうにかして、良くわからないが薄めて――理解できなくて聞き流していた――まあとにかく飲んでも大丈夫だそうだ。

 島の食べ物をプレゼントした事もあったが、これ以上サンリエルさんが力を増すと良くない気がするので控えようと思う。



「そうそう、虹色鉱石の欠片はあげても平気ですか?」



 いつもありがとうごめんねの気持ちが物の提供になるのが何ともあれだが。



「力のある人間だと加護の恩恵を受けるけど」


「え? ……それってゲームで言う状態異常防止アイテムとかそういう感じですか?」


「もっと強力」


「強力……」



 そんなとんでもないアイテムだったとは……。



「じゃあ、虹色オブジェとか最初にあげた欠片は……?」


「この街にある限り効力は続く」



 おお……。適当にファンタジー生活を楽しむとは決めているが、完全にクダヤに力添えしてるな。今更だけど。近いからしょうがないんだ。

 そりゃあミナリームのあの気絶したおじさんも文句言いたくなるよな。



「はるちゃんはあれこれ考えすぎ~!」


「でも……」


「何の為にこいつがいるのさ!」


「チカチカさんですか?」


「そう、言ってしまえば全部こいつの手のひらの上だからね! はるちゃんの気にしいさんめ~」



 頬をつついてくる動作が若干めんどくさい。



「でも最初の手紙には世界を混乱させて迷惑かけたとかなんとか……」


「はるちゃんにそんな事出来ないって! そんなスペックは無いから! だからこそ選んだんだし」



 いやまあそうなんですけど……。



「はるちゃんのやる事で揺らぐような世界じゃないよ!」


「行動範囲も狭いし。カリスマ性もないし」


「はあ……」



 チカチカさんにわざと眉間のしわを寄せたおブスな顔を見せて悔しさをアピールしておいた。なんとなく。

 しかしこれも良い機会なので色々聞いてしまおうと思う。ダンスレッスン中の人達もいるけど。

 でも<地球>さんの関心をアルバートさんからそらす事ができるので良い作戦だと思う。というかそろそろ帰って寝た方が良いと思う。



「サンリエルさん」

「はい」



 演奏してたのに反応早いな。



「お時間は大丈夫ですか?」



 1時間くらいは練習してるよね。



「お気遣いありがとうございます。私達の時間はすべてエスクベル様、御使い様の為にありますので」



 いや、あの、重……。



「アビゲイルさんやアレクシスさんも心配してるでしょうし、これまで学んだところを通しでやって終わりにしましょう。音楽担当の方達も皆さんが戻らないと帰れないですよね?」


「はい……」



 サンリエルさんとカセルさんは残念そうだな。アルバートさんは嬉しさと残念さが半分ってところか。



「私も疲れちゃいましたので家に帰ってパジャマパーティーにしましょう。聞きたい事もありますし」


「おっ! いいね~!」



 良かった。アルバートさんは無事に帰れるぞ。

 みんなのダンスレッスンが終わる前に虹色鉱石の欠片でも取ってこよう。













「長い時間ありがとうございました」


「神の踊りを伝えていただき感謝致します」


「では最終日に。開始時間等はまた教えてくださいね」



 こちらをじっと見ているサンリエルさん達。白い霧に入ったところでアルバートさんだけ連れて来てもらう。



「……あれ? ひっ……!」



 振り向けばフルメンバー。正しい反応だ。



「渡したいものがあったので。これを――」



 そっと差し出したのは虹色鉱石の欠片。

 虹色エリアの岩が粉々になった光景は忘れる事にする。



「アルバートさんだけに渡しますのでカセルさんにも秘密に。もしかしたらカセルさんにはいつか同じものを渡すかもしれませんが」


「は、はい! あの……私に……でしょうか?」


「守役がいつも何かと――ダクスちょっと静かにしててね――いつもこのような感じなので。賄賂です」


「わ、わいろ……」


「そうです。袖の下とも言います」


「悪役はるちゃん!」



 ちょっと、アルバートさんとの間にふわふわ浮かないでもらえますかね。



「カセルさん達にはアレクシスさん達にカリプスを渡す役目を仰せつかったとでも」



 船に残っていたキウイメロンも渡す。



「なんとか口実を見つけてご家族で食べてください」


「はい……! ありがとうございます……!」


「あとその2つの欠片は肌身離さず持っていた方が良いかもしれませんね」



 効果を教えると挙動不審に拍車がかかりそうなのであえて黙っておく。



「は、はい!」



 慌ててポケットに欠片をしまうアルバートさん。あっまたキイロが頭に!



「踊りを楽しみにしていますね」



 手を振りながらアルバートさんを見送る。好きなだけ眠れ。おつかれっした。





「ふふん。1人だけひいきしましたよ。しかも御使いが」



 世界を混乱させちゃうかもしれませんけどねー。



「悪い顔だ~!」


「完璧な平等なんて存在しないけど」



 チカチカさんは全然何とも思ってないな。ぐぬぬ。



「――よし! パーティーパーティ!」



 時間も迫ってるし反抗期はやめて楽しもう。



「ベッドの上でお行儀悪く食っちゃ寝しましょう! 汚すぞ! だらしないぞ!」


「ミュージックは任せて!」



 選曲の話題で盛り上がりながら家に帰る。今夜は寝ないぜ。







 家に着いてすぐに温泉にざぱっと入り、ロイヤルにさっと水をかけてもらって部屋に戻る。服は適当に。

 マッチャに髪を拭いてもらいながらベッドにうつ伏せになりパジャマパーティーの始まりだ。



「質問攻めにします!」


「いいよ~」


「まずはクダヤの人達と島のみんなの関係ですかね」


「あれ? こいつに聞いてなかった?」


「詳しく聞こうと思いまして」



 チカチカさんを見る。



「それぞれの力が人間に作用しただけ。付け加える事は無いよ」


「偶然ですよね?」


「そう。こちらは意図していない」


「じゃあ昔の人の方が力が強かったのはなんでですか?」


「世界に力を行き渡らせる為に今より高濃度の力を流してたから」


「なるほど。高濃度」



 なんとなくは理解できる。



「今は高濃度じゃないんですか?」


「生命サイクルが定着してるから」


「サイクル……。なるほど」



 難しくなってきてるな。良くわからないけどいいか、こちらはお世話になっている身だし。



「<地球>さんはこの島みたいな拠点があったりしますか? 地球に戻ったら挨拶に行けたら行きます」



 ジャングルの奥地とか氷に閉ざされた世界とかは無理だけど。英語が通じる所で頼みます。というか本当は日本希望。



「こいつみたいに分かりやすい拠点の時期はとっくに終わっちゃったからね~。しいて言えば海の底? まだかろうじて神殿は残ってるかな~」


「神殿……。そもそも時期とかあるんですか?」


「バランスをとるためにね!」



 ……やっぱり惑星の話はあんまり理解できないな。海の底も行けそうにないし。神殿っていうワードは心くすぐられるけど。



「はるちゃんが将来トレジャーハンターになるなら場所を教えてあげてもいいよ!」


「見てみたい気もしますけど……。不安定な職業はちょっと……」



 なんでトレジャーハンター限定なんだ。



「野外活動だと日焼けしちゃうしね~。神アイテムがごろごろしてるから気が向いたら探してみなよ!」


「……そうですね」



 気が向いてもなかなか実行できないと思います。



「ええと、次は手の紋様についてなんですが――――」

















「……まだ起きてます……」


「もう寝ていいよ」


「まだ話が……あります……」


「今日はお昼寝してないし。朝も早かったでしょ」


「へいき……です…………」



 目が……。首がかくってなる……。でも寝るもんか。



「楽しかったよ」


「わたしもです……」


「――地球の生活では愛と光とは真逆の事もあるけどね、僕達はずっと見守ってるからね」



 なんでそんなもう会えないような言い方を。



「はるちゃんははるちゃんのままで幸せに暮らすんだよ」


「……はい…………」



 眠すぎて目を開けられないが、誰かが頭を撫でているのがわかる。<地球>さんだろうな……。







「じゃあ僕は帰るよ。しっかり世話しろよ、見張ってるからな」


「干渉し過ぎても嫌われますよ。――体が消失してきてますね。限度も見極められないんですか」


「偉大なる神の帰還にふさわしいよね~」





<地球>さんが帰ってしまう――





「――山内春を頼んだよ」


「はい」


「もしもの時はこの世界で面倒を」


「……はい」





 なにを。





「お前んとこに被害はいかない様にするからさ~」


「……私の力を見くびってもらっては困ります」


「――そうだね」


「そうです」









「じゃあな」


「はい」








 かえらないでください。








 かんしゃのきもちだってまだ――








「――あ、ハートが足りないからもっとたくさん扉に刻印しなよ」


「そうですね」









 それはいらん……。







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