第065話 節約上手な奥様
異世界翻訳を手に入れたハジメは最初に借り出した『楽らく生活魔法入門』を手にしている。
「じゃあ、これも……本の内容よ……頭の中に入ってくれ……」
生活魔法入門書に変化は無かった。
どうやら『初めての翻訳技能』とは本の仕組みが違うのかも知れない。
「仕組みが違う本って……」
自発的に読んで学習する本と、自動的に内容を学習できる本だ。
選択して借り出せれば魔法の取得が捗ると思われる。
「まあ、今はそれが出来ないんだけどね」
今出来ることをやろうとハジメは自分の状態を調べる事にした。
「まずは自分を鑑定」
ハジメのステータスパネルが展開される。
名前:石垣一
階級:3
HP:8/8
MP:8/8
BP:1.301
状態:正常
職業:謎こんにゃくと鳥居に夢中
筋力:4
頑丈:4
敏捷:5
魔力:5
・生活魔法(初級)
・クラフト魔法(線引き)
・隠密(光学迷彩)
知力:2
幸運:3
特技:(鑑定:初回特典)(傀儡廻し:初級)(異世界言語翻訳:初級)
装備:(ミナカヌシの仮面:初級)
特技欄に異世界言語翻訳が生えていた。
「BPも上がってるー」
BPが上がっているので魔力に振り分けることにした。
出てくる魔獣がスライムだけなので、筋力や頑丈・俊敏を底上げしても得にならない。
MPを増やす目的で魔力、オーブ魔石狙いで幸運を上げていくつもりだ。
「よきよき、MPが増えたね」
これで多少は魔法を使ってもMPの枯渇に悩まなくて済む。
「MPを自動回復出来れば捗るんだが……」
現状は回復魔法陣か睡眠するかで回復を図っている。
「ポーションみたいな物が有ると思うんだよな」
異世界物定番のポーション。HPやMPを回復してくれると言われている。
しかし、このダンジョンでは見た事が無い。
HPが枯渇すると気絶する。なので回復魔法かポーションなどが欲しかったのだ。
ダンジョンにソロで挑んでいるハジメにとって気絶は死を意味していた。
「元々、存在しないのか或いは自作するのか……」
ここで思い付いた事がある。
司書パネルの前にやって来た。
「回復薬の作り方の本を出してください」
『承りました……チックタックチックタックぼぉーん本』
ドンッと言う感じでテーブルの上に本が現れた。
こんどは結構な厚さある。如何にも魔法書と言った風体の本だ。
「うお、読み応えが有りそうだな……」
表紙には『節約上手な奥様の回復薬作り方100選』と書かれている。
「……」
何だろう……街中の本屋で見かけそうなタイトルであった。
「まあ、とにかく先に生活魔法入門を読まねば……」
・五大魔蘇属性(聖霊・火・水・風・土)を活用して魔術を実行する。
・生活魔法初級の内容(生活魔法は魔蘇を消費しない魔法である)
・詠唱「マイステ」属性「聖」効果「自分のステータスの簡易表示版階級・HP・MP・特技が表示される」
・詠唱「ファイア」属性「火」効果「マッチ程度の小さい火が指先に灯る」
・詠唱「ウォーター」属性「水」効果「飲水が指先から出てくる」
・詠唱「クリーン」属性「風」効果「服などの汚れを風力で落とす」
・詠唱「スリップ」属性「土」効果「荷物など手に持った物の摩擦が少なくなる」
・詠唱「ライト」属性「聖」効果「指先が光る・魔力を使えば強力に光らせることが出来る」
こういった内容が箇条書きで書かれていた。
「鑑定で調べたまんまだな」
やはり、生活魔法は名前通りに、暮らしていく上で使えれば便利という魔法であるようだ。
「入門と有るからには更に上位の生活魔法があると言うことか」
それは次回借りることにして、新しく借りた本を開いてみた。
「ぬあ!」
びっしりと文字が書かれている。
所々に薬草らしきイラストがあるがパッと見には判別が付かなかった。
「ここで読むのは面倒だな……」
ハジメはスマートフォンを取り出した。
図書館から本は持ち出せないので、写メして自分の部屋でじっくりと読もうと考えたのだ。
「あえ?起動しない……」
以前にも有った出来事である。ダンジョンに最初に潜った時にもスマートフォンは動かなかった。
その時には魔石を巻き付けることでダンジョン由来の物であると誤魔化して使用出来た。
今も魔石を巻き付けたままだ。またもや、ハジメの知らない何かが違うのだろう。
「くそっ……何でだよ」
ハジメは気持ちを切り替えて、自分のノートを持ってきて写本する事にした。
スマートフォンが使えないのは不便だが仕方がない。
「まあ、手間が掛かってしようがないけど、ダンジョンの楽しみ方の一つということにしよう……」
ハジメは自分にそう言い聞かせながら書き写していた。
トラブルが起きるのには慣れた気がしている。
「これって第四階層の草に似てるな……」
もちろん、ついでに鑑定しながら日本語に翻訳していった。
イラストも可能な限り模写した(美術の成績が壊滅的なのは知っての通りだ)
内容は意味不明だが、時間を掛ければ何とか成りそうな予感がする。
「ふふふ、謎のレシピで魔法薬を作る……魔術師みたいで格好良くね?」
洞窟の中。大鍋に薬草を入れながら呪文を詠唱する自分を想像していた。
ハジメが望んでいた回復薬を作れそうな目処が立ったのであった。




