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深層を目指す傀儡廻しのダンジョン探索日記  作者: 百舌巌


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第058話 創造主の思惑通り

 ハジメは第二階層に来ていた。ここには未使用の板状パネルがいっぱい有る。

 その板状パネルを使って線引きのスキルを試してみるのだ。


 ダンジョンの床で直接試さないのは、消せない事態も考えられたせいだ。

 まあ、消せないといって困ることは無いが、ちょっとみっともない気がしていた。


「取り敢えずはドゥカーイキの炭とスライムの体液を混ぜるんだよな」


 手元に有る炭と採取したばかりのスライム体液を混ぜてみた。

 出来上がったスライム溶液からは、ぶくぶくと泡が立っていた。


「…………やばくね?」


 不気味な反応にビビりながらも試行を続ける。

 床に直接では無く、転がっていた板状パネルに少しだけ垂らしてみる。


「まずは実際に固定できるかどうかだよな……」


 線を引いたら魔力を流して定着させる。


「魔力を流すってどうやるんだ?」


 ここで根本的な問題に突き当たってしまった。

 誰かが魔法の使い方を教えてくれる訳では無く、魔力を流すというふわっとした言い分しか知らないのだ。


「う~ん、線を固定!」


 変化が無かった。

 ハジメが行ったのは液を垂らしただけなので線では無いのだ。


「丸い点を固定!」


 その事に気が付いたハジメは言い方を変えてみた。

 あやふやな言い方ではダンジョンが反応しないのは学習済みだ。


「!」


 すると、点が不規則に火を放ちオレンジ色に輝いた。

 そして、輝きが消えた後には薄っすらと斑な点が残っていた。


「全然ハッキリしない点だな……」


 これはきっと炭のきめ細かさが足りなかったせいなのかもしれないと考えた。

 高い墨汁などしつこいぐらいに擦って作成しているのを見たことが有るからだ。


「ふむ、まずは炭をきめ細かくする工程が必要ですね……」


 ハジメはエアメガネをクィっと上げながら呟いた。

 こうなる事は想定していたらしい。

 まずは線というか何かしらの反応が出るのかを確かめたかったのだ。


「まあ、薄っすらと痕跡が残って居るのだから成功で良いかな……」


 ハジメとしては黒い点が残っている腹づもりであった。

 しかし、実際に残っていたのは、斜めにして見てみないと分からない物だ。


 最初から在った魔法陣と比べてみても色の濃さが全然違う。

 それと表面が少し凹んでいるような印象を受けた。

 恐らく、作成時に板状パネルに彫り込まれると推測していた。


「色が薄いのは炭が大きすぎてスライム体液に馴染まないからだろうな……」


 考えられるのは炭の粒が大きすぎるか、スライム体液の酸性が低いかだ。

 これは炭の粒を小さくすることで区別が付く話だ。

 スライム体液についても各階層のスライムを捕まえてきてサンプルを増やせば良い。


「色が薄いのはそうだとして……」


 線の薄い問題は目処が立ちそうでった。この辺りは試行錯誤で正解を探すしか無い。


「…………」


 しかし、新たに違う問題も立ち上がっていく。


「魔法陣の文様どうしよう……」


 初めて作成するに当たって結果が直ぐに分かるものが望ましい。

 第三階層には回復魔法陣が無いので取り敢えず良いかなと考えていた。


「まあ、それがダンジョン制作者の意図している事だろうな……」


 回復魔法陣の文様をそのまま描いていくだけ。

 これなら文様の意味が掴めていないハジメでも出来そうである。


「最初に筆が溶けた時には焦ったけどな……」


 最初はスライム溶液を垂らすのではなく、筆を使って直線を書こうとしていた。

 しかし、溶液が酸性であるため筆の先端が溶けてしまったのだ。

 納屋に落ちていたペンキを塗る為の物だから仕方ない事であろう。

 そこで、試験的に垂らしてみたのだった。


「持ってきた器具の中に、デカイスポイトみたいのがあるから次はそれでいってみよう」


 文様は理科室から貰って来た器具の中にケミカルスポイトがあった。

 ゴムの部分が経年劣化しているが、工夫すればまだ使えそうである。

 それを使えば直線ぐらいなら引けるだろうと考えていた。


「ゆくゆくは亜空間を作り出せる魔法陣を作成したいよね」


 指南書(属性:ライトノベル)によるとバッグに亜空間の属性を持たせて、何でも収納できるアイテムがある。

 マジックバッグだ。ハジメはそれを作成してみたかった。


 今、現在は安定して線が引けるようになるのが先決である。

 派生を考えるのはそれからだ。


「まあ、楽しいから良いけど」


 結果を従う実験は楽しい物だ。色々と試行錯誤するのも楽しい。

 探究心を刺激されたハジメのワクワクは止まらないのであった。


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