第050話 グングニルの槍
ハジメはダンジョンの外に吊るした缶を振ってみた。その後の経過観察だ。
チャポチャポと音が聞こえる。蓋を開けて見ると魔石と液体が残っていた。
「うん、一時間は持たないんだ」
やはり魔蘇が少ない外世界で魔獣は身体を保てないようだ。スライムは液状化していた。
ハジメは缶の液体をダンジョンの中に捨て、スライムの魔石だけを回収した。
本当は液体を検査したかったのだが器具が無いので諦めたのだ。
そのまま納屋まで行って錆びて使わなくなった物干し竿を手に入れた。
後は石の鏃と液体注入用のポンプを工夫すれば『グングニル(物干し竿)』の完成だ。
しかし、夕方に差し掛かっている。
「お腹すいたし蛙か……ケロケロ……じゃなくて帰るか」
寒めのオヤジギャグをカマしてから帰宅した。
「明日はホームセンターに寄って適当なポンプを購入しよう」
自宅に帰ってきたハジメは改めて自分のステータスを確認した。
名前:石垣一
階級:2
HP:7/7
MP:4/4
BP:0.903
状態:正常
職業:謎こんにゃく仮面
筋力:3
頑丈:3
敏捷:4
魔力:2
・生活魔法(初級)
知力:2
幸運:1
特技:(鑑定:初回特典)(傀儡廻し:初級)
装備:(ミナカヌシの仮面:初級)
階級が2に上がった時のままであった。
「階級が上がるのは経験値の獲得数なのは間違いないから……」
ただ、それがいくらぐらいの数値なのかは分かっていない。
前回はナナシスライム千匹分のBP1であった。次回は経験値5ではないかと睨んでいる。
「五に拘りが有るみたいだからねぇ」
次に上がった時には幸運に割り振ろうかと考えている。
幸運を上げてガチャで当たりを引きまくるというラノベを読んだ影響である。
「幸運を上げればオーブ魔石が得やすくなるかも……」
ハジメは傀儡廻しで使う人形のドロップを心から願っていた。
出来れば魔法スクロールもドロップして欲しかった。
「うん、アレも欲しいコレも欲しい……欲望の人って感じでヨキヨキ」
その日は大人しく眠り翌日目を覚ますとBPは3となっていた。
シン・スライムプレスはちゃんと動作していたようだ。
「よし!」
ハジメはBPを魔力に2と幸運に1を割り振った。
MPが4から5になる。HPは変化が無かった。
「魔法の修行が捗るな……」
ハジメは学校へと向かっていく。いつものようにボンヤリと授業をやり過ごしていた。
放課後になるとハジメはホームセンターにやってきていた。
ミューカス・スライムに対抗する為に、アルカリ液を注入するポンプが欲しいのだ。
最初は水鉄砲を使おうと考えていたが、アルカリ溶液が本体を溶かしてしまいそうなので諦めた。
「あ……」
適当な治具が見付けることが出来ずホームセンターをウロウロしていた。
すると、農機具コーナーに農薬散布機を見つけた。
「……これ納屋で見た気がする」
背負式で横に付いたレバーハンドルで空気を送って、圧力を掛けるタイプの散布機だ。
バッテリーやエンジンを使う本格的な物ではない。小規模農家向けタイプの散布機。
「これなら薬品耐性があるはず……」
そのまま自宅に帰ってきたハジメは着替えもそこそこに納屋へと向かった。
納屋の奥側を探すと埃だらけの散布機を見つけた。
レバーハンドルを操作するとギィギィと異音がしていた。錆びているのかもしれない。
「油をさせばまだ使えそう」
石垣家では自宅消費用の野菜は作っているが田んぼなどは放棄している。
爺さんが元気だった頃は、作っていたが施設に行ってしまった。
手間暇が掛かる割に設けが少ないのだ。労力に見合わない労働など誰もやらないだろう。
土地が勿体無い気がするが、だったらそういう奴がやれば良いのだろう。家ではやらない。
なので、農機具などは埃を被って納屋にしまわれている現状である。
「中を洗ってから薬剤を入れるか」
物干し竿はアルミ合金で伸縮が可能なヤツだ。長さが一メートル半で最大は二メートルまで伸ばすことが可能なようだ。
商品シールが貼りっぱしなところを見ると買い過ぎたのだと思う。
ハジメは石鏃を先端に取り付け、そこに散布機からのホースを這わせた。散布機の動作も問題ない。
「よし、後は第四階層で試してみるだけだ」
ハジメは出来たばかり槍を頭上に掲げた。
『グンニグルの槍』の完成である。
ハジメが新しい魔道具を創作しました
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