第049話 灰色狼の仮面
灰色狼仮面を手にとって改めて眺めていると宝箱が白く光った。
「ああ……やっぱり消失するのか……」
少し残念に思って眺めていたが宝箱は消えなかった。
光が消えた後も、蓋を開けた状態で鎮座しているのだ。
「おおっ!」
やはりダンジョン内と外世界は挙動が違っているのだろう。
何故なのか……分からない。
ちょっとだけ、考え込んだが諦めて次の実験をやってみる事にした。
それは衝撃テストだ。ダンジョン由来の物なので丈夫なはずである。
手には納屋で見つけておいた斧が握られている。
「これだけはやっておかないと駄目なんだよね」
ハジメは薪割り用の斧を思いっきり振り下ろした。
ガキンと金属同士がぶつかる音が響く。
「どうよ?」
宝箱を見ると傷一つ付いていなかった。
やはり外世界のものでは物理攻撃が無効になってしまうようだ。
「そうなるよねー」
ハジメはニンマリと微笑んだ。思ってた通りの耐久性能だからだ。
外世界では、斧を使っても傷一つ付けることが出来ない魔法の箱の爆誕である。
「次は経過観察の準備だな」
準備と言ってもダンジョン前にある秘密基地の屋根を少し拡張するだけである。
流石に自宅に持って帰るのはためらわれたのだ。
「一月ぐらい変化が無ければ大丈夫だろう」
特に根拠は無いが、来月まで残っているのであれば大丈夫だろう。
そうすれば部屋に持って帰えって飾ろうとほくそ笑んだ。
もちろん中にはお宝をしまい込む予定だ。お宝と言っても思春期男子のナニでは無い。
ダンジョンで採取している魔石だ。宝箱を開けた瞬間に魔石が山盛りの状態を眺めてみたい。
ハジメはそんな妄想をしてニヤニヤしている。
「次は仮面を鑑定……」
手に持った仮面に意識を集中した。
名称:ミナカヌシの仮面
機能:存在感を希薄化させる(認識阻害)
状態:休止中
制限:空を授かる事が出来る
ミナカヌシが何処の誰だか知らないがきっと偉い人なのだろう。
それを模して仮面を作成するのは良く有ることだ。
狼の神様なのかも知れないと考えることにした。
「ふむ……自分が空気みたいな存在になれるのね」
どうやら相手の認識阻害を起こさせる効果があるようだ。
「へえ、じゃあ普段の教室での様子と変わらないじゃん」
そう呟くとハジメは地味にダメージを受けていた。
Orz
「ま、負けないもん……」
自分で自分にクリティカルダメージを与えておいて強がりを言ってみる。
「状態が休止中と言う事は動作中にも出来るんだな」
ハジメは仮面を被って『認識阻害開始』と念じてみた。
身体が何かに包みこまれた気がする。
「?」
しかし、何かが変化した気がしなかった。自分の手足を見てみたが通常通りだ。
仮面を改めて鑑定してみると状態は動作中となっている。
「うーん、魔獣相手に試してみるか……」
早速、放置してある第一階層のスライムを相手してみた。
シン・スライムプレスには、他の階層のスライムが置かれているので使わないのだ。
ハジメはモゾモゾと動いているスライムを石斧で叩いてみた。
「ありゃりゃ」
力が強すぎて黒い霧に変化してしまった。
ハジメは二匹目に近付き、今度は弱めに石斧で叩いた。
スライムは少しだけ止まったが再び動き出す。
「うん……」
ハジメは仮面を被ったまま『認識阻害終了』と念じる。
それから同じスライムを同じ感覚になるように石斧で叩く。
スライムはハジメに向かって飛んできた。
どうやら自分はハジメに攻撃されたと認識したらしい。さっき止まったのはハジメを認識出来なかったせいだ。
「なるほど~」
ハジメは飛んできたスライムを石斧で叩き落とし止めを刺す。
やはり、レベルが上ったことにより身体能力が向上している。最初の苦労が嘘のようだ。
「じゃあ、色んなパターンで検証するか」
第一階層のスライムを石斧で狩って回った。
認識阻害をしている場合としていない場合。途中で認識阻害を実行した場合なども試した。
反撃されるのは認識阻害をしていない場合だけであった。
ここで、ハジメはふと考える。
「……これなら第四階層のスライムも楽勝じゃね?」
攻撃しても相手が分からなければスライムは反撃して来ないのだ。
このアドバンテージは大きい。
そっと近付いてアルカリ溶液を注入して回れば良い。
ハジメは『グングニル(物干し竿)』の創作を決めたのであった。
「ふふふ……隠密行動は漢の嗜みなのさ……」
はじめはエアメガネをクィっと上げた。




