第036話 草原のスライム
V字ポーズのハジメが魔法陣の中に現れる。
ハジメはスンとして立ち上がって転移魔法陣の周りを見渡した。
「うん、第三階層に間違いないようだな……」
第一階層・第ニ階層とも違う眺めにハジメは確信していた。
第三階層の転移魔法陣がある場所に到着したようだ。
「やっぱり、階層に居る魔獣殲滅がトリガーだったのかも……」
この場所は部屋というよりは広場風と言った感じ。
何しろ柱が四本あるだけで壁も天井も無かった。
「この柱は結界を示しているのか……な?」
転移魔法陣に魔獣は入ってこない。加護が施されているからだ。
その範囲を分かりやすくしているのかも知れないと考えた。
「ということは……この柱の位置までが加護される範囲ということか」
大きさにして五メートルといった感じである。
「んー、魔法陣のある場所ってこのサイズで統一されているのかもしれんな」
そんな事を呟きながら周りを見てみる。
草原が広がっているのだ。緩やかな起伏はあるが草しか生えていないのである。
「ソレ以上に不思議なのが……」
見上げると青空だ。しかし、太陽は何処にも顔を出していない。
薄暗い洞窟や石の廊下に成れた目としては眩しさを感じていた。
「草と言っても腰の高さまでしか生えていないけどな」
ハジメは草を鑑定してみると『ダンジョン草』とだけ出てくる。
一歩踏み出してみると草がガサガサと言い始めた。恐らく魔獣だ。
「お、早速お出ましか」
ハジメは石斧を構えた。
するとソフトボールサイズのスライムが草を掻き分けるようにして現れた。
「……また、お前か」
スライム。
第三階層に降りたハジメが初めて目にした魔物であった。
「もうちょっと強めの魔獣が出てきてくれると良いんだがな」
ハジメはスライムを鑑定してみた。『アーズススライム』と表示されている。
石斧を振りかぶってスライムに叩きつけた。しかし、一撃ではスライムをやっつける事は叶わない。
「コイツ……強いぞ…………」
ハジメは再び石斧を構えようとした時にスライムから触手が飛び出してきた。
「ぐおっ!」
触手はハジメの鳩尾にキレイに決まりニメートル程飛ばされてしまった。
「ぐぇっ……」
久しぶりにスライムの攻撃を受けたハジメは色々と戻してしまっている。
「ぺっ、直ぐにやられる俺様じゃねぇ!」
再びスライムに石斧を叩きつけた。だが、スライムは横に伸びただけでダメージは通っていないようだ。
逆に横殴りされてしまった。
「やばい……手作りの石斧とボロボロのキャッチャー装備だけでは駄目だ」
一旦、撤収して家から何か装備を調達することにした。
回れ右して走り出した。振り返るとスライムは動いている様子はなかった。
恐らく、攻撃を受けると反撃しているだけなのだろう。
ハジメは小1時間ほどで再び第三階層にやってきた。
「ふふふ……盾を装備したぜ!」
ハジメは背中に背負っていた盾を取り出した。
盾と言いても片手フライパン(付与:テフロン)だ。きっと後で母親に激怒されるだろうが構わない。
軽くて片手で持つことが出来、しかも攻撃にも使える便利なアイテムだ。
「さあ、勝負だ!」
再び戦い始めた。
ハジメが近付くとスライムがブルンと震えた。触手を出そうとしているのだ。
「おっ!」
触手が伸ばされた時には片手フライパンで弾いた。カイーンと硬そうな音がしている。
触手を出した後はスライムの動作が鈍くなり、そのタイミングで石斧を叩きつけている。
苦闘(?)する事数分。スライムが黒い霧になって消えていった。
「ふぅ……自分を鑑定」
額に出た汗を拭って鑑定してみるとBPが0.002上がっているのが確認できた。
「強いだけあって経験値もニ倍なのか」
ハジメはニヤリとした。彼的には美味しい結果だったようだ。
「後、九匹分の魔石が欲しいよな」
BPの取得値は相変わらずに微小な値であるが、上階のスライムより倍も取得できる。
これを利用しない手はない。
「魔獣の強さに比例して経験値が高いんだろ」
魔石を一階に持っていってリポップするか検証するつもりであった。
もし出来るのなら魔石を取り替える事でレベル上げが捗る。
取得経験値がニ倍でお得だからだ。
「ふふふ……俺の行動に隙は無いのだよ」
エアメガネをクイッと上げながら呟いた。
隙は無いかもしれないが、色々とダダ漏れなのは残念である。




