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第八九話 趙と魏韓、宋へ侵攻する

 斉軍、燕軍に続き、趙、魏、韓の中原諸国の軍も、宋へ侵攻する。

 趙から宋へ向かう将軍楽乗は、別働隊を指揮する将軍趙奢とともに、宋との国境を越境した。それから各城を攻撃するも、抵抗は緩かった。

「我が趙軍は長らく、大規模な戦を経験していない。それにも関わらず、城を抜きながらこの進軍速度を維持できているのは、なに故か」

 その問いに答えたのは、側近としてそばにいた、新米将軍の廉頗であった。

「罠をお疑いなのでしょうが、その心配はありません。つい先程斥候が戻り、付近に伏兵がいないことを確認済みです」

「しからば、そなたは、なに故と思うか。戦わずして降伏する城もあると聞くぞ」

「思いますに、宋王は夏の時代の暴虐な君主と並び評される程の極悪人なのだとか。その暴政に苦しめられた宋の民には、我々を歓迎する者がいるのも道理でしょう」

「あぁ……夏の桀。悪逆非道な君主帝桀のように民から憎悪を向けられ、宋桀などと蔑まれる王とは……そんな愚かな王がこの時代にもまだ天下にいたとは、とても信じられぬ。そうは思わんか廉頗よ」

 その問いを、廉頗は鼻で鳴らして一蹴した。その挑発的な態度に、楽乗はしかめ面をした。

「恐れながら、私は武人。歴史家のように、過去に興味はありません。武器を振るい、敵を粉砕する。それが(おとこ)というものでしょう!」

 大音声で(わめ)く廉頗を、楽乗は鼻で笑った。猛々しさしかない廉頗に、呆れているのである。

「まるで獣だな。言葉を話し、文字が書けることを除いては、熊や野犬と変わらぬ。そんなものでは、戦を指揮することなどできぬぞ」

「戦は、威風堂々とした将が、知略に長けた者と協力し、それぞれの長所を活かして、一丸となればできます。将も一人では戦はできません。優秀な者を厚遇し、聞く耳を持って重用すれば、戦に勝てます!」

 楽乗は、成り上がり者で品がない廉頗を、見下していた。いちいち癪に障るやつだと、嫌悪感をいだいていた。しかし宋攻めを通じて将兵に経験を積ませるという大事の前に、その様な小事に拘っている時ではないからと、それ以上の口論を我慢した。


 韓の暴鳶は、進軍途中に魏軍と合流した。もはや単独で一国を攻めることなどできない韓と魏は、共同戦線を張ることになっていた。

 魏軍の軍勢を、馬車から顔を出して眺める暴鳶は、「芒の旗が見えぬが……芒卯は魏軍大将ではないのか?」と呟いた。

 疑問に思う韓の暴鳶の許へ、魏軍の本陣から伝令が一騎やってきた。

「韓軍総帥暴鳶将軍へ、魏軍総帥信陵君より、言伝てにございます」

「聞かせろ」

「我が軍と、手筈通りに共闘願います。副将には、顔馴染みの男をつけております故、旧恩を温めてください」

 伝令が言葉をいい終わると、暴鳶は笑った。そして伝令を送り返した。伝令が馬上で、手網を握りながら拱手をして去っていったあと、暴鳶は、「芒卯とのあいだに、温める旧恩などないわ」と呟き、また笑った。

楽乗(生没年不詳)……戦国時代の趙の将軍。魏の将軍楽羊、燕の将軍楽毅と同族。

秦の将軍胡傷が閼与を攻めた際、廉頗とともに救援を拒んだとされる。


廉頗(生没年不詳)……戦国時代の趙の将軍。藺相如との関係を表す「刎頸の交わり」で有名。白起と同じく戦国四大名将の一人に数えられる。


馬服君(生没年不詳)……戦国時代の趙の政治家・将軍。氏(姓?)は趙、諱は奢。閼与の戦いで秦の軍勢を撃退した。


信陵君(生年不詳〜没:前244年)……戦国時代の魏の王族であり、政治家、軍人。姓は姫、氏は魏、諱は無忌。戦国四君の一人。

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― 新着の感想 ―
[一言] 趙奢は… 長男はアレだったけど 次男は馬騰に繋がる血を残すからドンマイ?
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