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第八一話 秦王、白起を咸陽に留め置く

 帰還した国尉白起、大将軍司馬錯に対して秦王は、二人に次の命令を下す。

 紀元前287年(昭襄王20年) 咸陽宮


 秦王は、白起と司馬錯の一行が、もうじき咸陽へ到着するという報告を受け取った。

「楼緩よ、早馬は英雄たちがもうじき帰還することを、伝えてきよった。私は、どのように労えばよかろうか」

「褒美をたらふく与えましょう。しかし……それだけでは足りぬやも知れませぬ」

「あぁ……司馬錯からの竹簡の件か。司馬錯は、あの要害の地で反乱を未然に防ぎつつ、大規模な灌漑事業で、少しずつ肥沃な土地に変えようとしていっている。将としてのみならず、文官としても優秀な、稀有な存在だ。だが……法の徹底をせず、勝手に融通を効かせていたというのは、見過ごせぬ」

「左様にございます。優れた統治をしていたとはいえ……例外を認めれば、他の地域も法を守らなくなります。さすれば……北方で大人しくしている義渠県の連中も、よからぬ動きをしだすやも知れませぬ」

「そういった大事を警戒するのは大切なことだ。余は、秦の為に戦で功を立てた司馬錯を誇りに思っておる。巴蜀を足場にして、王として独立しようとしているなどと、讒言をする者も現れるだろう。だが余は、そのような輩の言葉に耳を貸すつもりはない」

「ご明察にございます」

「しかし、司馬錯と巴蜀を特別扱いするつもりも毛頭ない。司馬錯は……しばらくは漢中に留めおき、宋攻めの後に、再度韓や魏へ侵攻させる。白起は……どうしようか」

「申しあげます。白起は、丞相魏冄の勢力と手を取り合っている今、咸陽に留めおいて懐柔し、今後の政争で我らの側に立つように仕向けるべきと存じます」

「楼緩よ、余は白起が……派閥を気にする存在には思えぬのだ。そんなものに拘らなくてもいいほどの、大きな力を持っている男だぞ」

「しかし、あの魏冄が上手く駒として操らぬとも限りませぬ。魏冄に与することがないように、引き入れるべきかと……!」


 秦王が楼緩とそんな話をしてから数日。白起と司馬錯は、咸陽へ帰還した。

 浅沓(あさぐつ)を履き朝議に参内した二人は、秦王から褒賞を賜った。そして、今後の行動を決める命令も下った。

「国尉白起は慣れぬ巴蜀での軍務に励み、それから敵国へ出撃し功績を立てた。よって、その労を労う為、しばし咸陽にて休養を取ることを命ずる。そして大将軍司馬錯は、亡き任鄙将軍に代わって漢中にて同地の兵と巴蜀の兵に訓練を施し、軍を引き締めさせることを命じる」

 司馬錯と白起は、動揺した。戦に出たい白起は咸陽に閉じ込められ、巴蜀に戻りたい司馬錯は、漢中に閉じ込められる。

 二人は不満から、言葉が出なかった。

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