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第七九話 秦王、魏冄を説得する

 秦王は魏冄の本心を聞き出し、彼を仲間に引き込もうと、言葉を尽くす。

 魏冄は、本心を話すべきか、迷った。

 手の内にある湯呑みの中の茶は、湯気もなくなり、既にぬるくなっていた。

 既に、それが答えになってしまっているようにも感じた。

 沈黙を遮ったのは、秦王だった。

「そなたの今一番の望みはなんだ」

 その眼差しは、まっすぐと魏冄へと向けられていた。

 口ごもる魏冄に、秦王はため息を吐いた。

「余も本音を話そう。余は斉を滅ぼしたい! 我が父恵文王が商鞅の変法から始めた強国への道筋。その苦難の道を進み、余は、秦を天下一の強国にしたいのだ! その為には、優秀なそなたの力が必要なのだ!」

 秦王は湯呑みを卓に叩きつけ、鬼気迫る。

「申せ! 王位以外ならなんでもくれてやろうぞ!」

「しからば……秦王様。陶邑の地を冊封してくださいませ!」

「よかろう! 蘇秦とともに宋を滅ぼした後、必ずや陶邑を接収しそなたにくれてやろうぞ!」

「感謝申しあげます!」

 秦王は血走った目から涙を零しながら、微笑んだ。魏冄の裾を掴み、嬉しそうに笑った。魏冄も釣られて笑い、秦の君臣が一つになったのを感じた。


 その日の夜、秦王は、寝所にて疲れた体を唐姫に揉ませ、癒されていた。

「そなたの献策のお陰だ、唐姫よ。魏冄の本心を探り、可能な限りその願いを叶えると約束したら、仲間に引き込めた。これで私は、父王からの大業を引き継げる」

「秦王様の度量があってこそです。私の浅知恵のお陰など、恐れ多いことです。それに楼緩様が独自に放った間者が、趙王が周からの使者と会合をした後に、魏冄丞相と会合したことを教えてくれたことも大きいでしょう」

「そうだな。あのまま韓や魏を攻め続ければ、二国を滅ぼしてその首都を手にできただろう。にも関わらず、他国の動きを必要以上に警戒し、軍を止めた。そこに密約があっただろうとというのは想像に難くなく、魏冄に密約があったかを問うて、魏冄が丞相の任を預けるに足るか臣下かどうかを振るいにかけることができた」

「老人らしく口をもごもごさせるだけで、回答はしなかった。それはほとんど答えだが、嘘はつかなかった。今はまだ、丞相の任を継続させてやろう」



 垣邑 白起


 白起は満足いくまで戦働きをすることもできず、敵も退いてしまったことで、不満が積もりに積もっていた。秦王から贈られてきた美女たちも、不満だらけで常に眉間にシワを寄せる白起の機嫌をとることができず、徐々に離れていった。

 鬱陶しいほどに体にまとわりついてきては、蘇や杏仁豆腐を食わせてくる美女がいなくなって、白起は清々とした。

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