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第五二話 勢力争い

 伊闕で大勝した白起は、魏冄の提案で国尉に就任する。

 白起は十四万の秦軍を率い、二四万の魏、韓、東周連合軍を撃破し、更に敵軍総帥の魏将公孫犀武を生け捕りにした。

 この功績は、無名の将軍の戦果としては、前代未聞のものであった。また白起が歳若く、名家の生まれでもないことから、突如として現れた彼を神と讃える者まで、現れる始末であった。

 秦の宮廷内の勢力争いは、元より魏冄ら外戚が秦王を圧倒していた。白起を見出した魏冄の権勢は絶大なものとなり、もはや魏冄の提言を秦王は否認できぬ程になっていた。



 咸陽


「秦王様、私が推挙した白起は、此度の戦で空前絶後の活躍を致しました。彼に十分な褒美をお与えください」

「よかろう。金銀や絹、珍品、更に美女や名馬を贈ろう。爵位も上げてやろう」

「爵位では……足りませぬ」

「どういう意味だ?」

「白起に役目をお与えください。それは……秦国全ての将兵を管理し、統帥する役目です」

秦王は立腹していたが、平静を保った。

「よかろう……! 白起を国尉に……任命する! またそれに伴い爵位を四つ昇格させ、大良蔵とする。加増した俸禄を、すぐさま屋敷へ届けさせるものとする」

「御意」

 国尉とは、軍の頂点を意味していた。秦王が持つ軍の統帥権である兵符を預かり、管理する。そこには王と同様に将兵からの人望が厚く、また確かな能力がある者が任命されるものであった。天下に力を示したばかりの白起には、人望や人徳が欠けていた。だが魏冄の提言を断れない秦王は、白起を国尉に任命する他なかったのである。



 新城 数日後


 将軍白起は勅使から、秦王より下された国尉就任の勅を受け取った。竜が掘られた玉の兵符と、下賜された宝剣を受け取り、彼は咸陽の方向を向き「秦王様万歳」と叫んだ。

 また、丞相魏冄から私的に送られた使者は、彼からの竹簡を白起に渡した。そこには、秦王より勅令の中にあった魏攻めに際し、どのように進むべきかなどの具体的な例が書かれていた。

「魏冄様は律儀なお方だ。しかし私には不要です。地図は既に、頭の中に入っております故……」

 白起は宝剣を鞘から抜き取り、伊闕へ向け、それを切り裂くように剣を振るった。

「私は竜を斬ったのだ。魏冄丞相からの竹簡には、宮中で私は神と呼ばれていると記されていた。竜を斬り神となったのだ。私は……秦国が天下に躍り出る刃とならん!」

「齕めも、将軍の身の回りの雑事をこなし、お支え申し上げます」

「感謝する。では一つ、面倒事を聞いてくれるか」

「なんなりと」

「私はしばらく、郿県や雍はおろか、咸陽にも戻れそうにない。秦王様より賜った宝物を、郿県の義両親、友人の農民である恬さんたち、更には雍の友人知人らに配るよう手配してくれ。配下にも配るがまだ余るはずだ」

「将軍のお心使いに敬服致しました。しかと、承りました」

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