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第十五話 消えない憎しみ

 李雲から義渠県の反逆の可能性について聞かされた公孫起だったが、彼にできることはなかった。

 一方その頃、咸陽では魏冄が宣太后を訪ねていた。宣太后は、魏冄に折入った話を始めた。

「話をつづけてもよいか、公孫起」

 そう問われてやっと、公孫起は我に返った。全身から力が抜け、眉間に寄ったシワが和らぐのを感じた。

「お願いします」

「そうか。それで、この前の戦で、羋戎将軍がぶつかった夏育将軍は、変わった武器を使い、異なる言葉を話す兵士を操っていたようだ。元より夏育将軍は戦が得意ではなく、羋戎将軍が手こずるのはおかしい。もしこの兵士が板楯であれば、辻褄が合うであろう」

「しかしまだ分かりません。夏育将軍と板楯は、いずこにて、交流を持ったのでしょうか。将軍の領地と義渠県は、離れています」

「さすが公孫氏だ、秦国の地図は頭の中にあるのか」

「商人ですので……」

「それも、豪商だ。雍の公孫氏は、秦国でも指折りの豪商一族だ。そなたの義兄上が娶った方は、爵位を持った貴族の生まれであり、咸陽では名が知れている。彼を通じてそなたの居場所を突き止めたのだ。戸籍は雍のままであり、探すのに苦労した」

 それで褒賞を届けるまで時間がかかったのだと、公孫起は悟った。

「だが探す苦労を省みてでも、そなたに話をしたかったのだ。私は任鄙将軍と会って、宮中のお話をお聞きした。義渠県を滅ぼせぬ理由は、反逆の証拠がないことのみではない」

「なんです、なにがあるのですか」

 公孫起の食い気味な問いに怯み、間を置くために、李雲は瓢箪(ひょうたん)の酒を呷った。

「秦王の御母堂(ごぼどう)である宣太后様と義渠県令は、元恋人であり、今でも親しくしておられるようなのだ。夏育将軍は宮中の立ち回りが上手かったらしい。宣太后様を通じ、反乱への参加を呼びかけたのであろう。だがそれは済んだことだ。問題は──」

「宣太后様と義渠県令の繋がりが断てぬ内は、状況はなにも変わらない……ということですか」



 咸陽


 大将軍魏冄は咸陽にある宮殿にて、姉の宣太后羋八子と茶を呑んでいた。

「こちらは我が領地で取れた新鮮な果実にございます。この頃は寒く(あつもの)ばかり食しているとお聞きしたゆえ、新鮮なものをと思い、お持ちしました」

「ありがとう冄よ、そなたの献身には大助かりよ。稷も、あなたのお陰で秦王になれたのよ。以前の朝議での稷の対応は──」

「秦王としては、なんらおかしくはありません。それに、臣下が王や太后に尽くすのは、当然至極にございますぞ」

「実は、今日あなたを呼んだのは、義渠県令のことで話したいことがあったからよ。あなたも知っているでしょう。先の反乱で、義渠が関わっていることをね」

 なにやら長い話になりそうだ、と思いながら魏冄は、顎髭を撫でた。

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