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六話

その日は雨だった。


『その日』なんて以前の話をしてるようだが、本当は今日だから……この日?なんか違うなぁ、語彙が足りん。


ただ『その日は雨だった』っていうフレーズをかっこつけて使いたかっただけ、他意は全く無い。


藤宮藤谷は宿題をしていた。夏休みである、ホリデーである。この課題というものは勉学に励むというよりももっと深い意味があると常々思う。


休みという言葉を使ったって、課題は存在し、人間には何もない完全な休みなど無いんだということを学生の内から―――


「はいはい、わかったからペンを止めない」


「だから、俺口に出してない」


「出さなくてもわかるよ。大方完全な休みなど無いんだ! とか思ってたんでしょ?」


「…………」


「図星のようね、涙が流れてないのが不思議な悲しそうな顔」


藤谷の部屋に机を設置し、二人で課題を並べている。香里は勉強するのに邪魔という事で、髪を束ねてポニーテールにしている。


実は新鮮な光景というわけではない。料理の時とかにたまにしている、まれに尻尾が二本に分かれる。『どう? ツインだよ? 似合うかな』なんて聞いてくるが、美人は嫌だ、なにしてもなに着てもある程度以上似合うのだから。


「藤谷! 意識を変な方に向かわせないで、課題を見て」


「いい加減察しろよ。解んないだよ、教えてください可愛い人」


「うにゃっ!」


『可愛い人』冗談で言ったし、どんな反応するかという謎の興味につき動かされて言ったが、結果は、香里は目を見開き、段々目が閉じていくと同時に頬を赤で染めあげた。


「にゅ~………」


香里は謎の擬音を尖らせた唇から出した。更になぜか人指し指同士をツンツンとつつきあっていた。


「こ、香里さん?」


「どこ!? 教えてあげる。本当はあまり為にならないと思ってたけど、しょうがないよね、わからないんだもん」


四角い机の対面に座っていた香里だが、這って移動し、藤谷の隣に移動、肩を触れ合わせながら問題に視線を移動させた。


なんだか最近香里と触れ合う事が多い、藤谷は気付けば心臓を高鳴らせ緊張してるというに、香里は全く気にする素ぶりを見せない。なんだか、自分が馬鹿みたいだし、少し寂しい………ような気がする。


「………次の問題って…………これだよね?」


「あ、ああ」


「藤谷、来年後輩かぁ………可愛がってあげるね」


「ちょっと待ってくれ、見捨てないでくれ!」

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