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ショートショート2月~2回目

交差点

作者: たかさば
掲載日:2022/02/07

 まだ薄暗い、朝一番の、交差点。


 時刻はまだ、5時半。

 あたりに、車は、ない。


 静まり返る、まだ夜の気配が残る街。


 私を照らしているのは、信号の、光。


 緑色の光が、闇夜に慣れた私の目の奥を、刺激する。


 パカ、パカ、パカ、パカ……。


 歩行者信号が、点滅を始めた。


 ああ、今から…この信号は、赤に、変わる。


 ……急いで渡るべきか、立ち止まる、べきか。


 走れば、間に合うかもしれない。


 けれど…朝一番の、ぎこちなさのある体で…全力疾走する気には、なれない。


 ……歩行者信号が、赤に変わった。


 私を照らす色も、赤に変わる。


 高い位置にある、三色の信号が、黄色に変わった。


 鮮やかな黄色が、目に…眩しい。


 ……ああ、信号を、渡ってしまおうか。


 けれど、もうじき、赤に変わって、しまうから。


 高い位置にある、三色の信号が、赤に変わった。


 赤い色が、私の目に…染みる。


 ……赤は、危険な、色。


 赤は、渡ってはいけない、印。

 赤は、立ち止まらなければならない、印。


 あたりに、車は…ない。


 信号は赤だが、向こう側へ渡ることは、できるだろう。


 ……けれど、赤い、光が。


 ここは、渡っていいものではないという事を、示している。

 ここを、渡っていいと思っているのかと、問うている。

 ここは、渡ってはいけないのだと、伝えている。


 赤い光の、力強い輝きが。


 ここを渡っていいのかと。

 ここを渡れるのかと。

 ここを渡るのかと。


 目の奥に赤く焼き付けられる、信号の光が。


 無言で私に圧力をかけるのだ。


 お前は、私の光を、越えて行こうというのかと。

 お前ごときが、私の光を、越えて行こうとするのかと。


 ……ああ、今日も私は、信号に、従う事しか、できない。


 緑色に変わった信号を、ゆっくりと…渡り始めた。


 道と道が、交差する、この、場所。


 誰もいない交差点を、一人ぼっちで…渡る。


 緑色の光が、目に、眩しい。


 ……緑は、とても心地の良い…光。


 今、この道は、渡っていいのですよという、優しさを感じる。

 今、この道を、渡ることができるのですよという、安心感がある。


 ルールを守ることは、とても…気持ちの良い事だ。


 緑色の温かさに照らされながら、交差点の中ほどまで、歩みをすすめた、時。



 ……ぶぅうぅうう、ぶぅうううううん!!!!!!!!



 闇の向こうから、眩しい水色の光が迫った。


 車の進行方向の信号は、赤だ。


 大きな音を立てる車は、ルールを守って、止まるはず。



 ぶぅうぅうう、ぶぅうううううん!!!!!!!!



 眩しすぎる、水色の光、白い煌き、オレンジの灯火。


 ……ああ、この車は、もしかして。


 信号を、守らない………?



 私を照らす、車のヘッドライト、フォグライト、スモールライト。



 ……ああ、眩しい。

 ……本当に、眩しい。



 目が、眩んで、しまったから。


 ……避けることが、できなくて。



 ドぐワッシャあアアアアアアアががががアアアアアんん!!!!!



 ああ……信号を守らないから、私の体にぶつかってしまった。


 交差点の中央に飛び散る、中央分離帯と車の破片、コンクリート片、外れたタイヤ。


 そして…ぬるりと車体の中から、浮きだした……ピチピチの、魂。


 私はそっと舌を伸ばして、魂を、啜ろうと。


 ……ああ、抜けかかっているだけ、か。

 ……往生際が悪い。


 赤の警告を無視するくらいの力強さがあるくせに。

 魂の分離には、ずいぶん…女々しい。


 ……みっともない。


 私は、肉片に繋がっている魂を噛みきって、ずるりと吸い込み。


 信号を渡り終えたその場所で、両手を合わせた。


「ごちそうさまでした。」


 ……私は、正しい人として、生きていきたい。


 食後のあいさつも、ちゃんとしたいタイプなのだ。



 ……ああ、そろそろ、夜が明ける。


 闇が薄くなる前に、紛れなくては……。


 私は、交差点の向こう側に広がる……街灯のない路地裏に。


 そっと、身を、隠した。




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― 新着の感想 ―
[一言] いつも通り、赤信号を守らない奴が……。 一方通行を守らない奴もいますよね。あれはほんと何なのかと思います。正面衝突不可避。
[一言] 南無南無ボウレン草……。 赤き閃光、暴走運転することtで飛び散るブタの如し。 我道直進、レーン義務を守らぬ獣に諭す言葉は必要ナシ。 草葉の陰、草草草墓草草草。 ……アムアム…ホウレン草。 …
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