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「なりません!先触れもなくこんな夜中に!乙女の部屋に!これ以上は宰相様に報告いたします!」
「退け!レイチェル・ジーンはどこだ!俺を馬鹿にしやがって!」
ルークはおそらく、かなり酔っている。
レイチェルの部屋の前で、怒りでギラギラ瞳を燃やして押し入ろうとしていた。
麗しい太陽の騎士は、侍女の言うことも聞かずに強引にレイチェルの部屋の応接室に入った。
部屋の片隅に積まれているルークからの贈り物の箱が目に入った。
リボンすら解かれていない。
どれもミツワで手に入る最高級の、そしてルーク自ら選んだ美しい品々だ。太陽の騎士と呼ばれ、社交界の申し子であるこのルークが。レイチェルの様に地味な娘に、これだけの心配りをしたのに。王命でなければ誰があんな娘なんかに!
ルークの怒りに火が注がれた。
(くそ、俺をコケにしているのか!)
先程まで一緒にいた娘の、どうでもいい男からの贈り物に、嫌悪に満ちた顔を思い出す。
ルークは乱暴に応接室のテーブルをひっくり返すと、縋って止めに入る侍女を振り切って、大声で叫びながらレイチェルの私室の扉を蹴り破り踏み込んだ。
「レイチェル・ジーン!」
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「ん?」
ルークは、パンをもぐもぐかぶりながら振り返ったレイチェルを前に、先程の勢いがすっかり無くなってしまっていた。
そんな行儀の悪い事をする令嬢など、ルークの人生でただの一人も出会った事がない。
レイチェルは夜着のまま、パンを咥えて何か作業していたのだ。
美しい夜着の腕を捲って、何枚かの紙に難しい術式を書きつけていた様子。
傍らには裁断された美しい絹とビーズが散乱。
どこからどうみても何処かの工房か、作業所の様子だった。
つかつかと美麗なテーブルに散らかされた紙をふんだくってみる。
(風と光。。。熱の術式が三重。高等な。どれも本当に薄い効力で発動する様に。。なんだこれ)
酔っ払ってはいるが、この国の宰相の息子として、フォートリー最高の教育を施されたこの男は、レイチェルの組んだ術式の内容を瞬時に判読した。
ルークは断りもなく机の引き出しを開いて、中をかきだすと、他にも紙の束。
その中にはデザイン画の束があり、拙い画力で髪飾りのデザインらしきものが描かれたものがあった。ここしばらくミツワでよく見かける野暮ったい髪飾りだ!
「。。。」
中には今日、ルークの女神・ガートルード第一王女の髪を今日飾っていたなんとも微妙な髪飾りのデザインもあった。
(こいつだったのか。。。)
ルークは膝をつきそうになった。
一体全体この娘は何者で、何をやらかしてるんだ。。
「レイチェル様!ご無事でしょうか!」
外から衛兵を連れてきたらしい侍女の声がする。




