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レイチェル・ジーンは踊らない  作者: Moonshine
テオ、という問題児

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レイチェルは、恐る恐る、封筒を受け取る。

初々しい、柑橘類の香りのする上質のインク。

貴族の若い娘だろう。柔らかい白の封筒は、可愛らしい漉き込みの花びらがある。品が良い。高位貴族の娘のもので、間違いない。


レイチェルは、ジジへの宛名を確認すると、くるりとひっくり返して、そして送り主の名前を確認して。。


「ビオレッタ????」


レイチェルは思わずガタリと椅子からたちあがってしまった。


ビオレッタ。ルイスの、とても愛らしい妹の名前だった、はずだ。


急いでその柑橘の香りのする封筒の中身を確認して、今度はレイチェルがソファにひっくり返る番だった。


ジジはソファで悶絶しているレイチェルの手から便箋をひったくると、つらつらと、声に出して読み始めた。


「ジジお姉さま、私のデビュタントの夜会のエスコートを、なんとか愛しいテオドア様にお願いできる様、お姉さまからも一言どうか、よしなに。あの方にエスコートしていただけるなら、私、死んでしまっても、よろしくってよ、ですって。」


ゲラゲラゲラ!!!とひどく品悪くジジは大笑いする。


「あの子さあ、ずっと、ずっと、この変人を追いかけ回してるのよ。初恋らしくてね、割と可愛い子なのにね!何もこんな男でなくったって、よかったのに。」


テオは、耳まで真っ赤になって、俯いて呟く。


「わ、私は、嫌だと、ななな何度も言っているのに。。」


「もうあちこちにお願いして、ジーク兄様にまで手紙でお願いしてるんですってさ!これだけ頑張ってる乙女の夢を叶えてあげたって、バチは当たらないわよ!ねえゾイド様!」


ゾイドの元にもビオレッタ嬢から、何通もきているらしい。ゾイドはため息をつく。


「だが、危険だ。。」


ジジはニヤリと笑うと、そして今度は、ゾイドの側にツカツカと歩いて行って、何やら耳元で囁いている。


ゾイドは、顔を青くして、そして白くして、そして、大きくため息をつくと、


「。。。レイチェルが決めることだ。」


それだけ言うと、プイ。と窓の外を見た。その耳にささやかれた何かが、ゾイドの琴線に、触る一言だったのだ。


ジジは爛々と、目を輝かせながら、今度はレイチェルにむかい、続ける。


「ねえレイチェル、いい考えだと思わない?あんたどうせ、そのうちゾイド様の子供の母となるのだし、あんたも、リンデンバーグの古城まで赴いて行って、未来の子供の祖先の事を学ぶいい機会になるわ。テオ様には協力してやる見返りに、ビオレッタのデビュタントのエスコートを、このどうしようもない男に承諾させればいいわよ。これだけの事をレイチェルにお願いするのだから、テオ様も、死ぬほどの目に、会う覚悟なのよね!」


最も、ビオレッタはテオ様にエスコートしてもらえるなら死んでもいいそうだから、足して引いたら丁度よね!とゲラゲラと笑う。


テオは、絶望と言う言葉を具現化させた様な情けない顔をして、助けを求める様に、ゾイドと、レイチェルを見た。


「。。テオ様、私、受けますわ。」


レイチェルは、顔を真っ赤に、そっと、小さな声で、言った。


(ゾイド様との、子供。。)


考えてみなかったわけでもないが、こうも当たり前の事の様にジジに言い放たれると、なんだか現実味を帯びてくる。レイチェルも、是非ゾイドの祖先の秘密を知ってみたい、それが刺繍を通わせるものであれば、願ってもない。


それに。まだレイチェルは、リンデンバーグの古城にも、そしてその女主人にも、会っていない。

テオを御令嬢の夜会のデビュタントのエスコートに引っ張り出した事を手土産に、是非挨拶を、しておきたいところである。レイチェルだって、打算的な所はあるのだ。もし未来の義理の母に、良い印象を与えられるならば、是非そうしておくべきだ。



「れ、レレレイチェル!!!!』


テオは絶叫する。


「。。。決まりだな。」


この計画に大反対するであるはずの、ゾイドが話を結末に導いた。


「レイチェル、では君は、私と一緒にリンデバーグの領地に。明日出発する。テオ、お前はすぐにビオレッタに手紙を書け。。。ジジ。お前は本当に食えない女公主だ。褒めてやる。」


そう言うと、ゾイドはレイチェルの肩を抱くと、混乱するレイチェルを連れて、ロッカウェイ公国の公館を後にした。


後に残されたテオは、ふう、ふうと荒い息を着きながら、止まらない汗を拭う。


「ジ、ジジジジ。な、何を兄上の耳に、さ、囁いた。絶対に、は、反対するはずの、あ、兄を、どうやって、あ、操った。」


テオは、レイチェルに危険な仕事を受けてもらった喜びと、死ぬほど苦しい苦役を科す(ほとんどの男にとって、美少女のデビュタントのエスコートなど、ご褒美でしかないのではあるが)ジジに、感謝と憎しみの重なった目を向ける。


ジジは、自分の筋書き通りに事が運んでご機嫌だ。

とどのつまりは、ジジは公爵の娘なのだ。

ニヤリと、ジジは意地悪く微笑むと、


「テオ様が、レイチェルに興味を持ってるわね。手遅れにならないうちに、ビオレッタに監視させた方が、いいんじゃない?ってね!ゾイド様に忠告したのよ!」


ジジはおかしくてならないらしい。

ケタケタ大笑いするが、一方で、テオはまだ名前にすらなっていない感情をレイチェルに抱いていた事を、ジジに見破られて、もう見るに耐えないほどの赤面と、混乱だ。


ジジは一頻り大笑いすると、少し真面目な顔をして、言った。


「リンデンバーグの古城であれば、出力してもある程度は隠し通せるわ。あんたの人生の全てなんでしょう?竜人の研究。応援してるから、絶対、夢を掴んできなさい。」

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