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レイチェル・ジーンは踊らない  作者: Moonshine
テオ、という問題児

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「ちょっと、、テオ様、顔をあげてくださいな、話だけは、聞きますから。。」


レイチェルはおろおろしてしまい、なんとかこの土下座の男を立たそうとする。


(最近。。。こうやって泣かれる事が多いわね。。)


レイチェルは、テオの丸くなった背中を眺めながら、砂漠での出来事を思い出す。もう、遠い夢での出来事の様に思えるが、実際はつい、本当についこの間の出来事だ。レイチェルの唇を奪った悪い大人の事を、ふと、思い出す。


(ヨルは、元気かしら。。)


「テオ、立て。」


ゾイドはレイチェルが何かを思い出したのを感じたのだろう、テオの首根っこをを掴んで不機嫌そうに、乱暴にソファに投げた。


「話してみてよ、テオ。あんたの夢って、何?」


ジジは、少し興味があるらしい。


ゾイドは不機嫌そうに、テオの方も見ずに、窓際にたたずむ。

どうやら、この困った弟の夢の事など、よく知っているらしい。


「竜人だよレイチェル、竜と竜人の住む国が、この空の、何処かにあるんだ!」


テオは、声を絞り出す様に叫んだ。


「。。テオ。。」


「えっと、、テオ様、竜人ですか。。あのお伽話の竜人の事を、おっしゃってるのでは、ないですわよね。。?」


レイチェルも、竜人の話は聞いた事があるが、それはカエルが実人間の王子で、姫君の口づけで人間に戻れると言った類のお伽話の中でのみでだ。


「ああ、りゅ、竜と、竜人が住う国が、そ、空の上のどどどこかに、あるんだ!そして、た太古には、ひ、ひひ人もその国にで出入りできたというのだ。。りゅ、竜人と、人は、平和な関係にあり、時には、竜人と人とは、こここここ子をもうけたとも、伝わる。」


ゾイドは、不機嫌そうに口を挟んだ。


「テオ、もういい、よせ。ただの伝説だ。」


だが、テオは完全に興奮状態にある。汗をだらだらと流して瞳孔は完全に、ひらいている。


「れ、レイチェル。知っているか?りゅりゅ竜人が地に降りて、人と結ばれた。そ、その子供達は、皆、た、高い魔力を持ち、あ、あ、ああああ」


「テオ!」


ゾイドは大声でテオを諫めるが、テオはもう、止まらない。


「赤い、目を、持っている。レイチェル、頼む!我らの祖先は、りゅ、竜人だと、言われている。そして、竜の国への、か、か、鍵が、領地に、カカカカ隠されている。君は、ききき君にならば、君の刺繍ならば、か鍵が、開けられる。私を、竜の国に!!!」


はあはあと、息も荒く、テオはまた、床に額を擦り付け絶叫する。


「頼む!レイチェル!私を、リュ、竜の国に、連れて行ってくれ!!!」


部屋は、水を打ったように静まり返る。


(えっと。。)


レイチェルは、事態をどう受け止めたら良いのか、わからない。

だが異様に高い魔力と、人外の美貌を誇るゾイドが、竜人を先祖にもち、赤い目の先祖返りを起こしているのならば、説明はつく。

竜人は、精霊の類だという。直接見てしまうと、目が潰れるほどの美貌を持ち、雷の様な大きな魔力を誇ると、絵本に書いてあった。


「。。あんたはさ、レイチェルをどれほどの危険に晒すかは、よく理解した上で、こんな図々しいお願いをしてるのよね。レイチェルがメリルの体毛で術式を発動させた事が知られたら、レイチェルは大陸中から狙われるのよ。」


沈黙を破ったのは、ジジだ。


「あ、ああ、も、ももももちろんだ。だが、それだけの、か、価値がある。」


「価値があるのは、あんたにとってだけじゃない。」


ピシャリとジジが言い放つ。


「あんたも、そんな危険をレイチェルに課すなら、それなりの対価物を差し出してから、お願いをするのが筋じゃないの?」


ジジの目が、爛々と輝き出した。


(。。この目。。)


ゾイドは、背筋がぞッとする。あの目はロッカウェイ公爵と、同じ目だ。

何か賭け事の種を見つけたらしい。


「りょ、領地は安全だ。魔女の森の、む、むこうで行われる事を、さ、察知する事は、誰も、ふふ不可能だ。そ、それなりのた、対価、、、わ、私の命では、た、足りないだろうか。。」


ジジの目は爛々と光る。

実際、魔女の森は非常に厄介な土地だ。その向こうに広大な領地を持つ、古い魔法伯としての歴史を誇るリンデンバーグの古城であれば、レイチェルにテオが切望していることは、ある程度は安全に行えるだろう。


ジジは、そのしなやかな曲線を描く、非常に美しい薔薇の木彫りの彫刻の入った机の引き出しを開けると、たおやかな文字が書かれた、一通の美しい封筒を取り出した。


「これ、何かわかる?」


ニヤリと笑ったジジの顔は、悪魔の微笑みのごとく。


ゾイドは、は、とジジの顔をみて、そしてテオの顔をみて、

そして。窓の外を見た。

この男は、実に察しが良いのだ。


テオは、不思議そうにジジの手から封筒を受け取り、その送り主の名を見て、


「ぎゃあああああ!」


本日何回目かになる絶叫を、して、中身も見ることなく封筒を床に落とした。


「えっと。。ジジ、それ何?」


不思議そうにレイチェルはジジに尋ねると、ジジは可笑しそうに、床に転がっていた上質な紙でできた封筒を拾い、レイチェルに渡した。


「読んでいいわよ。テオがこの話を受けるなら、レイチェル、協力してやればいいわ。そうでしょ、ゾイド様!」

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