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「それで、メリルがまた悪戯を?」
「はい。。今日こそ体重を測ろうと、計測魔術を掛けたのですが、跳ね返してしまって、今日は窓枠を壊してしまい。。でもご褒美のおやつばかり欲しがって、エサにも手をつけず。。」
申し訳なさそうにレイチェルの前で項垂れるのは、まだ若いリウという名の騎士だ。東の海に生息する竜の呼び名から両親に名付けられたというリウは、幼い頃から竜騎士になることだけを夢見ていたというのに、念願のメリルの世話係に任命されてから、げっそりやつれてしまっている。
メリルにやられたのだろう、綺麗な茶色い髪の中に、これでもかというほどに、木の葉が入り込んでしまっている様子だ。
無事にメリルがアストリアに引き渡されてより、一週間はたっただろうか。
レイチェルもゾイドも、塔に研究者として、勤務を再開している。
今日レイチェルが、塔にあるレイチェルの研究室から、竜の騎士に呼び出されるのは、なんと四回目だ。
レイチェルは手元の刺繍がちっとも捗らないので、イライラしてしまう。
竜は非常に頭脳が高い。
メリルは子供ながらに、世話役の言うことは聞かなくてもいい・悪戯をすればレイチェルが来てくれる。と完全に自分の中で理解したらしく、世話役を振り回して、リウを始め、担当の騎士達は困り果てているとか。
メリルの世話に当たっている竜騎士の一隊は、メリルを迎えるために、北の大国に派遣していた竜騎士の一隊を呼び戻したのだが、北の竜と、砂漠の竜では気性が異なり、扱い方は少し違ってくる。
非常に冷静沈着なツンドラ生まれの竜と違って、砂漠の竜は気性が荒く、そして気まぐれだ。ましてやメリルは子供の竜という事もあり、なかなか苦戦中の様子だ。
「いいですわよ、私が見に行きます。でも、テオ様がいらっしゃらない様に気をつけてくださいね。あの方の扱いは、メリルより面倒ですもの。」
レイチェルはため息だ。
一度メリルの様子を見に、小屋で、テオと鉢合わせたのだ。
「お、おのれ不潔な悪女め、聖なる竜から離れよ!!」
そう言って、どうやら持ち歩いているらしい神殿の聖水をかけられたり、
(尚、神殿の聖水を作っているのは、神殿の乙女なので、神殿の乙女であるレイチェルに叩きつけても意味はない。そう周りの失笑を買っていたのだが。)
ある日など、キエえーー!と小さい小屋の中で奇声を挙げられて、その声に反応したメリルが驚いてしまって暴れたり、本当にテオと鉢合わせると面倒くさいのだ。
そして、テオがレイチェルに失礼を働いた事がゾイドに発覚すると、またもう一悶着、屋敷で面倒が起こるので、本当に頭が痛い。
「。。。。ええ、テオ様は本当に優秀な方なのですが、ね。。。」
リウも、レイチェルを気の毒そうに見る。
リウによると、テオは隊では変わり者だが面倒見もよく、誠実で真面目な男だという。物理的、精神的に度を越した潔癖である以外は、割とマトモで、隊での評価は非常に高いらしい。
テオには随分嫌われてしまった様子だが、レイチェルにだって言い分はある。
(アーロン義理兄様があんなに素敵なお方だから、テオ様だってお優しい方だと思っていたわ。。)
ゲンナリと、テオの大きなメガネを思い出しながら、ライラの夫であるアーロンを思い、ため息をつくが、レイチェルのいいところは、深く考えないところだ。
レイチェルは手元の刺繍の糸の始末をすると、にっこり大きく笑っていった。
「いいわ、いきましょう!メリルは1日私が見ていますから、今日は必要な計測を全部終わらせてしまいましょう!




