24 誓いの指輪1◇
「え、オリバー!お前ってやつは付き合って一ヶ月の恋人に中古の指輪を贈るのか!?」
廊下を歩いていたフィルガルドは、男の大きな声に足を止めた。目を向けた先では二人の衛兵が立っている。どうやら小柄な方の男に、大柄な男が大袈裟な反応を返しているようだった。
よくよく見るとその小さい男はオリバー・フランドルだった。いつもフィルガルドの部屋の周辺で警備をしてくれている若い兵士だ。
取り立てて用事はなかったが、気分が良かったこともあってそちらへ足を進めた。
「何の話だ?」
「あっ、殿下!すみません、ついつい驚いてしまって……うるさかったでしょうか?」
大きい方の男がわたわたと両手を振る。
「いや、君たちの話の内容が気になっただけだ。オリバーはとうとう恋人が出来たのか?」
「そうなんですよ!コイツときたら街の花売りに一目惚れして、なんとか実ったは良いものの、まだ一ヶ月しか付き合ってねぇのに指輪を贈るって張り切ってやがって……」
「指輪?」
それまで顔を赤らめて黙っていたオリバーが「そんなに良くないことでしょうか」と消え入りそうな声で答えて、ポケットから小さな箱を取り出す。パカッと開けば、そこには眩い輝きを放つ小さな指輪が鎮座していた。
フィルガルドは驚いて目を見開く。
あまりに見慣れたデザインだったから。
「オリバー、これを何処で?」
「えっと……王都の宝石商で。真ん中に三つダイヤが載っていたそうなんですが、店主が手違いで落とした時に二つ紛失したらしくて。かなり安く売っていただくことが出来たんです」
「言ったってダイヤだろう!?こんな高価なもの買うぐらいなら、母ちゃんに肉でも奢ってやれよ。何れにせよ素性の知れない女には勿体無いね」
やれやれと首を振る先輩兵士の隣でオリバーはしゅんと肩を落とす。石が欠けているとはいえ、まだ若い彼が買うには相当な出費だったはずだ。それともデザインが崩れた故に店主は破格で売ったのだろうか。
「僕から一つ提案しても良いか?」
項垂れる背中に話し掛けると、オリバーはわずかに首を傾げてこちらを見上げた。
「なんでしょうか?」
「君が支払った倍以上の値を払うから、僕に指輪を売って欲しいんだ。その金で君は恋人へのプレゼントを新しく買い直したら良い。母親を食事に連れ出しても良いし、好きに使ってくれ」
「えぇっ……!?」
「探していたものに似ていてね。君さえ良ければ、協力してくれると助かる」
申し訳ないです、と言い続けていたオリバーも、先輩兵士からの力説もあって遂にはフィルガルドの提案を呑むに至った。白い小さな箱を手のひらに握り締めて、フィルガルドは部屋へと戻る。
「さて……どうやって渡そうか」




