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第30話 黒竜大撃進!

「見張りはいないな……平和ボケしてるこの街じゃ当たり前なのか……?」


 俺とフェリルは時計台の入り口前まで来ていた。


「とにかく今がチャンスだ、行くぞ! 『解』で入り口の鍵を頼む!」


「うん……『解』!」


――カチャ


 フェリルの文字(スペル)で中へと侵入した俺達だったが、中は真っ暗でよく見えない。


「暗いな……ドア閉めたか?」


「う、うん。閉めたよー」


「よし、『(ライト)』!」


 俺は最近レアに教えてもらった文字(スペル)で中を照らした。すると……


「うへぇ……これ登るのかよ……」


 中には壁伝いの螺旋階段のような足場が最上階まで続いていた。足で登ろうと思えば一苦労どころではないだろう。


「エレベーターとか……ってあるわけないか」


 俺が若干辟易していると、


「何これくらいでため息ついてんのよー」


 とフェリルが能天気に言ってくる。


「……身体能力の高い耳長族のお前と一緒にするんじゃねーよ。……まぁ言ってても仕方ないし行きますか……」


 と、レンは重い腰を上げて階段を登り始めた。……それを見て後ろから着いてくるフェリルの口元はニヤリと歪んでいた……。




          §




――コンコン


「オーイ、レン殿~? 行かないのですカ?」


 フェリルはレンの部屋のドアをノックしていた。……しかし返事は無い。


 そこへレアとクレアが通りがかる。


「あら? アンタまだ行ってなかったの?」


「ロビーでレン殿を待っていたのですガ、何時まで経っても来ないのデス」


 ……? 首を傾げる三人。続けてレアもノックをしてみる。


「レン! どうかしたの? ……ってあら?」


 レアがドアノブを捻ると簡単に扉は開いた。三人が顔を見合わせて中に入ってみると……


「……誰もいない……」


 そう、部屋の中には()()()()()()()



          §



「はぁ、はぁ……」


 俺達はやっとの事で鐘が設置されてある最上階まで登ってきた。


「へばってるねー」


「そりゃそうだろ……息一つ上がってないお前の方が変だぞ」


「ひどーい」


 ……? 俺はフェリルの態度に少し違和感を感じながらも、鐘のある屋上部分への扉を開けた。


「うおー……」


 ドアを開けるとそこは外に繋がっており街を一望できるような高さにまで来ていた。吹き抜ける風が冷たい。


「高けぇ……手すりがあるとは言えちょっと怖いな……鐘はあれか」


 屋上部分の中央には石造りの屋根付きの台が設置されておりそこに鐘は吊るされていた。見たところ(ルーン)は見当たらない……。俺は中を確認しようと覗こうとした時、


「レン! あれ見て!」


「ん? どうした?」


 フェリルが塔の下を指差している。手すりから身を乗り出して指差す方を見やると、下の街灯に照らされて、かすかに仲間達が見える。


「あいつら……! 少人数で行くから来るなっていったのに……! ……おーい、こっちはいいから帰ってろ~……」


 俺は小声で叫ぶというマヌケな事をして何とか伝えようとしたが、もちろん伝わらない。それどころか逆にあっちが手を振って何かを伝えようとしている。


「あぁ……? 何だ……?」


 何かあったのか……? 俺は反射的に耳を近づけて聞き取ろうとするがやはり聞こえない。


 ……レンは聞こえなかったが、下に居る三人の口からは単純な三文字しか出ていなかった。


 ……ニ・ゲ・テ……


()()()()何言ってるか聞こえないよ、なぁ……? ……!!」


 そう、下には俺の仲間達()()が居た。俺が猛烈な気持ち悪さに振り返ろうとしたその時……!


――ザシュッッ


 肩を斬られた鋭い痛みと共に思いっきり押された俺は、手すりを越えて宙に投げ出された。時計塔から落ちていきざまに、(ソード)を手にしたフェリルの()()()()()()()()()()悪辣な笑みが見えた……。



          §




「レン!!」


 たった今落ちてゆく仲間に悲痛な叫びを上げ時計塔に走っていくレア。


「しまっタ……! あれはきっといつぞやの『擬』の能力者……!」


 この街に既に潜んでいたなんテ……! 口惜しそうに洩らしながら続くフェリル。


「それよりレンさんが……! 受け止めようにもあの高さでは……!」


 刻一刻と死へと近づいてゆく仲間に焦るクレア。


 屋上では元の姿に戻ったジャルドが落下するレンを見ながら高笑いをしている。


「ハッハッ……! 前回の“殺した”が本当になったな……!」


 その高笑いは誰にも届く事はなかった……。


――


 レンは落ちながら肩を押さえる事しか出来なかった。痛みで何かの文字(スペル)を使う余裕も無い。


(万事休すか……!)


 レンはその瞬間、死を覚悟した。……だがその残酷な結末は現実のものとはならなかった。



「グオォォォォォ!!!」


 辺り一帯に力強い咆哮が響き渡る。


――ドサッ


 レンは落ちた。だが着地の際に感じたものは石畳の地面ではなく、柔らかさもある鱗のようなものであった。


「これは……?」



          §



 地上にいた三人は呆気に取られていた。レンが落ちてくると思ったら、今しがたまで存在さえ認識出来なかったドラゴンが急に現れてレンを受け止めたのだから。


「あれは黒竜……!」


「黒竜!?」


「この街の守り神的な生き物でス! あの火山に生息すると言われていますガ……」


「何でそんなもんがレンを……!? ってまぁいいわ! レン!」


 どうでもいいとばかりにそのまま下に降りてくる黒竜に走り寄るレア。


「レン! 大丈夫!? クレア、肩を怪我してる! 文字(スペル)を!」


 黒竜の背中からレンを引き取ったレアは慌てた様子でクレアに指示を出す。


「はい! 『癒』!」


 クレアの文字(スペル)によってレンの肩の傷がふさがってゆく。


「……しかしこのドラゴンはいったい何処かラ……? いくら黒くて、今が夜だといってもさすがにわかりまス……。まるで今迄()()()いたかのように急に現れましタ……」


 レンの治療が終わったのを見ると黒竜はまた翼をはためかせ、時計塔の上へと昇っていった。



        §



 最上階ではジャルドが忌々しそうに下の様子を睨んでいた。


「何故ここに黒竜が……! あの時全てケロス様が……。 ……!! まさか……」


 ジャルドが一つの可能性に気づいた瞬間、彼の眼前には黒竜が舞い昇り、真紅の瞳でこちらを睨んでいた。


「まさか貴様ッ……!」


――先ずはアンタからよ――


 冷たい囁きは誰に届いたのか……、黒竜の口からは溢れんばかりの焔が行き場を求めていた。


――消えなさい――


――ボォオオオオオン!


 けたたましい轟音と共に黒竜から放たれた灼熱のブレスは、時計塔の一部ごとジャルドをこの世から消し去ったのであった……。

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