私達へのギフト
なろうラジオ大賞参加作品第六弾。
「よく私に仕えてくれた」
ある者の前で一組の男女が跪いていた。
長きに亘り目の前の存在――主に仕えてきた者達の代表者たる男女だ。
「おかげでまた一つ、大きな仕事を成し遂げられた。そして手伝ってくれたお前達に私は褒美を与えようと思う」
「「よろしいのですか?」」
主の言葉を聞いた男女は、思わず同時に訊ねていた。
確かに目の前の存在は仁義に厚い存在であるため、そう言うのも理解できる……が、自分達はそもそもそんな存在に仕える事を選んだ存在なのだ。
仕える事に喜びを見いだしてるのだ。
なのに褒美を与えると言われ。
彼らは喜びと困惑を同時に覚えてしまう。
「そもそもお前達は、私と寿命が違うからな」
自分に仕えている者達の困惑を察したのか、その存在は告げた。
「そしてそんなお前達を、私のためにずっと働かせるワケにはいかない。というかお前達にはお前達のための時間があっていいハズだ。だから私はお前達を解放し、なおかつ余生を送る場所を贈ろうと思う」
「「あ、ありがたき幸せ!」」
男女は思わず、さらに頭を下げた。
確かに、主に仕える以外の事をしてみたいと思った事もある。
だがそれと同じくらい、主に仕える喜びを覚えてたため、そこまで自分の時間について考えてなかった。
だが、こうしてその時間を与えられ……男女はとても嬉しい気持ちになった。
男女を始めとする存在は、主に与えられた場所で暮らし始めた。
自分達に代わり主を支える存在に、仕事の引き継ぎをした後で。
場所は、世界の片隅にある自然豊かな大地。
時々、自分達でさえ予想できなかった環境の異変とか起こったものの、それでも余生を過ごすにはちょうどいい場所だった。
――そしてそれから、数万年の時が流れた。
「主が言ってた惑星はここか」
「我々の先輩の子孫、まだいるといいですね」
男女とその仲間が余生を過ごすため与えられた場所――地球上空に一機のUFOが来訪した。
乗ってるのは、私達と似た容姿の異星人。
そして彼らは、台詞から分かるように、自分達の先輩――地球ではアダムとイヴに該当する存在を中心としたホモ・サピエンスの子孫を求めていた。
「まったく。まさかあれからさらに仕事が増えるとは」
「主も主だ。こんな事態になる可能性も考えた上で判断してほしいものだ」
彼らは主――異星人連合のトップの下、宇宙の調和のために動いている。
だがあまりに扱う事件が増えたために。
地球人を連れ去り再び労働力にしようとしてるのだ。




