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第98話 水色の耳飾り


 軽音部に寄った後、柏木奈乃は一度家に帰って私服に着替えた。

 雪穂ちゃんに家に来るように言われている。


 今日はホワイトデーだから何か用意してくれてるのかな?


 何か斜め上のお返しを用意してそうな気がする。だって雪穂ちゃんだから。


 雪穂ちゃんが好きそうな服に着替える。白のワンピースにカーディガンを重ねて可愛いよりの清楚系にしてみる。

 雪穂ちゃんに買ってもらった真珠のピアスをつける。ウィッグをハーフアップにしてピアスを目立つようにした。


 姿見に映った私は可愛い。


「うん!」声に出して気合を入れる。

 頑張ろう。今日も雪穂ちゃんに喜んでもらえるように、雪穂ちゃん好みの可愛い私になる。




「いらっしゃい、奈乃ちゃん」笑顔の雪穂ちゃんに迎えられる。

 嬉しそうな雪穂ちゃんに私も嬉しくなる。


「今日も可愛いわね」そう言って抱きしめられた。

 最近の雪穂ちゃんはどんどん距離感が近くなってる。

 お付き合いして長くなってきたから、遠慮も無くなるよね。

 抱きしめながら身体を弄られて、そしてお尻を鷲掴みにされた。


「痛いよ」可愛く抗議する。

 雪穂ちゃんは笑顔で無視して、右手で私の顎を取ってキスをした。

 左手は私のお尻を掴んだままだった。


 痛いって言ってるよね!



 ダイニングに通される。

 ソファーで待っていると雪穂ちゃんは紅茶とクッキーを持ってきた。

「奈乃ちゃんに手作りのケーキを貰ったからね」

「え? これ手作り?」

「そうよ。昨日作ってみたの」

「……、お店で買ったのかと思った」

「そう?」


 雪穂ちゃんのお料理は何度も食べてるけど、お菓子は珍しい。作れるんだ……。

 て言うか、那由多や羽崎より上手じゃないかな?


 一つ食べてみる。

 見た目だけじゃなくて、とても美味しい。

 雪穂ちゃんは何でもできるんだね。


「美味しい! すっごくすっごく美味しい!」

「そう? 奈乃ちゃんに喜んでもらえて嬉しいわ」

 バレンタインデーの時の雪穂ちゃんへのチョコレートケーキ、私なりに頑張ったんだけどな。こんなに上手くできなかった。


 おやつを食べながらお喋りをする。

 お家にお邪魔したときからとても気になっていたので話題に出す。

「どうしてジャージ?」


 今まで雪穂ちゃんがラフな部屋着で私と合うことはなかった。

 ジャージといっても高そうな生地で、街用のファション性が高いものだった。少なくともこれで運動しようとは思わない。


「気分? こんな格好してる男の子いるよね?」

 あー、雪穂ちゃん、やんちゃな男の子の格好するの好きそうだものね。

 普段優等生だもんね。


「それに、家で奈乃ちゃんと二人で会うときくらいは、そんなに背伸びしなくてもいいかなって」そう言って照れたように笑う。


 ん。私といると安心して素が出せるって言いたいのかな?

 私に心を開いているアピール?

 雪穂ちゃん的には最大限に私への好意を表してるんだろうけど。


 私は雪穂ちゃんに喜んでもらえるように、可愛いって思ってもらえるように頑張ってるんだけどね。


 紅茶を飲み合えた頃に、「これもお土産に持って帰ってね」と、ラッピングされたクッキーを貰った。

 雪穂ちゃんにしては普通のホワイトデーのお返しだった。

「それとね」そう言って席を立つ。

 すぐに小さな箱を持って戻ってきた。


 まだあるんだ?

 私もチョコレートケーキだけでは済まなかったけど。後日、私自身をリボンでラッピングして差し出したし。


「開けてみて」

 化粧ケースに入ったピアスだった。


「何かアクセサリーって考えてピアスにしてみたの。奈乃ちゃんピアス好きでしょ?」

「うん」好きだけど。

「お揃いの指輪とかも考えたのだけど、流石に重すぎるかなって」そう言って恥ずかしそうに笑う。


 え? ペアの指輪は重すぎた?


 江島くんにペアで指輪買ってもらったけど……。江島くんには重たかったかな?


 ……、そうだね。雪穂ちゃんにペアの指輪もらったら、重すぎて困っただろうね。


 ピアスは銀色のチェーンに水色の石がついていた。可愛いけど、安っぽくはないデザインだった。

 江島くんに買ってもらった指輪も銀色だった。シルバーで結構高かった。

 これも高そうだね。


「シルバー?」

「シルバーゴールドよ」

「シルバーゴールド?!」シルバーよりさらに高くない?

 もしかしてこの石、クリスタルガラスじゃなくて石?


「この石は何の石?」

「アクアマリンね」

「高くない?!」

「え? その真珠よりは高くないわよ?」

 ……、この雪穂ちゃんに貰った真珠のピアス、そんなに高かったんだ……。



「ピアスつけてみて」

「あ、うん」真珠のピアスを外して、携帯用のアクセサリーケースにしまう。


「私につけさせて」アクアマリンのピアスに手を伸ばしたところで、雪穂ちゃんが言った。

 え?


「あ、うん。……雪穂ちゃん、つけて」私からおねだりしなおした。雪穂ちゃん、こういうの好きだよね。


 雪穂ちゃんはちゃんと手とピアスを消毒してから私の耳に手を添える。

 目を閉じて雪穂ちゃんに任せる。

 顔の近くで雪穂ちゃんの息遣いが聞こえる。

 高揚しているのか息遣いが少し激しい。


 私もピアス入れるのを他人に任せるのは不安で、少し呼吸が早くなる。


 痛い。

 雪穂ちゃんは私の穴に挿入した。



 もう一つのピアスもつける。

 雪穂ちゃんは痛がる私を見て明らかに興奮してる。すぐにピアスを入れずに、怖がってる私を見て愉しんでる。


 ピアスをつけた後も、雪穂ちゃんは私の頬を両手で挟んで自分の方に顔を向けさせていた。

 ずっと私の顔を見つめている。

 真近くで見つめられてソワソワする。


「どう?」

「ええ、とても可愛いわ」

「ん」雪穂ちゃんは可愛いとしか言わないよね。


「おいで、奈乃ちゃん」私の手を取って立ち上がらせる。


 いつも撮影スタジオ代わりに使っている応接間に手を引かれて連れてこられた。

 大きな姿見の前に立たされる。


「似合ってるわよ。とても可愛い」

 鏡の中に二つの青い石を耳につけた私がいる。

 雪穂ちゃんは私の後ろに立って、両手を私の肩に添えていた。


「ねえ。アクアマリンって、何か意味があるの?」石言葉とか、アクアマリンを選んだ理由があるのかな?

「え? 別にないわよ?」

 無いんだ?


「奈乃ちゃん、水色好きよね?」

 私が水色を好きだと思って、水色の石を選んだんだ。

 私って、水色好きだったっけ?


「水色が好きって言ったことあった?」

「え? なかったかしら?」雪穂ちゃんは少し考える。「でも水色好きよね?」


 私、そんなに水色使うかな?

 鏡に映る私を見る。

 水色のカーディガンを着た私がいた。


「あ……、水色の服着てるね」

「たいして好きじゃなかった?」少し不安そうな雪穂ちゃんの表情。

「ううん。好き。ありがとう、雪穂ちゃん」私は振り返って笑ってお礼を言った。

 雪穂ちゃんも笑顔になる。

「何つけてても奈乃ちゃんはとても可愛いわよ」そう言って私を抱き寄せ、キスをしてきた。


 羽崎は水色が好きだったよね。




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