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海賊討伐 Ⅱ

海賊船が現れたことによって、静寂の夜から一変して、蜂の巣を叩いかのような騒ぎになった。


船乗りの叫び声とともに、船首を合図の花火が上がった方向へと向けられる。NPCの船員たちは手慣れた様子で、慌ただしい船上でも的確に、そして素早く自分たちの役割をこなしていく。


真がNPC達の手際の良さに舌を巻いているのも束の間、風を切って走る船はどんどん距離を縮めていき、20分ほどで海賊船を見つけた船の近くまで着いた。


「おい……まじかよ……」


誰の声かは分からないが、驚愕の声が漏れる。夜の海上でも視野のあるゲーム化した世界の海。その海の上で不気味にほの青く光る船体に、ボロボロのマスト。アンデットの海賊を討伐に来たのだから、幽霊船が出てくることは想像していた。だが、想像を超えるのは、その巨大な船体。


真達が乗っている船の優に3~4倍はある大きさ。真達が乗っている船が決して小さいわけではない。海賊の船が出鱈目に大きいのだ。その大きさに皆唖然とする。


真達が到着した時には既に他の船や軍隊の船も到着しており、巨大な幽霊船と化したアンデットの海賊船に梯子をかけて乗り込み、戦闘を繰り広げていた。


海賊船の方からもスケルトンの海賊たちが這い出てきて、乗り込んでくるセンシアル王国軍と応戦し、逆に軍隊や商会連合の船へと乗り込んでいく。


「船だけじゃねえ……。な、なんだあの大きさは……ッ!?」


スケルトンの海賊たちの姿を見た一人の男が驚愕に表情を強張らせた。センシアル王国軍が戦っているスケルトンの大きさが三メートルほどはある。


「遅れるなーッ! 乗り込めーッ!!」


だが、そんなことは気にする様子もなく、真達が乗っている船のNPCが叫びを上げると、他のNPC達が次々と巨大な海賊船へと梯子をかけていった。


「おいッ! ちょっと待て!!! なんだあれは!? なんでスケルトンがあんなにでかいんだ!?」


信也が怒声を上げた。今から戦おうとしている相手は大きなシミターを掲げ、ボロボロの海賊服を着たスケルトン。聞いていた話からは当然、人間のサイズと思っていたが、目の前に迫ってきている敵はその倍の大きさをしている。


「当然だろ! 奴らは巨人族の末裔だ。キール海賊団がアンデット化したと最初に説明を受けているはずだろ? 何を今更言ってるんだ!?」


信也の詰問に眉をひそめながらもNPCが答えた。忙しい時に何を言ってるんだと言いたげな顔をしている。


「信也、そもそもの前提が違うようだな。こっちの世界でキール海賊団が巨人族の末裔であるということは常識なのかもしれない。……それでも説明は欲しかったが」


千尋が冷静な口調で言う。想定外の事態になっていても、まるで動揺がない。それは、まるで機械のようにも見えるだろう。


「チッ、クソッタレめ! これで一人50,000Gは安すぎだろうがッ!」


吐き捨てるようにして信也が毒づく。海賊とアンデットという組み合わせに巨人という更に凶悪な要素が追加された。追加されたというよりは、元からそうだったのだが、それを知らなかった。そして、そのことで仲間を危険に晒すことになる。信也はそこに憤りを感じていた。


「どうする?」


「ここまで来てしまったんだやるしかねえだろ! 千尋! 俺が最前線に立つ。お前は俺の背中を守れ! 小林は後衛の護衛だ! 他はさっき指示した通りだ。前には出るな!」


「了解だ」


千尋がすぐに返事を返す。千尋は決して動揺していないわけではない。だが、近くに最も信用ができる人間がいる。その人が前に出て守ってくれる。そのことが分かっているから、冷静に考えることができる。


それは千尋だけではなく、他の『フレンドシップ』のメンバーも同じ。信也対して絶大な信頼を置いている。だからこそ、想定外の敵にも士気が下がることはなかった。


「行くぞオラァーーーーーー!!!」


信也が獣のような雄叫びを上げて海賊船へと乗り込んでいく。それに寄り添うようにして千尋が後に続いた。


「凄いな……あの人は……」


嵐のように捲し上げて、嵐のように海賊船へと乗り込んでいく信也を呆然と見ていた真が思わず呟いた。


「私達は真辺さんの指示に従って、後方で援護するね……」


美月が少し悔しそうな声で言った。美月はアンデットが相手なら、ビショップの特性であるアンデット特効を持つスキルで戦うことができる。今回のアンデットの海賊討伐で美月はその特性を活かして戦うつもりでいた。だが、それは通常のアンデットを想定してのもの。巨大なアンデットを前に一歩下がらざるを得ないことが悔しかった。


「ああ、そうしてくれ。俺は前に出て、とっとと海賊どもを海に還してくる」


「うん、気を付けてね」


「大丈夫よ、真があんなのに後れを取るわけないじゃない」


緊張した面持ちの美月に対して翼が声をかけた。スナイパーである翼も美月と同じく後方からの援護に回る。


「私は精霊を突っ込ませるわね」


サマナーである華凛は自らは戦わず、精霊を召喚して前線に送り込む作戦。精霊は倒されても再度召喚すればいい。何度もでも使い捨てることができるサマナーらしい戦法。


「相変わらず、精霊を酷使しますよね……」


無慈悲に使い捨てる戦法に少し引き気味の彩音もソーサラーであるため、遠距離から魔法攻撃をすることになる。


結局、真以外は全員が後衛職であるため、真が一人が突撃するという形になる。だが、それは真にとって都合が良かった。前に出てこられるよりも後ろに居た方が危険は格段に少ない。その分、真は存分に動くことができる。


「じゃあ、行ってくる」


真はそう言うと、一気に走り出して、かけられた梯子を伝って海賊船の中に乗り込んでいった。青白く光るその船は、巨人族の末裔が使っていたこともあり、何もかもが人間のサイズとはスケールが違う。転がっている樽一つをとっても、まるで自分が小人になったかのような錯覚さえ覚える。


<レイジングストライク>


相手が巨人族の末裔で、それが海賊になって、さらにアンデット化したとしても、真は怯まない。迷いなく一番近くにいた巨人のスケルトンに向かって真がスキルを放つ。


猛禽類が獲物に襲い掛かるように、大剣を突き立てて飛びかかった。レイジングストライクは遠距離からでも発動できるスキルで、離れた敵に対して一足飛びで距離を詰めることができる攻撃スキルだ。近接攻撃が専門のベルセルクにとっては重宝するスキルでもある。


「次!」


初手のレイジングストライクで巨人のスケルトンを一匹倒した真は次の標的に目を向ける。


<ソニックブレード>


大剣から放たれる音速の刃が真空のかまいたちとなって別の巨人のスケルトンに襲い掛かる。甲高い音とともに見えない刃に斬られた巨人のスケルトンはその一撃で崩れ落ちた。


「うおぉりゃああぁぁぁぁーーーー!!!」


突然獣が吠えたかのような大声に、真が思わず声の方へと振り向いた。巨体で襲い掛かってくるスケルトンよりも、その声の方が真にとっては意識を向けさせられる。


声の主は信也だ。5、6体のスケルトンを相手にしながら剣を振り、盾で攻撃を防いでいる。振りかざす片手剣が白い光を放っているのは、パラディンの対アンデット用スキルである、ホーリーセイバーを発動しているからだろう。


「無茶するな、あのオッサン……」


信也の背中を千尋が守っているが、敵の大半は信也が受け持っている。巨人族の末裔のスケルトン相手に一歩も引いていない信也の姿に真は意識せず笑いが漏れた。


「おおおおーーーーー!!!」


<ブレードストーム>


猛ダッシュで信也の方へと駆け寄った真が真横に大剣を振る。体ごと一回転させて放たれた斬撃は、暴風のように同心円状に広がり、刃の領域に入ったものをズタズタに切り裂く。


スケルトンがいかに巨体であっても、真には関係がない。アンデットでも、海賊でも、巨人族の末裔でも真にとってみれば雑魚は雑魚だ。


「…………!?」


信じられないものを見たという顔をしているのは千尋だ。信也に対する信頼の厚さから、スケルトンの正体が巨人であったとしても冷静でいられた千尋が、今日初めて驚愕の顔を見せた。


「ハハハハハハッ!!! お前、聞いてたよりも無茶苦茶だなッ! 面白い! 蒼井! お前面白れぇよ!」


幽霊船化した海賊の船の上、巨人族の末裔がスケルトンになって周りを囲んでいる中、信也は腹を抱えて大笑いした。


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