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攻城戦

【メッセージが届きました】


【攻城戦により、『ライオンハート』ギルドがセンシアル王国領コンラッド地域の支配権を委任されました】


このメッセージが全員に届くと王都グランエンドでは大騒ぎになった。攻城戦の仕組みもよく分かっていない人が多い中で、ギルド『ライオンハート』は電光石火の如く攻城戦に勝利し、最初の勝者となったのである。


攻城戦は二週間に一度行われる大規模対人戦。行われる場所はセンシアル王国領の北と南と西に三カ所ある対人戦エリアである。


攻城戦は王都グランエンドにある攻城戦管理局によって管理され、攻城戦への参加もこの攻城戦管理局に申請しなければ参加することができない。


攻城戦に勝利したギルドが一時的に権利を委任され、広大なセンシアル王国領の統治を任されるという形で実質的な支配権を得ることになる。そのため、センシアル王国が攻城戦管理局を設置して、当該地域の支配権を得たギルドの監視をしているということになっているのである。


攻城戦の勝敗の決し方は各対人戦エリアにある砦を守る守護者を倒すか守り切るかで決める。攻城戦は、支配権を持っていない攻める側が砦内まで進行し、守護者を撃破することで支配権を奪い取ることができる。逆に支配権を持っている守る側は、制限時間まで守護者を守り切れば勝ちとなり、引き続き支配権を継続することができる。


バージョンアップが実施されてから最初に行われた攻城戦には誰も参加せず、勝利ギルドなしで最初から支配権を持っているNPCがそのまま不戦勝となった。それは、碌に攻城戦の情報がないことと、王都へ移動してきたばかりで攻城戦に気を回す余裕もなかったこと、そもそも命のやり取りをする攻城戦に参加する意志がないギルドが多いことが大きい。


そして、二回目の攻城戦が行われた際、ギルドマスター、紫藤しどう 総志そうしが率いる『ライオンハート』が、奇襲のように先陣を切って攻城戦に参加し、他の誰も参加していない攻城戦に勝利を収めたのである。


支配者がNPCである内に攻城戦で勝利して支配権を取ってしまおうという『ライオンハート』の目論見は成功し、実際に人を殺すわけではないということも士気の低下を防ぐことに成功した。そのため、この最初に行われた攻城戦で『ライオンハート』から出た犠牲者はいない。


元々『ライオンハート』というギルドは、ゴ・ダ砂漠がある地域から王都へと移動してきたギルドで、ゴ・ダ砂漠の地域から来たギルドの中では最大最強のギルド。ミッションも『ライオンハート』が中心になってクリアし、前回のバージョンアップで突如現れた巨大な三つ首蛇、タイラント ジャヌークを討伐したのもこの『ライオンハート』である。


現状で、王都に来ている全てのギルドと比べても『ライオンハート』というギルドはおそらく最も強大なギルドだと噂され始めていたギルドだ。


『ライオンハート』が支配権を獲得したコンラッド地域は、エル・アーシアへと続く街、トライゼンもその支配権が及ぶ範囲になる。


『ライオンハート』がコンラッド地域の支配権を手に入れてからさらに二週間後。残りの二つの地域の支配権を取るために動いたギルドは二つ。


一つはコル・シアン大森林のある地域から来たギルド『王龍』。もう一つは『ライオンハート』と同じくゴ・ダ砂漠のある地域から移動してきたギルド『テンペスト』だ。


ギルド『王龍』が支配権を獲得した地域は、自らの出身地に繋がる地域である、コル・シアン大森林とセンシアル王国領の中継地点にある街、アインスフェルを含む、サーライド地域。


ギルド『テンペスト』が支配権を獲得したのは、残るゴ・ダ砂漠へと通じる街、ツヴァルンを含むハーティア地域である。


この三回目となる攻城戦では、人同士が殺し合いの戦争をするのではないかと噂されたが、実際に人と人が殺し合うようなことにはならなかった。


それは、事前に『テンペスト』が攻城戦に参加することを表明しており、ハーティア地域にくる奴は容赦なく殺すと触れ回っていたこと。『王龍』が残るサーライド地域を取りに行くことも情報として回っていたため、他のギルドは一切手出しをすることはなかった。


『テンペスト』も『王龍』も大規模ギルドで非常に戦力が高い。『ライオンハート』には劣るとしても、他に対抗できるほどの戦力を持っているギルドはなく、攻城戦が始まる前には多少の駆け引きもあったが、命のやり取りをしてまで地域の支配権を獲得したいとは思わなかったのである。


そんな中、真達の出身であるエル・アーシアから来たギルドはこの攻城戦に参加する素振りも見せていなかった。それは地域性ともいうべき、エル・アーシア出身者の特徴があったからに他ならない。


『ライオンハート』や『王龍』は積極的にミッションの攻略や巨大モンスターの討伐に命がけで挑んできた。それは、ミッションをクリアしないとこの世界で先が見えないことや離れ離れになった家族や恋人、友人と会いたいという一心で自らを鍛え、死線を潜り抜けて、乗り越えてきた集団だからだ。


『テンペスト』に関しては、他の二つとは事情が違い、この世界で他人よりも優位に立ちたいという思いから、妨害や恫喝など迷惑行為も平然と行う不法集団で、この攻城戦というものを一番待ちわびていたギルドでもある。


だが、エル・アーシアの出身者に『ライオンハート』や『王龍」のような強い意志を持って死線を潜り抜けてきた大きなギルドはなく、『テンペスト』のような暴力集団もいない。


これは、エル・アーシアの出身者の中でも特にマール村にいた人に多い傾向であるが、ミッションは知らない強い誰かがやってくれるという意識が根底にあるからで、それは真が人知れずミッションをクリアしていたことが要因になっている。


だから、エル・アーシアの出身者には力を求める意志が弱いため、攻城戦に参加するという考えすら出てはこなかったのである。エル・アーシア出身では最大規模を誇るギルド『ジャックポット』も静観の構えを崩さなかった。


この時、インヴィジブル フォースの話がエル・アーシア出身者の中で出てきたが、そもそも表舞台に出てくるようなことがあるなら、それは特殊部隊ではないだろうという結論に達し、インヴィジブル フォースが攻城戦に参加するかどうかという話はすぐに消えてなくなった。


そして、センシアル王国領にある三つの地域の支配権が決まってから、さらに二週間が経過した、四回目の攻城戦の時。どのギルドも砦に攻撃をしようとは思わず、時間だけが経過した防衛側のみの攻城戦となり、そのまま支配権が継続されることとなった。


『ライオンハート』も『テンペスト』も『王龍』も他の地域に攻め込もうとは考えていなかった。


それは、まず『ライオンハート』に勝てるギルドがない。その『ライオンハート』にしても、『テンペスト』や『王龍』に戦いを挑めば勝てるが、その代償が半壊では済まないだろうということと、これ以上支配地域を広げても流石に守り切れないという結論に達していた。


それなら、『テンペスト』と『王龍』が手を組んで『ライオンハート』に戦いを挑むことはしないのかという疑問もあるが、『テンペスト』の悪名は既に王都にも広がっており、ゴ・ダ砂漠でやってきた燦々たる迷惑行為、妨害行為の情報は『王龍』の耳にも入っている。当然のことながら信用がないため『王龍』が手を組むこともない。


そのため、この三つのギルドは膠着状態となった。見方を変えれば安定状態になったともいえるこの状態で攻城戦の決着が早々に付いた形となったのである。




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