表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
416/419

最後の戦い Ⅴ

「お待たせしたかしらね。これが調律者の真の姿よ!」


ラーゼ・ヴァールが手にした光の大鎌を大きく振ると、その形状を剣へと変化させた。光り輝く一振りの剣だ。


「こんなの知らねえぞ……」


真の額から一筋の汗が流れた。ここからは未知の領域。ほぼ全ての攻撃は、当たれば致命傷若しくは即死だろう。それを初見で対応しないといけない。


ゲームなら死に覚えればいいこと。何度も何度も同じ攻撃を喰らっては死に、喰らっては死ぬを繰り返して上達していく。


真はそうやって、ゲームでのラーゼ・ヴァールを倒した。


だが、これはゲームであって、ゲームではない。その死は現実の死と同義。


「それじゃあ、行くわよ」


ラーゼ・ヴァールは左手を突き出すと、光の玉を出現させた。攻撃手段として用いる光弾とは違う、もっと大きな光の玉だ。


ラーゼ・ヴァールが出した光の玉は、中空に浮いたまま静止している――と思いきや、いきなりレーザーを射出してきた。


「ッ!?」


一瞬光ったと思った時、真は反射的に身を捻っていた。おかげで、不意打ちのレーザーを何とか回避することに成功。耳の横を光が通り過ぎたのが見えた。


(次が来る!)


光の玉はまだ消えずに滞空している。ということは、攻撃は止んではいないということ。


真の予想は的中し、光の玉は再度レーザーを射出してくる。それを、真は走りながら回避。


「まだまだ、これからよ!」


ラーゼ・ヴァールは、嗤いながら声を上げた。


今度は剣を天に向けて掲げると、光の剣が急激に膨張を始める。それは、見上げても剣先が見えないほどにまで伸びると、真に向けて一気に叩きつけられてきた。


光の超巨大剣は、まるで棒切れでも振るかのような速度で真に襲い掛かってくる。


「うわッ!?」


真は飛び退くようにして光の巨大剣を回避。だが、そこを狙い澄ましたかのように、光の玉からのレーザーが飛んでくる。


これを無理矢理に体を捻って回避。ほとんど倒れ込むようにして、回避を試みたため、体勢が崩れてしまっている。


そこに再び光の巨大剣が振り下ろされてくる。剣が光でできているためか、質量をまるで感じさせない動きをしている。


真は手にした大剣を盾にしながら横に飛ぶ。


だが、体勢が崩れていたこともあり、完全に回避することはできず、光の巨大剣がぶつかってしまう。


「ぐあっ!?」


大剣を盾にしていたこともあり、真の体には直撃しなかったものの。ラーゼ・ヴァールが振った光の巨大剣の衝撃は強烈で、真は無様にも転がされてしまう。


(くそっ! 早く起き上がらないと)


真は床を思いっきり突き飛ばして、体を持ち上げる。その直後、真の足元をレーザーが通過した。一瞬でも起き上がるのが遅かったら、今のレーザーが直撃しているところだった。


しかし、安心している場合ではない。ラーゼ・ヴァールの光の巨大剣は、玩具でも振るような速度で襲ってくる。


真はラーゼ・ヴァールの方に視線を向けると、振り上げた手を斜めに下ろしてくるところだった。


咄嗟に頭を下げてこれを回避。頭上を膨大な光が通り過ぎていく。


「ほら、ほら、どうしたの? 逃げてばかりじゃ話にならないわよ!」


ラーゼ・ヴァールは楽しげに剣を振り続ける。同時に光の玉からもレーザーが飛んでくる。


真としては、ラーゼ・ヴァールの剣の振りに合わせて、懐にまで潜り込みたいところだが、光の玉のレーザーが絶妙なタイミングでそれを牽制してくる。


(面倒な攻撃だけど……)


真は動じていなかった。最初は面食らった攻撃だが、真は全て回避することができている。


(これくらいなら、行けるな!)


真は光の玉のレーザーを回避してから、力いっぱい床を蹴った。そこを狙ってラーゼ・ヴァールの光の巨大剣が振り下ろされてくる。


真は体を回転させながら前に飛び込み回避。そして、着地と同時に踏み込んで――


<スラッシュ>


袈裟斬りを放つ。その斬撃はラーゼ・ヴァールを直撃。


<パワースラスト>


更に追撃の刺突がラーゼ・ヴァールの体に突き刺さる。


<ライオットバースト>


そして、突き刺さったままの大剣が光を放つと、激しい衝撃と共に炸裂する。


(ここから追い込みをかけたいところだけど……)


真は手を止めて、後ろに飛んだ。その跡をレーザーが通る。真を狙って射出された光の玉の攻撃だ。


これがあるから、深追いはできない。


「ハハハッ! 元気があって良かったわ! これくらいで死んでもらったら、面白くないものね! あなただってそうでしょ? もっと楽しみたいわよね?」


「お前と一緒にするんじゃねえよ!」


面白がるラーゼ・ヴァールの言葉には乗らず、真は突っぱねた言い方で返した。


「一緒なのよ。だって、あなた笑ってるわよ!」


ラーゼ・ヴァールが真の表情を指摘する。尋常ではない速度で振られる超巨大な剣戟に対して、真は恐怖するどころか、笑いながら避けていた。


「だから、お前と一緒にするんじゃねえよ! 狂人が!」


真は確かに心が躍動していた。ラーゼ・ヴァールが未知の領域からの攻撃を仕掛けてくると考えただけでも、鳥肌が立つほど楽しい。


だけど、人の命を弄ぶような奴とは違う。戦い自体を楽しんでいるわけではない。世界を元に戻すという目的のために、頼れる相棒を開放して、一緒に戦っているのだ。


「ふふ、その減らず口がいつまで聞けるのか見ものね!」


「お前の下品な声はもう聞きたくないんだけどな!」


「ははは! 言うじゃないのよ! だったら、止めてみなさいな!」


ラーゼ・ヴァールの体全体が激しく光りだした。そして、閉じ込めれていた力が一気に解き放たれるようにして、無数のレーザーを放出した。


「セ、セラフィックレイッ!?」


それは、真もよく知る攻撃だ。ラーゼ・ヴァールの羽が6枚の時に使用してくる、もっとも危険な攻撃。


数えきれないほどのレーザーが雨のように降り注いでくる。一発でも当たれば致命傷。二発喰らえば死亡。


だから、兎に角当たらないように逃げ回らないといけない。


ただ、それはラーゼ・ヴァールの形態が前の一段階下だった時のこと。今はさらに上をいく攻撃をしてくる。


そう、同時に光の巨大剣が振り下ろされてくるのだ。


(チッ! 光の玉も、止まってはいないのかよ……)


追い打ちをかけるようにして、光の玉も真を狙ってレーザーを射出してくる。ランダムにまき散らされるセラフィックレイと、的確に真を狙ってくる光の玉。


二種類のレーザーを避けながら、ラーゼ・ヴァールが振ってくる光の巨大剣も避けないといけない。


最早、人間が対処できる領域ではなかった。


「どう? 楽しいでしょ? ねえ、楽しいんでしょ?」


降り注ぐレーザーの雨の中、ラーゼ・ヴァールは笑いながら剣を振って来る。


「…………」


真は何も答えられないまま、只管ラーゼ・ヴァールの攻撃を避ける。


「どうしたのよ? あなたの減らず口がいつまで聞けるのか楽しみにしてるのよ? さっきみたいに、吠えてみなさいよ!」


ラーゼ・ヴァールの攻撃は執拗なまでに続いている。


「…………」


真はラーゼ・ヴァールの挑発に対しても何も返すことができないでいる。


ただでさえ、セラフィックレイを全て回避することは困難を極める。ゲームで戦っていた時もそうだった。何度も何度もセラフィックレイを喰らっては倒れての繰り返し。どれだけ慣れたメンバーで挑んでも、セラフィックレイを喰らって死ぬ仲間がいたくらいだ。


それでも、永遠にレーザーが降り注ぐことはない。セラフィックレイの攻撃もいずれ止まる。


「ふふふ、よく生きていられるわね。感心したわ」


真は全ての攻撃を回避して、ラーゼ・ヴァールの前に立っていた。


「……舐めるんじゃねえよ! お前の攻撃なんぞに当たって堪るか……!」


肩で息をしながら真が言う。何とか回避しきって見せたものの、正直言ってかなり厳しかった。


「そうそう、そうやって、減らず口を叩いてもらわないとね。潰す方としては楽しくないのよ」


顔のないラーゼ・ヴァールが笑う。目も口もない鏡面状の顔だが、真にははっきりと見えた。ラーゼ・ヴァールは笑っていると。人を蔑む嫌な笑いだ。人の命など、紙屑と同じにしか考えていないような、そんな下卑たる笑い。


「しゃべるな……。虫唾が走る!」


真が大剣を強く握り直して、キッとラーゼ・ヴァールを睨んだ。


「そんなことしか言えないの? もう余裕は感じられないわよ」


「しゃべるなって言ってんだよ……!」


真は負けじと言い返す。だが……。


「ふふふ、噛みついてくるのもいいけど、どうしたの? 笑みが消えてるわよ?」


ラーゼ・ヴァールは真を見下すようにして言った。それは、真の顔から完全に笑みが消えてしまっているから。


「チッ……」


真が思わず舌打ちをしてしまう。それは、真も感じていたことだ。セラフィックレイと光の巨大剣による猛攻を受ける中、戦いの高揚が消えてしまっていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ