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本題 Ⅰ

総志や姫子、真達にに続いて、長い金髪の男と獣人の男が部屋に戻る。最後にリヒターが部屋に戻ると、それぞれが席に着いて大きな会議机を囲んだ。


上座に座るリヒターは非常に不機嫌な顔をしているのだが、真の実力の一端を見せられたことで愚痴も言えないでいる。それでも、総志達が連れてきた5人の実力は申し分ないということが分かった以上、ここは切り替えて本来の話をしないといけない。


「私は忙しい身だ、他にもやらないといけないことが山ほどある。時間が惜しいので、今回、貴殿らを呼んだ趣旨を説明する」


リヒターは負けを認める発言も、謝罪も一切ない。自分から無駄な時間を使わせておいて、多忙な宰相という地位を盾に話を切り出してきた。


「本題に入る前に今回の要人を紹介する――まず、こちらの方は、元ヴァリア帝国魔道将軍、ロズウェル閣下だ」


「初めまして、ロズウェルと申します。ご挨拶が遅れた無礼お許しください」


長い金髪の優男、ロズウェルと呼ばれた男が立ち上がり、胸に手を当てお辞儀をした。頭を下げると同時に、サラサラと綺麗な金髪が垂れ下がる。


「帝国魔道将軍ッ!?」


思わず声を上げたのは真だった。他にも美月や彩音、千尋も驚いた顔をしている。


「“元”魔導将軍ですけどね」


ロズウェルは微笑みながら返した。


「どうして、ヴァリアの将軍がセンシアルの王城に……?」


真の問いかけは当然のことだろう。先のミッションで戦ったヴァリア帝国の将軍が、自分たちの懐の中にまで入ってきているのだ。


「その話は後にしてもらおう――もう一方、紹介しなければならない人がいる。こちらは、獣人国家ロータギア代表、ダルク閣下だ」


「ダルクです。この度は呼びかけに応じていただき感謝いたします」


ダルクと呼ばれた獣人種の男は丁寧に頭を下げた。大型のネコ科の動物を思わせる風貌で見た目は怖い印象があるが、非常に落ち着いている。年は50歳半ばといったところか。身なりはしっかりとしているものの、リヒターやロズウェルと比べると数段劣るところがあった。


「そして、もう説明する必要はないだろうが、私がセンシアル王国宰相のリヒターだ――シドウソウシ、そちらの紹介をしてくれたまえ」


「ああ、構わん――まず、最初に蒼井真だ。こいつの実力はもう説明する必要はないだろう」


「……どうも」


総志とリヒターの間に流れる何とも言えない空気に、真が気まずそうな挨拶をした。


その後に美月や他のメンバーも紹介され、実力は折り紙付きだと言うことが説明された。そして、最後に姫子と千尋が紹介された。


「では、本題に入らせてもらう――ロズウェル閣下よろしですかな?」


一通り紹介が終わり、リヒターが淡々と進行を続ける。


「ええ、承知いたしました――シドウソウシ様他、私共の要望通り、先の戦いでの英雄を連れてきていただいたこと、改めて感謝いたします」


リヒターと違い、ロズウェルは非常に低姿勢で話を進める。美月達からすれば、リヒターよりも遥かに印象が良い。反面、真や総志、姫子や千尋の表情は硬かった。どれだけ態度が柔らかいといっても、やはり相手はヴァリア帝国の元魔道将軍だ。簡単に信用していいとは思えなかった。


当のロズウェルも真と総志、姫子、千尋の表情は見ているが、涼しい顔で話を続けた。


「まず、私の立場を説明させていただきます。先ほども紹介されましたが、私はヴァリア帝国魔道軍の元将軍です。先の戦いでセンシアル王国に侵攻した際も、私はヴァリア帝国魔道軍を率いて参戦いたしました。ですが、私はヴァリア帝国を裏切り、センシアル王国に亡命しました」


「国を裏切った……」


姫子が眉間に皺を寄せながら呟いた。どんな事情があるかは知らないが、自国を裏切って、敵の宰相と団欒しているロズウェルという男。姫子の中の不信感はさらに増した。


「はい、私は祖国を裏切りました。私はヴァリア帝国中央連隊に魔道軍の本体を引き連れて参戦いたしましたが、戦闘行為は行わず、途中で戦線から離脱したのです」


「そんなことを、よくもまあ涼しい顔で言えたものだな」


ここで姫子が噛みついた。一つのギルドを預かる長として、仲間を置き去りにして逃げる行為は軽蔑に値する。


「すみません、私はどうも感情を表に出すことが苦手なようでして……。ただ、祖国を裏切るだけの理由が私にもございます」


「その理由とやらを聞かせてもらおうか」


「はい。それは、ヴァリア帝国がもうすぐ滅亡するからです」


「ッ!?」


ロズウェルの発言に驚いたのは姫子だけではなかった。真や総志、他の皆も、突然出てきたヴァリア帝国の滅亡という話に驚きを隠せずにいた。


「数カ月前に遡ります。ヴァリア帝国にイルミナと名乗る女がやってきました。イルミナはヴァリア帝国のブラド皇帝への謁見を希望。突然現れた、どこの誰とも分からない女です。普通であれば絶対に通らない要望なのですが、なぜか謁見できることになりました。そこから、ブラド皇帝がおかしくなりました。おそらくイルミナという女が精神支配の術を衛兵やブラド皇帝にかけたものと思われます」


「イルミナ……」


真の口から女の名前が漏れる。イルミナ・ワーロック。かつてタードカハルで浄罪の聖人と呼ばれ、同時に伝説のサマナーとしても名をはせた強大な術者だ。アルター真教という狂った教義の元を作ったのもイルミナだ。


先のヴァリア帝国からの侵攻にイルミナが関わっていることは分かったいたことだが、ここでその名前を聞くことになるとは思ってもいなかった。


「当然、ブラド皇帝がおかしくなったことを追及すべく、イルミナの調査をしましたが、ことごとく失敗に終わり、ブラド皇帝はセンシアル王国への侵攻という暴挙に出るまでに至りました。これもイルミナが裏で糸を引いていることは間違いないと思われます」


真の呟きに関してはロズウェルの耳にも入ったが、特に気にする様子もなく話を続けた。


「なあ、ロズウェルさんよ。センシアルへ攻め込むことを誰も皇帝に反対しなかったのか?」


腕を組みながら不遜な態度で姫子が言った。どうもこのロズウェルという男は気に入らない。腹で何を思っているのかが分からないタイプだ。そう、『王龍』のサブマスターである刈谷悟と同じタイプの人間なのだ。ただ一点違うところは、悟のことは嫌いだが信用はできるということ。


「それはもうブラド皇帝に侵攻を止めてもらうように懇願いたしました。……ですが、ブラド皇帝は全く聞く耳を持ってはくれませんでした……。ヴァリア帝国にとってブラド皇帝は絶対的な存在です。強く反対できる者は誰もいません……。極刑を覚悟のうえで陳情に行ったとしても、イルミナがいるかぎり、ブラド皇帝が正常な判断を下すことはできなかったのです……」


ロズウェルの話からヴァリア帝国の皇帝が完全にイルミナの手中にあることが判明した。イルミナと直接会ったことのある真は苦虫を噛み潰したような顔をしている。あの狂人イルミナ・ワーロックがヴァリア帝国という強大な国を手にいれたのだ。今後何をしてくるのか分かったものではない。


「皇帝がイルミナの操り人形になったから、ヴァリアは滅びる。だから、祖国を裏切ってセンシアルに亡命したということだな?」


黙って聞いていた総志が口を開いた。イルミナ・ワーロックのことはそこまで詳しくないが、それでもタードカハルに調査部隊を派遣して、その歴史に関する報告を受けている。それに、センシアル王国で起こった異界の扉事件を起こした張本人がイルミナであることも知っている。手駒になる魔人を呼び寄せるためだけに、異界の扉を開くような奴だ。そんな奴が国家を乗っ取ればどうなるか、想像に難くない。


「私が亡命した理由の半分はそういうことになります」


「残りの半分はなんだ?」


「私はイルミナによって狂わされたヴァリア帝国を救いたい……と考えております」


ロズウェルはまっすぐ総志の目を見て話す。総志もその目を見返す。


「仲間を見捨てたくせに、救いたいっていうのはどういうことなんだ?」


横から姫子が口を挟んできた。今の話を聞いている限りでは、イルミナに乗っ取られたヴァリア帝国を見限って逃げてきたようにしか聞こえない。


「それが、皆様に先の戦いでの英雄を連れてきていただいた理由になります」


ロズウェルは姫子に目線を変えた。姫子もそれを睨むように返す。


「もったいぶらずに直球で話をしてくれ」


「どうも、こういう言い方が染みついておりまして、すみません――率直に申し上げます。私は、元ヴァリア帝国魔道軍を率い、センシアル王国とロータギアと協力して、ヴァリア帝国に反旗を翻します」






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