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緊急会議 Ⅰ

ヴァリア帝国からの侵攻があるというメッセージが届いてから3日後の夜中。真達はセンシアル王国の王都グランエンドに戻ってきた。


王都へ帰還した時には『ライオンハート』のメンバー数人が迎えに来ており、真達はそのまま休むことなく、王城前広場の前にある、豪華ホテル『シャリオン』へと向かった。その目的は緊急で開かれる会議に参加すること。


ホテル『シャリオン』は夜になってもロビーから明かりが消えることはない。幾つものランプが煌々とロビーを照らしている。それはまるで現実世界で暖色のLEDを幾つも灯しているくらいの明るさだ。


真達はそのロビーを通り、『ライオンハート』のメンバー同行の下、ホテルの会議室へと足早に進んだ。


コンコンコンコン


『ライオンハート』のメンバーの一人が会議室のドアをノックした。この会議室はいつも『ライオンハート』が同盟会議に使っている場所だ。いつもは昼間に来るので、夜になってから訪れると、違った雰囲気があった。


「入れ」


会議室の中から男の声がした。低く落ち着いているが、ドア越しでもはっきりと聞こえる力強い声だ。


「失礼します――『フォーチュンキャット』の皆さんをお連れしました」


真達を連れてきた『ライオンハート』のメンバーが報告をする。同時に真達5人も会議室の中へと入っていった。


会議室にはすでに人が揃っていた。いつも『ライオンハート』の同盟会議に参加する面々だ。『王龍』の姫子と悟も上座付近に座っているのが見えた。


「全員連れてきたのか……まあいいだろう」


会議室の奥に座っている時也が眼鏡の位置を直しながら言った。『ライオンハート』の同盟会議に参加する人はギルドの規模に応じて決められている。5人しかいない小規模ギルドの『フォーチュンキャット』は基本的に真だけが参加することになっているのだが、迎えに行った者は全員を連れてきてしまっていた。


「悪いが蒼井の席しか用意していない。他の者は立って聞いてくれ」


上座に座っている総志が淡々と言う。緊急事態であるため、これくらいの不手際は許容範囲としてもいいだろう。


「はい。私たちは大丈夫ですので」


美月が遠慮がちに返事をする。威圧感のある総志はどうも苦手だったため、文句を言うことなく指示に従うことにしたのだ。それは翼や彩音も同じだった。総志が高圧的な態度を取っているわけではないとは分かっていても、自然と出ている圧が強いため気圧されてしまう。


「悪いな、立たせてしまって」


真は自分が立っていてもいいのだが、空いている席は一つしかない。それに、本来会議に参加するべきなのは真なので、真が立つということは他の人に対して失礼になってしまう。


「いいのよ、気にしなくて」


美月が微笑みながら返すと、真は自分の席についた。


「揃ったようだな――葉霧、始めてくれ」


「ああ、了解した――皆様、本日は緊急の同盟会議にお集まりいただきましてありがとうございます。特にタードカハルへの探索に行ってもらっていたギルドの方々に対しては、大変ご足労をおかけしましたことをお詫び申し上げます」


時也は立ち上がりお礼とお詫びの言葉を口にした。定型的な挨拶だが、形通りの綺麗な挨拶になっていた。


「さて、本題に入りますが、皆様もご承知の通り、先日発せられたメッセージに関する会議となります」


真達も時也の話を真剣に聞いていた。前置きは終わり、これから本筋に入る。メッセージが届いたことに関しては粗方聞いてはいるが、詳細はこれから説明を受けることになる。


「まず、メッセージが届いた経緯について改めて説明させていただきます。今回のバージョンアップでヴァリア帝国領という新しいエリアと新しいミッションが追加されました。そこで、我々はヴァリア帝国領でミッションを受けることができると推測し、ヴァリア帝国領の場所を突き止めるため、各ギルドに探索割り当てを決め、王都を出発していただきました」


時也は、まず共通認識としての経過を確認する。そのまま時也は話を続けた。


「ヴァリア帝国領を探すということを最優先事項として行動をしておりましたが、念のためにセンシアル王国内でミッションを受けるのかどうかの確認をさせていただいたところ、センシアル王国のリヒター宰相からミッションの話を聞くことができました。それと同時に、ヴァリア帝国が侵攻を開始するというメッセージが送られたという経過です」


時也がこれまで経過を改めて説明すると、今度は総志が立ち上がって続きを話し始めた。


「ミッションの内容は侵攻してくるヴァリア帝国からの防衛戦に義勇軍として参加するこだ。義勇軍はリヒター宰相の管轄になり、センシアル王国騎士団と協力して防衛にあたる。ヴァリア帝国はセンシアル王国と隣接している。ヴァリア帝国は直接センシアル王国へと侵攻してくるということだ」


「なッ!? 直接センシアルに侵攻してくるのかよッ!?」


真は思わず声を上げてしまった。真の予想では大国センシアルに直接攻め込んでくるとは思っていなかったからだ。


「そうだ。ヴァリア帝国は直接センシアル王国に侵攻してくる。リヒター宰相の話では、ヴァリア帝国が直接侵攻してくるなど想像もしていなかったそうだ。戦力的に見ても、両国はほぼ拮抗しているらしい」


「それなのに、ヴァリアが侵攻してくる理由はなんだ……?」


「不明だ。突如侵攻してくることが分かったということだ。お互いの力が拮抗しているから、その動きには常に警戒をしているところに、センシアル王国のスパイから侵攻の情報が入ってきたということだ」


ざっと説明をした総志が会議室を見渡した。より具体的な戦争の話になり、会議に参加している者も息が詰まりそうになっているのが分かる。


「それと、ヴァリア帝国側の戦力の総数は数万単位。それを今回の侵攻では3つの部隊に分けて侵攻してくる。これに対して、センシアル王国騎士団は、同様に3つの部隊に分けて応戦することになる。俺たちもそれに合わせて3つの部隊を編成する。今回の会議で最も重要な案件は、この3つの部隊編成だ。そこで、まずは『ライオンハート』としての指針を出す。ヴァリア帝国は中央に主力を置き、残り二つの部隊は挟み撃ちにするための編成となっている。ここでは便宜上、残り二つの部隊を右翼、左翼と呼称する。ヴァリア帝国の中央主力部隊を迎え撃つセンシアル王国騎士団の部隊には、俺たち『ライオンハート」が同行する」


敵の主力に対して、こちらの持っている最大規模のギルドが対応する。総志が言っいる内容は誰もが納得するものだったし、他に案はない。


「次に敵の右翼と左翼だ。右翼は『王龍』とその直属同盟に受け持ってもらう。そして、左翼の方は他の同盟ギルドに対応してもらう。大まかな作戦は以上だ。質問はあるか?」


総志が大枠を示した。細かい作戦は個別のことになるため、部隊編成後に決めることになろうだろう。一見理にかなった編成のように思えるが、すぐさま疑問の声が上がった。


「はい、すみません。一ついいですか?」


真っ先に手を上げたのはビショップの男性だった。年齢は40前後といったところか。


「『ハンコック』の渡部さんですね。どうぞ」


司会進行役の時也が渡部に発現を許可する。


「どうも――えっとですね、今の話を聞いた限りだと、私たちその他同盟ギルドの戦力に不安が残るのではないかと思うんですよ。敵の中央主力とぶつかる王国騎士団に『ライオンハート』が同行するのは当然として、『王龍』とその直属の同盟ギルドまで右翼担当に持っていかれたら、残りの戦力がかなり低くなると思うんですが?」


渡部の指摘はもっともだった。『ライオンハート』の同盟における戦力の大半は『ライオンハート』と『王龍』が占めている。さらには『王龍』がコル・シアン森林で活動していた時、その活動初期からの同盟は直属同盟として、『王龍』とは切っても切れない関係を築いていた。


「その点も計算してこの編成にした。心配しなくても、左翼には『フォーチュンキャット』が入ることになる。むしろ一番負担が少ない部隊だ」


総志にとっては想定された問答だった。数的な戦力で言えば、左翼が一番弱い。だが、実力でいえばどうだろうか。真がいる時点でどの部隊よりも強くなっているのは明確だった。


「いや、確かに『フォーチュンキャット』のことは聞いていますよ。マスターの蒼井さんは紫藤さんが認めるくらいに強いということも承知しています。ですが、戦争というものは数が物を言うんです。いくら個人が強いと言っても限度があるでしょう」


『ライオンハート』の同盟幹部には真の力は周知されいている。だが、その力を正確に理解している者は皆無に等しい。一番理解している総志ですら計りかねているのが真の力だ。そんな力を一緒に戦ったこともない人間に理解できるかというと、やはり難しいところだった。


「その個人の限度を考慮した結果、一番楽だと言ったんだ」


総志は一歩も退かなかった。相手は総志よりも年上だが、そんなことは関係ない。真は『ライオンハート』の同盟における最大戦力だ。一騎当千という言葉も生易しいくらいの強さを持っている。だからこそ、戦力的に一番心配な敵左翼担当に『フォーチュンキャット』を当てた。


「ですから、その限度を超えているのではないかと――」


「渡部さん、横から悪い。ちょっと私の話も聞いてもらっていいか?」


話に割り込んできたのは姫子だった。ギルド『ハンコック』は『王龍』と同じコル・シアン森林出身のギルドだ。『王龍』直属のギルドではないにしろ、ゴ・ダ砂漠出身の『ライオンハート』より同郷の『王龍』の方が影響力が強い。


「え、ええ……どうぞ」


渡部は渋々といった感じで姫子の話を聞くことにした。コル・シアン森林でのミッションは『王龍』あってこそ攻略できたということを認識しているだけに、姫子からの話は聞かざるを得なかった。


「渡部さんも覚えていると思うけど、クルーエル ディアドっていう化け物いたよな?」


「は、はい。覚えてますが……」


クルーエル ディアドというのは、コル・シアン森林に突然出現した巨大モンスターのことだ。鋭い牙と爪を持ち、宝石のような青い瞳と漆黒の毛並みを持つ猛獣。神出鬼没なうえ、音もなく現れ、残酷なまでに人を襲う。相当な数の犠牲者が出ており、渡部自身もクルーエル ディアドに襲われたところを姫子に助けられた経緯がある。


「同時期にエル・アーシアに現れたのがドレッドノート何とかっていうドラゴンだ。ゴ・ダ砂漠にも同じ時期に蛇の化け物が出ている。この3匹の強さは同じだと言われてるんだが、蒼井はそのドレッドノート ドラゴンを1人で倒してるんだぞ」


「そ、その話は知っていますが……でも、それを見たっていう人は同じギルドのメンバーしか――」


「できるんだよ、こいつは。私はミッションで蒼井と一緒に迷宮に挑んだ。その時に目の当たりにしたよ、こいつの強さの一端ってやつをな。いいか、想像以上だ。だから、紫藤さんが言うことは間違ってないんだよ」


強めの口調で言う姫子の発言に、周りの目線が真に集中する。


(気まずい……)


当の本人は居心地悪そうにしている。人から注目を集めるというのは昔から苦手な方だった。だから、目立たないように行動をしきたのだが、やっていることがやっていることだけに、この場で注目を集めてしまうのは仕方のないことだった。


「いや、しかしですね――」


「渡部さんは蒼井の戦いを見ことあるのか? もう一度言うぞ! 私は蒼井の強さを目の当たりにして、紫藤さんの言うことが間違ってないって言ってるんだよ!」


年上の渡部に対して姫子がさらに強い口調で言った。このやり取りから二人の力関係が如実に表れている。


「わ、分かりました……」


しばしの沈黙の後、渡部が退いた。同盟のツートップが真の実力を保証している以上、部隊編成に間違いはないと納得するしかない。


「他に意見はあるか?」


渡部の質問が終着したところで総志が口を開いた。これ以上この件について言う必要はない。今回の作戦で一番楽なのが敵の左翼担当であるということを理解できればそれでいい。


「意見がないなら、この作戦でいく。賛成の人は挙手してくれ」


総志が賛否を問うと、全員が手を上げ、『ライオンハート』立案の作戦が可決されることとなった。




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― 新着の感想 ―
この時点でゲームのシナリオに流され過ぎ。 管理者は創造主を名乗っていない辺り、より上位が存在する可能性があって、これに贖う為に事を起こしたなんて妄想をしてると、真に「いいと判断した事をやれ」というセ…
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