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迷宮 Ⅲ

「いッ……!?」


美月は悲鳴を上げそうになるのを食いしばって耐える。長い足をカサカサと動かしながらやってくる巨大な蜘蛛の群れ。1匹でも充分気持ちの悪いものが大量にやってきた。全身に悪寒が走り、思考までもが硬直してしまいそうになる。


<ソードディストラクション>


先陣を切ったのは真だった。跳躍から体ごと斜めに一回転させて大剣を振る。同時に発生したのは純粋な破壊の衝撃だ。


ベルセルクの範囲攻撃の中でも最強の威力を持つソードディストラクションにより、天井を埋め尽くしていた蜘蛛は、一瞬で霧散したように蹴散らされる。


「真ー!」


大蜘蛛の群れを一掃してくれて、美月が思わず歓喜に声を上げた。虫は元から苦手で、昆虫系のモンスターにはいつも苦労させられてきた。最近ではようやく我慢ができるようになってきたが、それでも、この蜘蛛の群れは許容範囲を越えすぎている。


「まだだ! 下からも来るぞ!」


真は警戒を解かず、大剣を構え直した。天井を覆いつくしていた蜘蛛は片づけたが、それで終わりではなかった。後続が下水道の奥からまだまだ来ている。


<ブレードストーム>


真が大剣を真横に振り払うと、斬撃の嵐が同心円状に広がり、辺り一面にまき散らされる。その中に入った蜘蛛たちは無慈悲に切り刻まれなす術もなく果てていく。


ブレードストームは威力が低い代わりに効果範囲が広いという特徴を持っている。ただ、威力が低いといっても、レベル100で最強装備のベルセルクが使えば、蜘蛛ごときは一撃で終わる。だが、


「きゃああーーーー!!」


悲鳴を上げたのは華凛だった。後からもどんどんと蜘蛛が押し寄せてきている。完全に挟み撃ちにされている形だ。


「くっそ! どんだけいるんだよ!?]


真が後ろを振り返って、悲鳴が上がった方を見る。華凛は隊列の後方だ。真は前方。ブレードストームの効果範囲が広いといっても、真の側を一掃したに過ぎない。


「椿姫、咲良! 向こうの応援に行ってくれ!」


真は同じく隊列の前方にいた椿姫と咲良に指示を出す。


「……うん……分かった」


前と後ろから来ているのだから、人数割は半々の方がいいのではと椿姫は一瞬戸惑ったが、戦力比で考えるなら、真一人が他の8人を足したよりも大きと判断し、ここは真の指示に従うことにした。


「……仕方ないわね」


不服そうに返事をしたのは咲良だ。本当は真の指示など従いたくないのだが、今はそんなことを言っている状況ではない。


「悟ッ! そっちは任せたぞ!」


姫子もすぐに指示を飛ばした。後ろからの襲撃に備えて悟を後方に配置していのたが、こんなに早くその役目を果たすことになるとはさすがに予想していなかった。


「任されましたー!」


<マリスヴォーテクス>


悟が片手斧を振り払うと、足元から憎悪を滾らせたようなどす黒い渦が発生した。下水道の幅いっぱいに広がったその渦に触れた蜘蛛たちは一斉に狙いを悟に向ける。


ダークナイトのスキルであるマリスヴォーテクスは効果範囲内に入った者の敵対心を増幅させると同時に、継続的なダメージを与えることができる。


「彩音、華凛! いくよー!」


<バーストアロー>


悟に集まっていく蜘蛛の群れに向かって翼が矢を解き放った。シュッと風を切る音が聞こえたと思った次の瞬間、蜘蛛の群れの中心で翼の放った矢が炸裂した。


バーストアローはスナイパーの範囲攻撃スキルの一つだ。威力も効果範囲も普通だが、その分使い勝手は良い。再使用までの時間も比較的短いので、敵の数が多い場合にはまず撃っておくスキルでもある。


「う、うん……!」


<サイクロン>


気持ち悪い蜘蛛の群れに怯み気味の彩音ではあるが、意を決してスキルを放つ。竜巻が蜘蛛の群れに襲い掛かり、次々と風の牙に引き裂かれていく。


ソーサラーの使えるサイクロンは風属性の範囲攻撃スキル。各種属性スキルのエキスパートであるソーサラーは範囲攻撃の種類も豊富だ。しかも単体に対する攻撃もアサシンやベルセルクに次ぐ力を持っている。ただ、狙われると撃たれ弱いという弱点があるため、注意が必要になる。


「もうッ! こういうの本当に止めてほしいんだけど!」


<ウィンドブレス>


華凛が召喚したシルフィードが顔を前に出して手のひらにふうっと息を吹きかけた。すると、その息は途端に渦を巻き、翡翠色の風が鋭い爪となって蜘蛛の身体を切り刻んでいく。


「刈谷さん! 大丈夫ですか!」


<ライフファウンテン>


蜘蛛の攻撃を一身に受けている悟に美月が回復スキルを使用した。暖かい光とともに体から生命力が溢れていくような感覚が悟を包み込む。


ビショップの回復スキルであるライフファウンテンは一度に回復できる量が多いのと、その後にも継続して徐々に回復していくのが特徴的だ。


「僕は大丈夫だ――まずい! 何匹かそっちに行った!」


美月の回復を受けながら、押し寄せてくる蜘蛛の群れを必死に抑えていた悟だったが、相手の数が多すぎた。すべてを止めることができずに、数匹通してしまったのだ。


「私がいくわ! 椿姫さんお願い!」


「うん!」


咲良と椿姫が武器を構えて応援に駆け付けてきた。


<バトルソング>


バトルソングはエンハンサーの支援スキルの一つ。自身を中心にして味方の攻撃力を上げるフィールドを展開させる。バトルソングの効果範囲内に入った味方は、すでに受けている支援効果に上乗せして攻撃力を上げることができる有用なスキルだ。ただし、効果範囲はそれほど広くなく、後衛職であるエンハンサーが前衛の戦っている場所まで出てこないといけないというリスクがある。


椿姫は強敵が相手でも、数が多くても、積極的に前に出てきて支援スキルを仕様してきた。さらに、自信も前衛と一緒になって敵を攻撃する。しかも、並みの近接戦闘職よりも強いため、『ライオンハート』では精鋭である第一部隊に抜擢されている。


「咲良!」


「分かってるって!」


<シャープエッジ>


音もなく蜘蛛の後ろから近付いた咲良が短剣を突き立てた。シャープエッジはアサシンが使う連続攻撃スキルの起点となるスキル。アサシンは手数が多く、クリティカルヒットが発生しやすいという特性も持っている。


<モータルブロー>


咲良は手を止めずに連続攻撃スキルを放つ。モータルブローはシャープエッジから派生するアサシンの連続攻撃スキルの一つ。最小限の動きから素早く刃を突き立てる。クリティカルヒットする確率が高く威力もあるスキルだ。この攻撃で一体の蜘蛛を仕留めるが、咲良はまだ止まらない。


<ダンシングダガ―>


残っている蜘蛛に目がけて咲良が斬りかかった。まるで踊っているかのように次々と短剣を振る。


連続攻撃スキルの3段目、ダンシングダガ―は手数が多く、単純に威力が高い。椿姫のバトルソングによってその威力はさらに向上している。


「椿姫さん、そっちにも行ったわ!」


咲良が華麗に短剣を振って蜘蛛を倒していくが、単体攻撃に特化しているアサシンにとって複数が相手だと、どうしても倒しそびれてしまうことがある。そのため、咲良が仕損じた蜘蛛が椿姫の方へと向かっていったのだ。


「任せておいて!」


<ストロングアタック>


椿姫は手にしたバトルスタッフで大蜘蛛を思いっきり叩きつけた。


エンハンサーの攻撃スキルには武器であるバトルスタッフを使った物理攻撃スキルがある。ストロングアタックは早い段階で修得するスキルで、エンハンサーの物理攻撃スキルの基本ともいえるスキルだ。


<シューティングスター>


続けてバトルスタッフを掲げ、一気に振り下ろす。見えない衝撃が蜘蛛の頭上から降ってきた。


ストロングアタックから派生するエンハンサーの物理攻撃スキル、シューティングスター。不可視の衝撃を頭からぶつけるスキルで、少しくらいなら離れていても攻撃が当たる。


「止めー!」


<ブルクラッシュ>


椿姫がバトルスタッフを振りかざすと、何か大きなものがぶつかってきたような衝撃が蜘蛛を襲った。


シューティングスターから派生する連続攻撃スキル、ブルクラッシュ。支援が専門のエンハンサーだが、ある程度の攻撃力は持っている。ブルクラッシュの威力も本職のアタッカーには劣るにしても、決して弱いものではない。


「残りは!?」


自身に向かってきた蜘蛛を処理した椿姫が当たりを見渡した。


「椿姫さんこっちもお願いします!」


声を上げたのは翼だった。スナイパーも範囲攻撃スキルを持っているが、ソーサラーほどではないし、サマナーにも負ける。だから、早々に範囲攻撃スキルを撃ち尽くした翼は、椿姫や咲良同様に漏れてきた蜘蛛の処理をして、至近距離から弓矢を放っていた。


「OKー! すぐ行くよ! 咲良も来て!」


「了解ー!」


手早く蜘蛛の相手をしていた咲良も椿姫に呼ばれて応援に向かう。


蜘蛛の身体は巨大で、しかも数が多い。だが、ここまでやって来たメンバーからしてみればもはや敵ではない。最初はその巨体と数の多さに圧倒されたが、どんどん沸いて出てくる大蜘蛛の群れに対して、圧倒的な強さでこれを撃退していった。







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