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微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する  作者: こげ丸


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【第29話:小さな鳥】

 馬車での行程は順調に進み、予定通り昼よりも前に村へと到着した。


「へぇ~! ここがフォーレストが育った村なのね!」


「でも、やっぱり聞いていた通り、村というより少し小さな街といった感じですね」


「そうだな。しかし、村を出てまだ半年ほどだと言うのに、何だか凄く懐かしい気がするよ」


 オレの生まれ故郷の村であるデルナークは、外周を低い石壁で囲われており、弱い魔物ならある程度の襲撃は防ぐことが出来るような造りになっていた。

 そのため、村なのに街のように門が設置されており、中に入るには必ず二つある門のうち、どちらかから入らなければいけなかった。


 そして、今向かっているのは王都側に設置されている正門なのだが……。


「フォーお兄ちゃん!!」


「ん? メリア!?」


 この依頼を受けたのは急だったし、昨日の今日だから連絡など出来なかったのだが、そこにはなぜか、妹のメリアの姿があった。


「え? フォーレストの妹?」


「わ。かわいい子ですね!」


 二人もまさかオレの妹が出迎えに来ているなど思っていなかったようで、少し驚いていた。


「メリア? どうしてここに? 帰るって連絡は入れられなかったんだが?」


 馬車まで駆け寄ってきたメリアは、ちょっと息を整えてから嬉しそうに微笑むと、ちょっと自慢げに話し始めた。


「へへへ~♪ 凄いでしょ? どうしてだと思う? って、あれ? あれあれ~? も、もしかして後ろの二人がフォーお兄ちゃんのパーティーメンバーなの!? 凄い美人さんだ~♪ ねぇねぇ! 紹介してよ!」


 二人とも、ちょっとメリアの勢いに面食らっていた。

 フィアとロロアに気付いたメリアの暴走が始まったようだ……。


 メリアは三つ年下の十二歳なのだが、とても頭が良くて村ではちょっとした有名人だ。

 その点は兄としても鼻が高いのだが、その反面、性格は昔から押しが強く、ぐいぐいと前に出てくるので、初対面の人にはひかれてしまう事が多かった。


「そう、グイグイくるな。二人は姉妹で、オレの大事なパーティーメンバーだ。槍を持っているのが姉のフィアで、ローブを纏っているのが妹のロロアだ」


「わぁ♪ フィアさんにロロアさんですね! まさかこんな美人姉妹とパーティーを組んでいるなんて思わなかったので、私びっくりしちゃいました! 頼りない兄ですが、どうぞこれからも末永~く宜しくお願いします!」


 末永くって……絶対にわざと言って反応楽しんでるだろ……。


「え、えぇ……こちらこそよろしくね。さっきフォーレストが紹介してくれたけど、槍使いのフィアよ」


「え、えっと、えっと、私はロロアです! こちらこそ、その、よろしくです! フォーレストさんから歳が近いって聞いててて……だからその、回復魔法使いなので、何か怪我とかして困ったら言ってね!」


 ロロアは十三歳なので、妹のメリアとは一つ違いだ。

 だからロロアの方が一つ年上なのだが、パッと見は妹のメリアの方が年上に見える。


 メリアは性格も見た目も、ちょっと大人びているからな。


「ありがとうございます。それでお兄ちゃん、やっぱりサラマンダーの討伐に来たの?」


「なっ!? だから、どうしてそんな詳しい事を知っているんだ?」


 以前、ローリエとの一件があった際に、事情をしたためた手紙は一度送っている。

 その後返ってきた手紙では、ローリエの両親も相当あくどい事をしていて、芋づる式で犯罪がバレてみんな捕まったとも聞いている。


 だけど、今回の一件はまだ何も連絡は入れていない。


 それに、ちょうどオレたちが街に着く時間に門の所で待っていたのもおかしな話だ。

 この世界の旅や移動などは、半日ぐらい誤差のうちなのだから。


「へへへ♪ ほんとは、あとで教えてあげようかと思ってたんだけど……」


 メリアは一度そこで言葉を切り、勿体ぶってから口を開いた。


「な~んてね! 本当は冒険者ギルドから連絡が入っただけなんだ♪」


「え? 冒険者ギルドから?」


 どういうことだ? 冒険者ギルドから依頼を受けて、オレたちは最速に近い形でここまでやってきたはずだ。

 それなのに、いったいどうやって冒険者ギルド、まぁこの街にあるのは出張所だが、とにかく冒険者ギルドは連絡を取ったというのだろう?


「うん。なんかね。依頼をしてきたところに魔物を扱えるような能力を持った人がいるみたいで、小さな鳥の魔物を使って手紙を運ばせたみたいだよ」


 そんなレアな能力の持ち主がいるのか。

 たしか弱い魔物に限るが、魔物を調伏して成功すると従える事ができるとか聞いたな。


 まぁ依頼をしてきたところって、衛兵、つまりは国なのだから、それぐらいの人物の一人や二人は抱えていてもおかしくないか。


「なるほどね。驚いたよ……」


 と、納得しそうになったのだが……。


「ちょっと待って。それだと、私たちが到着する時間までわからないんじゃないの? ずっとこの門で待ってたの?」


 フィアに言われて確かにそうだと思いなおした。


「お。フィアさん、するど~い! お兄ちゃん、ダメダメ~! 鋭いパーティーメンバーさんに感謝すること~」


「お、おう。まぁ、フィアとロロアにはいつも感謝してるよ。それで、さっきの話は嘘なのか?」


「ん~。さっきの話自体は本当の話だよ。ただ、実はね……私もなの!」


 ん? なにが「私()」なんだ?


 一瞬何のことかわからないでいると、メリアはイタズラが成功した時みたいな笑顔を浮かべて……、


「私も弱い魔物を従えられるの!」


 と言って、小さな鳥を呼び寄せたのだった。


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