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微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する  作者: こげ丸


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【第26話:名前】

「依頼の内容は……新しく発見されたダンジョンの調査だよ。不正をしないような冒険者に依頼をしたいから、出来ればフォーレストくんのような信用のおける冒険者に受けて欲しい」


 オックスさんの頼みなら受けても良いかと思い始めたのだが、それにシリアが待ったをかけた。


「ちょっとオックスさん! 受付対応中の冒険者の話に割って入るのはやめてください! 特に依頼してきたところに所属しているのですから、ギルドの規則にも違反ですよ!」


 そう言えば正式に依頼を受けるまでは、依頼主と冒険者との接触は禁止されていたな。


 ちなみに、依頼を正式に受けた後なら許可はされているのだが、それにしても依頼遂行上会う必要のない場合は、基本的に依頼主側から希望しない限り、冒険者は依頼主に会う事はできない。

 それどころか、依頼主が望めば名を明かす必要もないのだが、今回は逆に依頼者側から接触してきた形だ。


「これは失礼した。シルバーランクにあがってパーティーの活躍も私の耳にまで届いていたのでね。なかなか依頼を受けてくれる冒険者がいないので、つい、ね」


 オレを頼ってくれているのは素直に嬉しいし、まずは話だけでも聞いてみようか。

 それで危険であったり、あまりにも割に合わない依頼であれば断れば良い話だ。


「シリア、まずはその依頼がどんなものかだけで聞かせて貰おうかと思うんだけど、かまわないか?」


 オレが話だけでもと頼むと、ちょっと納得のいかない表情を浮かべながらも、依頼の内容を話してくれた。


「わかりました。まずはしっかりと依頼の内容を聞いて、三人でしっかり話し合ってから、どうするか決めて下さい」


「わかったわ。無茶な依頼なら私たちが反対するから大丈夫よ」


「は、はい。いつもは受ける依頼はフォーレストさんにお任せしていますが、今回は私もしっかり判断させて頂きます」


 フィアとロロアの二人も一緒に話を聞いて判断するということで、シリアも納得して話し始めた。


「まず、この依頼は国からの依頼となります。本当は衛兵の管轄の仕事なのですが……」


「うちとは別の隊が任務に失敗してね。本当は私の隊を出したい所なのだが、街の守りが薄くなるのは問題だって許可が下りなくて、こうして冒険者ギルドへの繋ぎだけしてるってわけさ」


 オックスさんは申し訳なさそうに苦笑いを浮かべ、シリアは少しむすっとした表情だ。

 冒険者ギルドとしては、衛兵が失敗した任務の尻拭いという形になる上に、冒険者を危険にさらすことになるかもしれないので、あまり積極的に斡旋したくないのだろう。


「オックスさんが悪いわけではないですけど、正直に申しまして、衛兵の一部隊が全滅するような場所に、冒険者を派遣させたくありません」


「ぜ、全滅!? 衛兵の一部隊が丸々全滅したのか!?」


 衛兵は街の中の治安を守る任務が主で、魔物との戦いだけなら冒険者の方が戦い慣れている者が多いかも知れないが、衛兵は日夜正式な剣術と戦術の訓練を受けており、集団戦では冒険者よりも格上のはずだ。


 その衛兵の一部隊が全滅するような状況とはいったい……。


「はい。だから絶対に無理だと思ったら受けないで下さい」


「わ、わかった」


 さすがに一部隊が全滅するような依頼は受けられる気がしない。


「この依頼は、とある場所に突然出現した新しいダンジョンの調査と、そこから現れた魔物の討伐依頼です。王都では無いですがある村から比較的近い場所に現れたので、王都からの応援とその村に派遣されている衛兵との合同で調査に向かったのですが、先ほども述べたようにダンジョンからある魔物が現れ、全滅という形で終わりました」


 合同ってことは、実際には一部隊+αって事じゃないか……。


「その中で唯一生き残ったのが案内人の者なのですが、ダンジョンから現れた魔物の正体は、亜竜の一種であるサラマンダーだそうです」


「サラマンダー!? さ、さすがにちょっと無理なんじゃないかしら……」


「そ、そうですね。またBランクの魔物……」


 炎を纏う巨大なトガゲの魔物。

 あらゆる物を燃やし尽くすと言われ、近づくだけで炎によるダメージを受けるBランクの魔物。


 それがサラマンダーだ。


「はい。シルバーランク以上の冒険者を含むパーティー向けの依頼なのですが、その中でもサラマンダーに対しての有効な攻撃方法を持つ者限定の依頼となっています」


 それはそうだろう。

 死を覚悟した、あのロックオーガも物理攻撃に凄まじい防御力を持っていたが、今回は近づいて攻撃することが難しい敵だ。


 その上、亜竜に分類されるだけあって、素の防御力も高いと来ている。

 かなり特殊な弓や投げ槍、強力な魔法でないと倒せないだろう。


 オレたちがもし勝てる可能性があるとしたら、ロックオーガの時と同じように、オレがバフで対処しないと難しい。


 つまりそれは、とてもリスクの高い戦いを強いられるという事だった。


「残念だが、ちょっとうちのパーティーには荷が……」


 荷が重い、そう続けようと思ったのだが、オックスさんがそこでまた話に入ってきた。


「場所も伝えて貰って構わないよ」


「……その、フォーレストさん、冷静に聞いてくださいね」


「え? は、はい?」


 なんだ? どういうことだ?


 はっ!? ま、まさか……。


「その村の名は……」


 その後、オレの故郷の村の名前を告げるシリアを、オレはただ呆然と見つめる事しか出来なかった。


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