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微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する  作者: こげ丸


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【第22話:仇】

「な、なに!? なんの咆哮!?」


 地の底から響いてくるような、恐ろしげな魔物の咆哮が響き渡った。


 しかも、かなり近い!?

 もしかすると、集落のすぐそばまで来ているのかもしれない。


「ちょ、ちょっとヤバそうな咆哮なんだけど!」


「落ち着けフィア。聞こえてきたのはオレたちが入ってきたのとは反対側だ。手におえる魔物かわからないし、急いで一旦距離を取ろう」


 幸いなことに、オレたちが集落に踏み込んだ門とは反対側から魔物の咆哮は聞こえてきた。

 何の魔物なのかは気になるが、このまま見つからないように撤退しよう。


「そ、そうね。ゴブリンを殺した奴かもしれないし、その方が良いわね」


 魔物の中には、大人数で挑むべき魔物や、並の冒険者じゃ全く歯が立たない強さを持つ魔物がいくらでもいる。

 斥候としての能力が高いものでもいれば、調査してから逃げるのも手だが、オレたちは三人ともそのような技術は持っていない。


 魔物の種類を確認するぐらいなら出来るかもしれないが、冒険者だからこそ、なんでも冒険していたら命がいくつあっても足りない。

 もし手に負えない魔物に見つかってしまった場合、そこに掛けるのは自分や仲間の命なのだから。


「あぁ。じゃぁ、すぐに移動しよう」


 粗末なあばら家が数軒建っているだけの小さな集落だ。

 集落に入って来られたら、すぐに見つかってしまう。

 フィアを先頭に、真ん中にロロアを挟む形ですぐに移動を開始した。


 だが、オレの前を歩くロロアの足が突然止まった。


「ん? ロロア? どうしたんだ?」


「ふぉ、フォーレストさん……あ、あれ……」


 ロロアが指さす方向に視線を向けた瞬間、凄まじい破壊音が響き渡った。


「な、なんだ!?」


 舞う砂塵の中に見えたのは、破壊された門と巨大な影。

 集落を囲む柵を上回るその巨躯は、オレの二倍近い。


 そして、砂塵がおさまったその場に見えたのは、ごつごつした岩のような表皮を持つ巨大な鬼だった。


「う、うそ……ろ、ロックオーガってBランクの……」


 フィアが呟き、皆が息を飲んだ。


 Bランク指定された魔物。

 冒険者にランク付けがあるように、魔物にもその脅威度によってランクが設けられている。


 Sランクは、ドラゴンのような伝説級の魔物で、国が総力をあげて対処するランク。

 Aランクも、プラチナの冒険者や騎士団が動き出すランクの魔物。


 そしてBランクは、冒険者が対応を求められる中で……一番強い魔物のランクだ。


「ロックオーガは不味い! 逃げるぞ!」


「わかったわ! ロロアも遅れないで!」


「う、うん!」


 ロックオーガが破壊したのは、オレたちが逃げているのとは反対側の門だ。

 今ならまだ気付かれる前に!


「範囲化! 全能力向上(フルブースト)1.5倍!」


 少しでもサポートになればと範囲バフを掛け、ロロアを守るように位置取りながら、後ろに続く。


 ちらりと振り返れば、ロックオーガは放置されていたゴブリンの亡骸の方へと向かっている。


「よし。このまま何とか……」


 そう呟いた時だった。

 凄まじい速度で大きな何かが飛来してくる事に気付いた。


「なんだ!? ちっ!?」


 咄嗟に掲げた盾で何とか防いだものの、その衝撃は凄まじく、気付けばオレは吹き飛ばされていた。


「フォーレストさん!?」


「フォーレスト!?」


 一瞬意識が遠のきそうになったものの、フィアとロロアの呼びかけで何とか踏みとどまった。


「ぐっ……だ、大丈夫だ!」


 まだ盾を持っていた手が痺れているが、大きな怪我などはしていない。

 自分の身体の状態を確認すると、オレはすぐに立ち上がって、飛来した何かに目を向けた。


「あの距離からゴブリンの死体を投げたのか……な、なんて力だ……」


 ここまでの距離を考えるととんでもない膂力だ。

 しかし、ここまで死体をぶん投げる力よりも、オレはもっと当たり前の、そしてもっとオレたちにとって脅威だろう事に気付いた。


「オーガ種って、嗅覚なども鋭いって聞いた事があるな……」


 一般的には人間よりも魔物の方が感覚が鋭い。

 上位の魔物ならば、さらにそれは顕著だ。


 都合よくオレたちが気付いて、ロックオーガが気付いていないなどいう考えが甘かった。


「完全に私たちを獲物として認識しているようね……」


「このまま闇雲に逃げるのは厳しいかもしれないな」


 速さを売りにしているような魔物では無いが、上位種だけあってそのスピードは侮れない。

 オレとフィアだけなら、もしかすると逃げ切れるかもしれないが、ロロアでは恐らく無理だろう。


 それに臭いを追ってこられると、森の外まで引っ張っていってしまう危険性があり、そうなると一般人に被害が及ぶ可能性が出てくる。


 ここは……覚悟を決めるか。


「フィア、ロロア! ここはオレが足止めをし……」


「倒しましょ!」


「……え? な、何を言っているんだ!? 相手はロックオーガ、Bランクの魔物だぞ!」


 ロックオーガはその膂力も脅威だが、ロックオーガがBランクという高いランクにたらしめているのは、その防御力だ。


 オレが犠牲になってでも時間稼ぎを狙う方が、まだ可能性が高いはずだ。

 だから、反対しようと思ったのだが……。


「ロックオーガは……兄たちの仇でもあるの」


「え? フィアたちのお兄さんってバクスたちの罠にかかったんじゃ……」


「そう……その罠がロックオーガだったのよ!」


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