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微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する  作者: こげ丸


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【第16話:お肉】

 やっと終わった……。


 いったいフィアと何戦したのだろうか。

 後半はオレの方が先に体力が切れてしまい、ほとんど負けてしまった。


 最終的にはフィアの機嫌が直ったので、たぶん勝ち越したのだろうな……。


「うん! フォーレストはやっぱり只者じゃなかったわね!」


 オレもフィアも一戦ごとにロロアの回復魔法で回復して貰ったので怪我が無いのはわかるが、どうしてフィアはこんなに元気なんだ。本当に凄まじい体力だな……。


「お姉ちゃん……さっきのはやりすぎだよ?」


「え? で、でも……」


「今日のはどう考えてもフォーレストさんの勝ち」


「そ、そんなぁ!」


「お姉ちゃんいつも実戦に例えるよね? 今日の模擬戦を実戦でイメージしたらどうなる?」


「うぅ……そ、そうだね……私の、負けだね。うぅ……」


 姉妹だと、思ったよりロロアの方が強いんだな。

 それにしてもフィアは、模擬戦で負けるのがそこまで嫌なのか。

 もう涙目になっているじゃないか。


「ははは。フィアはロロアには弱いんだな。まぁ今日は引き分けって事でいいんじゃないか?」


「そ、そうね! うん。それでお互い納得しましょ!」


「しかし、この状況をどうしたものか……」


 周りを見回すと、遠巻きに凄い数の冒険者がこちらを見ていた。


「おいおい……なんだよ、あいつら……」


「凄まじい攻防だったぞ」


「だれだよ。補助魔法使いが弱いとか言ってたの」


「というか、相手だれ? 『断獄のフォーレスト』が強いのは噂通りだからわかるが、かなり良い勝負してたぞ? おまけにすげー美人だし!」


 模擬戦に必死で、ここまで野次馬が集まっているとは思っていなかった。


 こんな状況どうればいいかなんてわからないし、どうしようかと思っていると……。


「おい! お前ら、ずいぶん暇なようだな! ここにいるって事は訓練しに来たんだよなぁ!! それなら特別に俺が相手をしてやるから、そこに整列しろ!」


 現れたのはギルドマスターのドモンだった。


 せっかくギルドマスター直々の指導だから、みんな喜んで参加するのかと思ったのだが、蜘蛛の子を散らすようにみんな逃げていった。


「なぁ? ギルドマスターってどれぐらい強いんだ?」


 見た目から強そうだし、ギルドマスターが元凄腕の冒険者だというのは知っているが、具体的にどれぐらい凄い人なのかまでは知らなかったので、フィアに聞いてみた。


「えっ!? あんな有名人知らないの!?」


「う、うん。元凄腕の冒険者だとは聞いた事はあるけど?」


「フォーレストさん、この王都のギルドマスターは、この国唯一の現役の(・・・)プラチナランク冒険者ですよ」


「え? ドモンさんって、プラチナランクなのか!?」


 しかも、元じゃなく現役だと!?


 シルバーランク以上は一流と呼ばれる冒険者だが、ゴールドランクの冒険者は人外の強さだと聞く。

 そして、そのゴールドランクの冒険者が束になってかかってもかなわないと言われているのがプラチナランクの冒険者だと聞いた事がある。


 どこまで本当なのかはわからないが、とにかくとんでもない強さなのは間違いないだろう。


「サグウェイで活動していた私たちでも知っているのに、フォーレストって本当にここで半年も冒険者してたの?」


「ぅ……雑用に追われてほとんど休みもないような生活していたから、この訓練場に来るのも今日でまだ二回目なんだよ」


 パーティーとしての休みの日はあったのだが、オレは依頼の下調べや準備をする必要があったので、実質休みと呼べるような日がほとんどなかったんだよな。


 その辺りを軽く話すと、えらく同情されてしまった……。


「本当によくそんな待遇で続けられたわね。でも、安心しなさい! これからはあなただけにそんな無茶なんかさせないから!」


「わ、私も、その、フォーレストさん一人に負担がかからないように、一生懸命頑張りますから!」


 でも、なんだかこういうのって本当の仲間っぽいよな。


「二人ともありがとうな」


 この時オレは、ずっと憧れていた冒険者にようやくなれた気がした。


 ◆


 模擬戦を終えたオレたちは、訓練場で下手に注目を浴びてしまったため、併設の酒場ではなく、二人のお薦めだと言う食事処に来ていた。


「へへへ~♪ ここのご飯すっごく美味しいのよ♪」


「フォーレストさんも、きっと気に入ってくれると思いますよ♪」


 フィアはご飯大好きって感じでイメージ通りだが、ロロアもかなり嬉しそうだな。


「ん? ちょっと~、なんか失礼な事考えてないでしょうね?」


「い、いや。何も失礼な事なんて考えてないぞ? それより、模擬戦しまくったから、オレもお腹がペコペコだ。早く注文しようぜ」


 女の勘だろうか。

 フィアは何か感覚とか鋭そうだから気を付けよう……。


「そうね! 私もお腹ぺこぺこだし注文しましょ!」


「えっと、どれにしようかな? ここはがっつりと……」


 何かボリュームのある肉料理をと思って悩んでいたのだが……。


「お薦めはヘルシー蒸し鶏と野菜スープのセットよ!!」


「フォーレストさんも食べてみて! あっさりした味付けなのに、すっごく味に深みがあって美味しいの!」


「スープの方も野菜がほんのり甘くてすっごく美味しいのよ!!」


「ここの野菜、凄く新鮮なんですよ!」


「フォーレストも絶対これにすべきよ!!」


 身を乗り出す勢いでオススメされては、断るのもちょっと気が引けるな……。

 初めて一緒にする食事だし、お肉……諦めるか。


「お、おう? そ、そうか。それなら、それを頼もうかな……」


 完全にお肉をがっつり食べる口になっていたのだが、オレは心の中で泣きつつ、ヘルシーな料理を一緒に注文したのだった。


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