log-218 隠居に憧れる気持ち
―――突如として生じた、モンスターの大群による襲撃事件。
各国で引き起こされ、多くのモンスターたちが暴れつくしたが、ある時を境にして纏っていた靄が失われ、彼らの理性は取り戻された。
襲撃があっという間に波が引くように収まり、元凶が討伐されたのは間違いないということになった。
国々が襲われる非常事態を収めたのであれば、その功績は英雄としてたたえることもできただろう。
だがしかし、どういうわけか表立ってその功績を名乗り出る者はおらず…中には偽物が出てきたりもしたが、たちどころに滅されたりしてすぐに誰も出てこなくなり、結局あのモンスターたちの襲撃してきた騒動は、一時的な災害として処理されることになった。
いや、違う。誰がどう収めたのかと言うのは、わかっているもの。
【まぁ、余計な火種が追加で投入されるのを避けるために、上の方で工作しておくのはわかるか】
【ギルドの方でも、既に行き届いていますからネ。爆薬に喜んで着火しに向かう人が出ないようにしているようなものでス】
【嬉々として、向かう奴がいたらそれはそれで怖いぞ】
剣の手入れをしながらつぶやいたルミの言葉に、答えるファイ、想像してツッコミを入れるルトライト。
のんびりとした穏やかな時間が流れつつも、状況としてはだいぶ変わってきた。
…激戦…と言うよりも、一方的な蹂躙で終わったような化け物討伐。
それから数週間の時間が流れ、あちこちで起きたモンスター襲撃による騒乱もだいぶ収まり、一過性の災害のようなものだった感覚で、徐々に普段の生活に戻りつつあるだろう。
だがしかし、それでも戻り切らないものもある、
【ミーたち全員、魔王種へ一気にパワーアップ…ふぅ、サイズが変わって衣服を新調しないといけないのが、大変で困るのなの♪】
【ふみゅ、困っているの?喜んでいるような…】
【それに、私たちだけではなくジャック自身も人の身をやめてますからね。】
鼻歌を歌いながら喜ぶカトレアの様子にレイがツッコミを入れ、続けて出たハクロの言葉に、何とも言えなくなるジャック。
全員魔王へレベルアップどころか、その主もまた魔王種へ…人間の身でありながら、魔王を束ねる大魔王として見られる羽目になったのである。
そんな劇物、放置できるだろうか。
何も感じずに放置できるものがいたら、むしろ豪傑なものだと言って良い。
「一応、何もしないままと言うわけにもいかないようで…各国の協議で、国々の合間に領地を…一代限りの、男爵位が与えられることがこっそり決定したらしいな】
【一代…まぁ、普通の人間の寿命であれば、それだけでも十分なものだが】
【魔王の身となった今は、どれほどでしょうかね?】
何も地位がないよりも、与えておいて場所が分かるようにしたほうが良い。
かと言って高すぎるくらいを急に与えれば反発も買うだろうし、何もしなければそれはそれで他の国々が付け入りそうだし、下手をすれば魔王の力で何もかもぶっ飛ばされる可能性があるなど、ジャックたちの扱いは非常に難しいものになっていた。
まぁ、もともと厄災種だったハクロやルトライトの扱いもあって、そこまで実は変わっていない危険物扱いな物だったりするが…今更それがもっと数が増えても、どうとでもなれと言うように、毎日薬屋が繁盛する原因にもなっているらしい。
【おかげで、しばらくの間は薬草を作って売ると儲かるのなの】
「薬剤師とか、過労で倒れないよね…?】
元凶が何を言うのか、そのツッコミは誰もできない。
苦労人は日々増加していくもので、密かにどこかの悪魔が物凄く同情し、薬売りとして裏で動いているのもまた言うまでもない…
「ところで、あの歩くトラウマエルフさんは?」
【先ほど、ブービートラップにかかったようで、お目付け役の人へ返却しましたよ。アレでもモンスターに関する学問の中でトップの人なので、魔王の力とかに関してどういうものなのかお話を聞いたりはできますが…】
【人間が魔王になれたり、死後にアンデッドになったりする事例があるのならば、エルフもなって犯しないと思って、危ない実験をやらかしそうなのが怖いのなの】
【いや、流石にそこまで常識はずれなことをしでかすことは…倫理観も、多分、そこはまぁ並のものが…あるのか?】
…フォローが何もできない相手って、いるものなんだな。
一息ついての、のんびりとした時間
変なものが少々うろつくが、まぁ許容範囲内
生活が脅かされなければ、安全な物ならば…
次回に続く…最終回へ
…ようやく、終わりが見えたか




