第95話 英雄ドラフト
礼拝堂の壁沿いに『英雄候補』NPC達が整列していく。
まだ全員が揃ったわけではないらしく、次から次へと人は入ってくる。
ギルドの数だけでも50は下らないらしいから、その分候補の数もいるってことだ。
俺はとりあえず、端の方から候補者達を見定めて行く。
ノーマルな人間もいれば、エルフもいるし、獣人やリザードマンもいる。
結構バラエティに富んでるなー。ミシュリアって多民族な国なのか。
浮遊都市ティルーナは人間メインだけどな。
「わ~よりどりみどりだね~!」
「ふーむ……レベルも種族もまちまちだなー」
現レベルが1とか3とか低い者もいれば、30~40くらいある者もいる。
「やっぱ初期レベルが高い方が有利だよね?」
「そりゃそうだろうな。育成期間は決まってるからな」
「あとはステータスの成長率と、所持スキルに、種族毎の特性と――」
「あと何だかんだ言っても、見た目も大事だよねー」
「ははっ。まあそれも重要ですね」
「蓮くんはやっぱり女の子キャラがいいのかな? どんな子が好みかなー? わたしがあの中に入ってたら、選んでくれるー?」
「え? えーと……たらればの話はしませーん!」
「あ、ずるーい誤魔化したぁ」
にこにこしつつ、ほっぺたをつんつんされた。
「やめい……! ほら、真面目に選ぶぞ」
「はいはーい」
と話してる俺達を雪乃先輩とほむら先輩が見ていた。
雪乃先輩は微笑ましそうに。ほむら先輩はちょっと冷めた感じで。
「ははは。蓮とあきらは本当に仲がいいなあ」
「目の毒よねー……あー。あたしも彼氏欲しい」
「お前には無理だ、諦めろ。その性格ではな」
「はぁ!? あんたに言われたくないわよ! あんたも年齢イコール彼氏なしじゃん!」
「私は別に欲しくはないからな。一向に構わんぞ」
とまあ言い合っているのを横目に目ぼしい候補をピックアップ。
英雄候補のNPC達は、レベルや名前の他にステータスアップ率のグラフや、所持スキルのリストも閲覧できるようになっていた。ジョブの概念は無いっぽい。
初期レベルの高い者、ステータスアップ率の高い者、所持スキルの豊富な者――
見た目はまあ、特に拘らずだ。別に男でもいいっちゃいい。
ウチのギルドは男俺だけだし、ちょっと肩身狭いからなー。
うーむやはり初期レベルが高いとステータスアップ率は控えめな傾向かな。
レベルが低くても、ステータスアップ率の高い方にロマンを感じるのが一般的だろう。
で、レベルもステータスアップ率も高い上に良スキル持ちのキャラがたまにいる。
いわゆる優遇キャラですね。
特に目ぼしいのは――
セルフィ・ミューズ
レベル62 エルフ
【プロフィール】
ミシュリア国に住むエルフ族長の娘。
強大な魔法の才能を持つが、争いを好まない穏やかな性格。
【成長率(筋/耐/器/敏/知/精/魅)】
2/3/4/4/8/7/5
※習得魔法多数。攻防共に所持。
魔法能力アップ系のスキルも完備。
初期レベル◎ 成長率〇 初期技能◎ って感じだな。
育成なしでも俺達より強いんですがこの人。即戦力だな。
しかも金髪美少女エルフちゃんと来た。
ドラフト一位指名が集中するだろうなー。
それから――
ミコット・コープル
レベル58 獣人
【プロフィール】
ミシュリア辺境の獣人の里に住む女戦士。
年若く里の外に出たことは殆ど無い。
が、既にその実力は里で一、二を争うという天才児
【成長率(筋/耐/器/敏/知/精/魅)】
6/6/7/7/2/2/6
※戦闘系所持スキル多数。ヘイト獲得系のスキルも完備。
また、レベルアップに必要な経験値量を引き下げる『天賦の才』も持つ。
こちらも初期レベル◎ 成長率〇 初期技能◎ かな。
前衛系の優遇キャラだろうなー。レベルも普通より上がりやすいみたいだし。
この二人が二強かな? どっちも美少女キャラだし人気出そうだ。
男キャラにも頑張って欲しいが――
あ、こういうキャラもいるな。
アルフレッド・ブリーズ
レベル1 人間
【プロフィール】
ミシュリアの地方貴族の息子。
だが戦乱で領地は他国に奪われており、貴族と言うのも名ばかりになっている。
家の再興を目指し、英雄候補を目指した。
【成長率(筋/耐/器/敏/知/精/魅)】
7/7/7/7/7/7/7
※『大器晩成』を所持。
レベルアップに必要な経験値量が増える代わりに成長率にボーナスを得る効果。
初期レベル× 成長率◎ 初期技能〇 かな。
レベルが追い付けば、最強候補だろうな。
見た目はお姉さんに好かれそうな可愛い美少年だ。
「セルフィちゃんミコットちゃんが強そうだね。アルフレッドくんも育ったら最強かも」
「ああ、だよなー」
まあ、常識的に考えるとそうだろう。
誰が見ても大体そういう結論になる。
俺達は優先指名権があるから、この中から誰か選べば問題ないだろう。
でも――でもなあ……
いつも思うんだ。優遇された条件で優遇された結果を残して何が楽しいのかと。
「んー……他には――?」
俺は新しく入って来たNPCのステータスを見る。
クジャータ・ジェット
レベル55 鳥人種(クジャ族)
【プロフィール】
ミシュリアに住む鳥人種の中でも名の知れた魔法戦士。
勇猛かつ冷静で経験豊富。
クジャ族は空を飛ぶ事が出来る。
【成長率(筋/耐/器/敏/知/精/魅)】
5/4/6/5/4/4/5
※戦闘系スキルと攻撃魔法系のスキルを複数保持。
おお、こちらも結構……ってか見覚えあるな!?
さっきココールと一緒にいた鳥人種だ。
ってことは――?
「あっ! ココールくんも!」
さっき会ったニワトリの鳥人種のココールもいた!
なるほど、あいつもこれの候補だったんだな――!




