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第92話 嬉しくない報酬と、喜ばれないお礼の品

 パンパカパーン。パパパパパーン。


 俺達の歩くレッドカーペットの左右に並んだ音楽隊が、ラッパを吹き鳴らす。

 何ていうかこう、帰還した勇者を祝う会みたいな感じだ!


「おおおおお……何かすげーなー」

「き、緊張するわね……」

「ちょっと居心地悪いですし――」


 俺達一般人には、こういう格式ばったセレモニーはちょっと慣れないな。


「大丈夫だよ。あんまりキョロキョロしないで、前だけ見てればいいから」

「あと、姿勢はしゃんとすること――ですわ」


 セレブの家のお嬢様達は落ち着いたもんだ。


「その通りです……! さすが希美様」


 こいつも平常運転だなー。


 そんなこんなで、俺達は玉座の間の扉をくぐりその中に入った。

 玉座には、王冠を被ったダンディーな感じのオジサマが座っている。

 その傍らには、俺達が助けたリエルリィズ姫も。

 部屋の両脇に居並ぶ武官文官の中には、姫の護衛のアニタさんの姿も見えた。

 今回お姫様を無事助け出した俺達は、浮遊都市ティルーナの王宮にお呼ばれしたのだ。

 ここは普段なら入る事もできないエリアだ。なかなかレアな体験である。


「おお――よく来てくれた、勇敢な子らよ!」


 王様が満面の笑みを浮かべる。案外人懐っこそうな感じだった。

 俺達は深く一礼するとその場に跪く。

 あきらと赤羽さんの見様見真似なんだけどな。


「この度は我が娘を助け出して頂き、誠に大儀であった。この通り礼を言わせてくれ」


 深々と頭を下げる。

 王様にそうされるとちょっと恐縮だな。


「しかし、流石は我が国の最高学府レイグラント魔法学園の学生達だ。私としても鼻が高いよ。卒業した暁には、世界とこのティルーナのために働いてくれることを願う」


 俺達は皆、はいと頷く。


「では、リエルリィズより君達に渡したいものがあるそうだ。受け取ってくれたまえ」


 お!? ご褒美タイムかこれ!

 クエスト報酬ってやつですね。何貰えるのか、ワクワクするぞ!


「この度は私の我儘のせいで大変な事になってしまいましたが――皆様のおかげで私もここに戻れましたし、アニタも罰せられずに済みました。本当にありがとうございます」


 皆の代表という事で、ギルドマスターの俺が答える。


「いいえ。目の前で人が浚われてほっとけませんでしたし――だけど、何でカラナートの奴等が姫様を……?」

「それは――あれ(・・)を止めようとしたのかも……」

あれ(・・)?」

「姫様……!」


 アニタさんが姫を窘めた。


「あ、うふふふ……それは、私にもわけわかめなのです――という事にしておいて下さいな? いずれ分かりますから」

「はあ……」


 わけわかめ――?

 まあいいんだが、わけわからんって事でいいのかな。


「それはさておき、これは私からの感謝の気持ちです。どうぞお受け取り下さいな」


 笑顔で差し出されたモノを俺は受け取って――


「ありがとうございます。ありがたく頂きます」


 お礼を言って跪いて――

 で、こっそり布で隠されている中身を確認。


 プリンセススカルリング(O)

 種類:アクセサリ 装備可能レベル:1

 特殊性能:取得経験値3倍。

      ただしレベルアップ時のステータスアップ量が1/3になる。


 ぐはああああああぁ!?

 い、いらねー! ちょっと嫌な予感してたけどやっぱこれかよ!

 あ、あのクエストの報酬がこれなのはちょっとガッカリだな……!

 まあ途中経過で『ラッシングリング』ゲットできたのは収穫だが――


「私、一生懸命真心こめて作りましたから! 大切にしてくださいね!」


 キラキラ輝く笑顔は可愛いんだけどなぁ――

 そんなこんなでセレモニーを終えた俺達はギルドハウスに戻った。


 そして、俺達は俺達でささやかなセレモニーを。

 まあお菓子とか軽食とかジュースとかのアイテムを持ってきての打ち上げだ。

 パンケーキとかクッキーはあきらお手製である。

 あきらはあきらで、料理スキルはちょこちょこ上げ続けている。

 そのうちギルドショップでも出せるといいな。


「あの――希美さん?」


 赤羽さんと片岡も交えた打ち上げの中で、あきらが改まって赤羽さんに言った。


「あら、何ですの?」

「今回は手伝って下さってありがとうございます。おかげでクリアできました」

「べべべ、別にあなたの為ではありませんわ……! こちらのお店はわたくしもお兄様も気に入っていますし、開いていないと困りますもの……」


 おーツンデレツンデレ。

 ぷいと顔を逸らしているが、鼻の頭がぴくぴくして嬉しそうだな。


「ふふっ。それで、わたしからお礼をと思いまして……受け取って貰えますか?」

「ま、まあ……あなたがどうしてもと仰るならば――」

「じゃあ、手を出して貰えますか?」

「ええ」


 ぽん、とあきらが笑顔で赤羽さんの手にアイテムを渡す。

 それは――『レイブラの魔筆』でピンクに塗装されたフルフェイスの鉄仮面だった!


「どうですか!? お兄さんとお揃いですよ?」


 べし!

 赤羽さんがピンクの鉄仮面をはたき落とした!


「こ、こんなものわたくしは被りません! わたくしに喧嘩を売っているんですの!?」

「ほ、ほら……! やっぱだめだったし……! そりゃ怒るってこんなの――」

「わ、私も止めたからね――」

「……何をやってんだよ」


 女の子へのプレゼントは女の子が選ぶのがいいとか言うから任せたのに――

 まあある意味赤羽さんはまともなんだって分かって良かったけど。


「ほらよ片岡。お礼の品だ」

「? おおぅありがとう! 大事にするぜ!」


 それは『いぢめないでシールド』系統のノリで作った『使えない従者ねシールド』だ。

 イラスト化した赤羽さんが冷たい目で見てくれる、ドMなあなたにオススメの一品だ。

 まあ片岡は喜ぶだろうと思って、矢野さんにイラストをお願いしてみました。

 喜んだようで何より。


「ええぇぇぇぇ~喜んでもらえると思ったのにぃぃ……」


 一方怒られてしまったあきらは、落ちた鉄仮面を抱えて涙目になっていた。

 いやそのセンスはおかしいぞ。マイベストフレンドよ。

 ……一応フォローしておくか。


「赤羽さん、一応言っとくけどあきらに悪気はねーんだ多分……センスがちょっとズレてるだけでさ……ほら、半泣きだし――」

「う……うう――? し、仕方ありませんわね……!」


 赤羽さんはあきらの手からピンクの鉄仮面をひったくった。


「い、一応貰っておいて差し上げますわ……!」

「の、希美さん……! じゃあ被ってもらえますか!?」

「えぇ!? そ、それは――」

「そ、そうですか……」


 しゅんとするあきら。

 それを見てまたやり辛そうな赤羽さん。

 赤羽さんはあきらと仲良くなりたいし、しゅんとされたくないんだよなー。


「わ、分かりました! 分かりましたからそんな顔はなさらないで! ほら!」


 とうとう雰囲気的に装着させられた! 可哀そうに……!


「あはははははっ! すごーい! 怪しいいぃぃぃーーっ!」


 こらこら指さして笑って差し上げるな! 恥ずかしいの我慢してくれたのに!


「あ、あなたはああぁぁぁっ! ならあなたもお被りなさいっ!」


 流石に怒った赤羽さんがあきらに鉄仮面をかぶせた。

 うん怪しい――


「いやああああぁっ! 優奈ちゃんパス!」

「あたしもやだああああぁぁ! ことみー!」

「ちょっと止めて止めてええぇぇ――!」


 ……まあパーティグッズとしては場を盛り上げたかな――?


「きゅーきゅーきゅーきゅー!」


 最終的には、逆さにしてリューが中に入って、ごろごろ転がって遊んでいた。


「ま、まぁ……これなら無駄にはならねーか――」


 で、鉄仮面の中からこんな声が――


「ごろごろぉ……ごろごろぉ……! たのしゅるりいぃ……!」


 !? い、今リューが……!


「「「「「「喋ったあああぁぁぁぁぁっ!?」」」」」」


 うん――守護竜って言葉覚えるらしいですよ?

以上で第二部完となります。お疲れさまでした!

キリのいい所で、ここまでの評価などしていただけるとありがたいです。


第二部を振り返ると、僕的には全然予定通り行ってねええええ! って感じです。

本当ならギルド対抗ミッションをやるはずだったんですが。。

そんなわけでそれは第三部以降で――という事になります。


その続きですが、これから第二部分で頂いたコメントについての修正検討や

書籍版二巻向けの作業等(書籍版二巻は書下ろしも入る予定です)に入りますので、

暫くお待ち頂ければと思います。


また再開しましたらよろしくお願いします!

それではまた!

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[気になる点] >「この度は我が娘を助け出して頂き、誠に大儀であった。この通り礼を言わせてくれ」 基本上位者として喋ってんのに「助け出して頂き」っておかしくね? 「我が娘の救出」とかの方が合ってるん…
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