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第88話 ボス戦開始

 さて放課後――

 俺達悪魔の仕業(デモンズ・クラフト)は、赤羽さん&片岡と合流。

 六人PTを編成し、さらわれたお姫様の捜索を再開した。

 昨日開通しておいたので、転送ルームからのワープでカラナート教主国へ。

 首都である聖都ミルヤムから郊外に出て北に向かい、山を一つ越え――

 そこにある、花が群生し天然の花園と化している高台が昨日の最終ポイント。

 地名は、ナユタの花園だそうな。今日はここがスタートポイントである。

 風が吹くと花びらが舞って、非常に美しい光景である。

 これは絶景ポイントと言っていいだろう。


「ここ綺麗だよねー! 今度ゆっくりピクニックでもしに来たいな~」


 と絶景マニアのあきらがスクショを取り終わるのを待ち、捜索続行。

 『天馬の目』にアニタさんから借りた『プリンセススカルリング』を読み込ませる。

 当たり前だが『天馬の目』と言っても、何も本当に天馬すなわちペガサスから目玉をくり抜いてきた系のグロい代物ではない。

 目のような意匠の紋章が中心に封じられた宝玉であり、探したい者の情報を読み込ませると俺達の頭上に浮き、捜索対象の方向に向け、細い光を指し示してくれるのだ。


「北東だな――よし行こうぜ!」


 全員レンタルの騎竜に乗っているので、敵は襲って来ず移動速度も速い。

 光の指し示す方向に向かい『天馬の目』を五個消費。

 そこで――


「ここだな――この中に光が続いてる!」


 それは、もう長い事使われていなさそうな古い砦だった。

 石壁のあちこちが崩れ、合間から雑草が顔を覗かせている。

 見た感じ完全な廃墟で人がいそうには見えないが『天馬の目』がここを指している。


「よし。ここで騎竜降りて、中を探索するか」


 誰も異議なし。俺達は徒歩に切り替え、廃砦の中に足を踏み入れた。


 グルウウゥゥゥゥッ!

 ウオオォォォォ……!


 中にいた、狼系の獣やスケルトン系が反応し、こちらへ向かってくる!

 だがレベルはどれも40前後――この程度の通常モブなら、大した脅威ではない。


「わーい無双だ無双だ~! 今のうちにAP(アーツポイント)溜めとこ!」

「よっしゃあっきーに続きますし!」

「ふん。まあ準備運動程度にはなりますわね」

「希美様ー! 背中を守らせて下さーい!」


 俺と前田さんを除く面々が、敵を殲滅にかかる。

 こういう強過ぎず弱過ぎずな敵との連続戦闘が、俺は一番苦手だった。

 『デッドエンド』撃つほどの敵じゃないし、後ろから見ているしかない。

 そうなるとまあサークル魔法で支援するわけだが、弱体のみな上にデフォルトではサークルは移動できない。イマイチ役に立てないのだ。


「こういう場合はちょっと暇よね」


 と、俺と同じ後衛組の前田さんが言う。

 こういう場合の前田さんは、好きなように攻撃魔法を撃つのが大体のパターンだ。

 回復にしたって、前線に二枚もソードダンサーがいるのだから、する必要がない。


「ふっ……それは昨日までの俺の事! 今日の俺は違うぜ!」


 と言うわけで俺も前線に出て、適当に通常のショルダーチャージで攻撃参加!

 通常攻撃がちゃんと敵に当たる喜び!

 AP(アーツポイント)が増える喜び!


「おおおおおー! 蓮くんが通常攻撃当ててる……!」

「フハハハハ! 見たかこの異次元の進化!」


 と、目の前に出て攻撃してきた狼系の敵の攻撃をガードし、直後体当たりで反撃。

 相手がダメージを受けながらちょっとよろめく。

 体当たり後、杖を振り下ろす殴打に繋ぐが、これは回避(スウェイ)で当たらない。

 その後再びショルダーチャージ、これは当たる。

 モーション的にショルダーチャージ⇒ショルダーチャージより、間に杖の殴りを挟んだ方が早く二発目のショルダーチャージに繋がるから、スカっても挟む方がよさげ。

 何にしても、ルートなど一つしかない、ワンパターンの通常だがないよりはいいわな。

 これで『爆炎タックル』用のAP(アーツポイント)を溜めるんだ!


「よし、あっちだ――!」


 向かってくる敵をあらかた倒し終えた俺達は、『天馬の目』の導きに従い、廃砦の中央にある大き目の建屋に足を踏み入れる。

 途中何回か効果は切れて、もうこれで『天馬の目』は六個目だ。

 そろそろ姫様が見つかって欲しいものだが――


 ギギギイィ――


 錆びつき気味の扉を押して屋内へ。

 天井も崩れて、陽の光が直接差し込んでいた。

 奥に扉が見え、『天馬の目』の光はそこを指している。

 広いホールの中央に向けて進む。

 すると――


 バァン! と、奥の扉が勢いよく開く。

 奥から何人も、カラナートの紋章入り武器を持つ黒づくめ達が飛び出してきた。

 それだけでなく、ホールの物陰のあちこちや、俺達が入ってきた扉からも――

 その数は、実に30人近いだろうか。ちなみに全員レベル50の王冠付きだ。


「!? おいおいすごい数だな……! 熱烈歓迎されてるぞ俺達!」

「待ち伏せされてたのかな……!? これやばいね――」

「や、やばくないこれ……? さすがに数が多すぎると思うんですけどぉ!」

「ど、どうするの……?」

「まずいですわね――」

「やっぱ難易度高いなこのクエスト……! 後でちゃんとギルドに報告しなきゃな」


 囲まれ、身構える俺達の前に更にもう一人――見慣れない男が現れた。

 黒いローブは他の奴等と似ているが、フードは被っておらず顔が見えている。

 淡い水色の髪をしており、やや険があるが整った顔立ちの青年キャラだ


 フロイ・ヤシン レベル75 王冠アイコン(レアモンスター)


 きっとこいつ、ボスだな――!


「ケッ。てめえらかよ、お姫様を追って来てるってやつらは。いやどーでもいいな、どっちにしろここまで来た奴はブッ殺す……!」


 フロイがにやりと、凶暴そうな笑みを浮かべた。

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