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第83話 プリンセスの手作りアクセ

 ――で、王城に向かってアニタさんに面会。

 ダメと言われるかと思ったが、案外サラッと面会させてもらえた。

 俺達のゲーム内での立場は、このティルーナにあるレイグラント魔法学園の学生なのだが、この立場がある種結構な特権階級と言うか、社会的な信用が高いっぽいのだ。

 浮遊都市ティルーナの未来を担う超エリート。世界に誇れる人材。みたいな感じで。


「そうか――君達が私に代わって捜索してくれるのだな。ありがたい――ではこれを持って行ってくれ。姫様が自らお造りなされたものだ」


 そう言って、アニタさんは俺にシルバーのリングを手渡してきた。


「……いいセンスしてますねー」


 材質は高そうなシルバーなんだが、トップが思いっきりドクロなんだなーこれが。

 どっかのロックバンドのセンスだわ。

 変わってそうだったしなーあのお姫様。


 プリンセススカルリング(O)

 種類:アクセサリ 装備可能レベル:1

 特殊性能:取得経験値3倍。

      ただしレベルアップ時のステータスアップ量が1/3になる。


 取得経験値3倍! は凄そうだなオイ!

 しかしステータスアップ量が1/3ってことは――

 レベルアップ時のステータスアップが3だとしたら、1しか上がらんって事か?

 じゃあ2の時どうなるの? 1未満はもしかして0なのか?

 つまり3倍速く3倍弱いキャラが出来上がる――と?

 なんだそりゃ! 使えんぞこれ! 微妙だ! 呪われてんのか!

 何か抜け道がないか検証してみたくはあるが……

 取得経験値3倍だけはすさまじい効果だから残念感がハンパないぜ。


「姫様をお守りする騎士として、これを装備するわけにはいかぬが……」

「まあ――結果的に弱くなりますもんね」

「だが、そのお心はありがたく頂戴し、肌身離さず持ってはいたのだ。これならば『天馬の目』での捜索に使えるはずだ。まあ装備してくれても構わんが」

「いや……いいです。とにかく借りて行きますね。ありがとうございます!」


 アニタさんからアイテムを受け取った俺達は『天馬の目』を仕入れてから、ミシュール大陸の国カラナート教主国へと向かった。

 仕入れた『天馬の目』は10個で、合計50万ミラでーす。

 俺の合成スキルがもっとあれば自作できて、もっと安く手に入るんだが、仕方ない。

 カラナートへの移動は飛空艇になる。

 俺達は港に向かい、定期船に乗る事にした。

 行ったことがないから、一発目は飛空艇で行かなければならない。


「うわぁぁーーい! やっぱ飛空艇は気持ちいいなーっ♪」


 やはり絶景マニアにはこの光景はたまらないらしい。

 澄み切った空、眼下に広がる海、全てが鮮やかなブルー。

 浮遊都市とその周囲の人工浮島(ラグーン)が俺達を見送っているようだ。


「ふふっ……あなたはいつもそれですわね――落ち着きのない」


 赤羽さん、表情は笑っているので、別に悪気はないのだろう。

 しかし――


「えええぇぇっ!? わたし一緒に飛空艇とか乗るの初めてですけど……!」

「――!」


 赤羽さんがしまったという表情になる。

 うん油断してたよな。赤羽さんはEFエターナルファンタジーで密かに一緒だったから、あきらの絶景マニアぶりとかも知ってるわけだが――

 あきらの方は、その事を知らない。


「……わたしの事、監視させたりしてたんですか?」


 あきらがジト目で赤羽さんを見る。

 ああ、そういう方向に考えが行くわけな。


「い、いいえ、その……」


 YOUもう言っちゃいなよ。

 しかし突っ込まれると弱い赤羽さんは、若干あたふたしながら――


「う、うちの従者が勝手に……!」


 あ、秘書が勝手に~的なノリで逃げた! 悪徳政治家かよ……!

 笑えねー! 家が政治家もやってんのに……!


「すまん青柳さん! この通り! 良かれと思って……!」


 片岡が、がばっとあきらに頭を下げた。

 どこまで把握してんだか知らないが、なんという瞬発力。

 こいつさすがプロの従者だなー。


「まあまあ、あきら。あいつも謝ってる事だし――」


 一応、フォローを入れておこう。


「とにかく、そういうストーキング的な事は今後やめて下さいっ!」

「分かりましたわ……そうでしょう片岡君?」

「はい希美様っ!」

「まーまー、というわけで水に流して記念撮影でもしとくか?」

「……そうだね! じゃあリューくんまたお願いできる?」


 あきらが笑顔になり『魔導式映写機』をリューに手渡す。


「きゅきゅー♪」


 と言うわけで、六人で記念撮影っと。


「なんかお前らと飛空艇乗ると『スカイフォール』の事思い出しちまうなー」


 と、片岡がつぶやいた。


「あーそんな事もあったなあ。まあお前らの尊い犠牲によってゲットできた件については感謝している」

「ああ、一人のHimechanがそれで幸せになったんだから無駄じゃなかったぜ」

「いやHimechanじゃねえって。お前と一緒にするなよな」


 しかし、片岡はまるっきりスルーした。


「それに、新人戦では決勝まで残るくらい活躍してくれてるしな」

「……そういやお前あきらの『エンジェルチャーム』装備のスクショ撮ったか?」

「ああ、当たり前だろ?」

「……後でZIPでくれ」

「いいだろう」

「いやあああああ~! やめてよ~! アレはホントに恥ずかしいんだから……!」


 あきらが真っ赤になっていた。


「確かにあれは、衝撃だったですし……」

「ええ。そうね――絶対真似できないわ」


 矢野さんも前田さんも思い出すと自分も恥ずかしいのか、ちょっと口籠っていた。


「そうですの? 必要とあらば使えばよろしいのではなくて?」


 しかし赤羽さんは平気そうだった。


「えええっ!? あれが平気なの――?」

「やっぱほらことみー……家系ですし、兄貴があれっしょ?」

「ああ、そういえばそうよね――」

「そ、そうではありません……! 好き好んでそうするわけではありませんが、必要ならば仕方がないという事ですっ! わたくしは、見られて恥ずかしいようなものは持っておりませんもの」


 スタイルに自信あるから見られても平気って事か。


「さすが希美様! 今度取って来るんで着て下さい!」

「ええ、よろしくてよ」


 やっぱ羞恥心の薄さは血筋なんじゃ……?

 早く話題を変えたいのか、あきらが違う話をはじめた。


「そういや蓮くん、この航路にも襲撃イベントってあるのかなあ?」

「んー……分からねえな。どうなんだ片岡?」

「ん? あるぜー。つってもこっちも発生自体低確率だけど……」


 しかし――


「な、なんだあんたら……!? うわっ、何をするっ!?」

「うわああああああーーーーッ!」


 NPCの船員さん達が、にわかに悲鳴を上げた。

 声の方向に振り向くと、そこには傷ついて倒れた船員さん達と、この間の人さらいによく似たシルエットの敵が……!

 手にした武器にも、例のカラナート教主国の紋章が入っている。


 これは噂をすれば影って奴か……!?

 本来の襲撃イベントとは、違う襲撃イベントだろうけどな……!

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