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第80話 人さらいはメ〇ルスライムの味

 俺はすぐ側に浮いているリューに指示を出す。


「リュー! 矢野さんに抱っこしてもらえ!」

「きゅっ!」


 リューが矢野さんの所に飛んで行く。

 俺は指示を飛ばすと即『ディアジルサークル』の詠唱に移る。


「『ディアジルサークル』!」


 『ターゲットマーカー』効果により、リューがサークルの光を纏った。

 そのまま矢野さんの元に到達。


「矢野さん走ってゴー!」

「りょーかい!」


 矢野さんが敵に背を向け走り出す。

 胸に抱いたリュー中心に広がる『ディアジルサークル』には鈍足効果がある。

 走る矢野さんに、人さらいは追い付けない。

 これで矢野さんは無傷でいられる――!


「あきらも矢野さんに並走してくれ!」

「分かった! 『ホークストライク』っ!」


 高く飛び上がって距離を稼ぎ、一気に矢野さんに並ぶ位置に着地。

 矢野さんに並んで走ると、二人ともサークルの範囲内に身を置く事になる。

 これで二人とも無傷で維持できる……!


 そしてあきらにはタレント『闘神の息吹』がある。

 放っておけばAP(アーツポイント)が自動回復だ。

 俺と矢野さんのスキルの再使用時間(リキャスト)も進む。

 つまり、状況の好転が見込める。


「よし二人ともマラソンだ! 頑張れー!」


 あきらと矢野さんが、周囲をぐるぐると回り出す。

 それを追いかける人さらい二体と、四人で追いかけっこだ。

 そうしながらも、あきらは距離は開くと時折足を止める。

 即座に振り向くと『スカイフォール』を一閃、衝撃波を放つ。

 それが敵に与えるダメージは決して大きくは無い。

 が、攻撃を当てることによってAP(アーツポイント)が稼げる。

 これはAP(アーツポイント)目的の行動なのだ。


「蓮くん! AP(アーツポイント)200超えたよ! 『剣の舞い』行ける!」

「おう! じゃあこっちに!」

「うん『剣の舞い』!」


 くるくるとスピンしながら沈み込み、ばっと立ち上がり剣を掲げるキメポーズ。

 優雅でキレの鋭い剣舞の動きだが、あきらがやると可愛さが先行するな。

 俺の体が、キラッキラのメルヘンな輝きに包まれる。

 これで俺のスキルが再使用可能に。

 奥義もう一発行けますよ! 早速『仕込杖』を合成して装備しておく。


「矢野さんの『ギルティスティール』の再使用時間(リキャスト)待ってもう一発行く!」


 俺の方に『剣の舞い』を貰ったのは俺の『ターンオーバー』『ファイナルストライク』

再使用時間(リキャスト)五分なのに対し『ギルティスティール』は三分で、俺の方が長いためだ。

 『ギルティスティール』の再使用時間(リキャスト)は後一分半程のはず。

 俺達は暫くマラソンを続け――


「よし来たっ! ぶっぱしていいですし!」

「こっちももう一回『剣の舞い』いける!」

「オーケイ! では遠慮なく!」


 『デッドエンド』二発目!


 スバアアアァァァッ!


「『ギルティスティール』!」

「『剣の舞い』!」

「『仕込杖』合成!」


 いやこれは口に出さなくてもいいんだけど、気分的な流れで。


「からの――!」


 と、あきらが合いの手を入れてくれる。

 まあ、この流れはもはや俺達のパーティでは共通理解ですな。


「とどめの『デッドエーーンド』っっっ!」


 スバシャアアアアアァァァッ!


 蓮のデッドエンドが発動。人さらいに2622のダメージ!

 蓮は人さらいを倒した。


「よし……! 行けるっ!」


 やっぱ移動する『ディアジルサークル』によるマラソン戦術はつえーな!

 リューがいないとできない戦術だが、おかげで格上の敵でも捌けるのだ。

 さすが守護竜さんは仕事ができるぜ!


「もう一体もこれで行くぞ――!」


 の前に――突然ファンファーレが鳴り響く。

 レベルアップ音だ!

 ああそうか、通常の雑魚モンスターはどれだけレベル差があろうが、一体あたりの経験値上限が決まっている。これがレベル差から判定される通常経験値。

 が、レア系モンスターは個体ごとに設定された固定のボーナス経験値も持っており、倒せばそれが人数割りで支給される。

 名前はしょぼいが、レベル的にかなり格上のレア系だ。

 全員、二回ずつファンファーレを鳴らす結果になった。

 これでレベルが俺32あきら32前田さん33矢野さん35になった。


「け、経験値がうまいですし……!」

「うん! ウマーだね! もうメ〇ルスライム的な何かにしか見えないね!」

「この敵はあんなに可愛くはないけど……」

「とにかくやっちまうぞ!」

「「「おー!」」」


 と言うわけで、同じシーケンスでもう一体撃破!

 レベルが俺34あきら34前田さん35矢野さん36まで上昇!


「よし倒した――!」

「ぐへへへへ。もっと……! もっと欲しいですしぃぃっ!」

「あ、ちょっと優奈ちゃんが壊れ気味だ」

「レベル上げ、好きだものね……」

「も、もう一体いたよね、ね! アニタちゃんがやっちゃう前に倒しに行くべし!」

「あ、ああ……どのみち追わなきゃだしな!」


 俺達はアニタさんを追いかけ路地を進んだ。

 やがて半分崩れかけたような廃倉庫に辿り着き――そこにアニタさんがいた。

 最後の人さらいは既に撃破されたのか、その場にいない。矢野さん残念。


「アニタさん! お姫様は……?」


 アニタさんは、ローブ姿の人影を抱きかかえて立ち尽くしていた。


「ああ……これを見てくれ!」


 放り投げる。姫様に対して凄いことするなと一瞬驚いたが、すぐに理由が分かった。

 それはピクリとも動かない――人形だったのだ。


「やられた……! こちらは陽動だったようだ――!」


 何てこった! これこの先どうなるんだよ……?

 その後――王様に報告しなければと、アニタさんは城に帰っていった。

 俺達はギルドハウスに戻り、もう一度お姫様を探してみたが成果は無く……


 しかしクエストリストを見るに、クエストが失敗で終了した表示はない。

 だからまだ、事態は続行中なのだ。

 この日はタイムアップを迎えたが、また明日探してみよう。

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