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第78話 ナウでヤングなギルドショップ限定クエスト

「ただいまー」


 俺達三人はギルドショップ奥の工房に戻った。

 赤羽さんと片岡はもう帰ったのか姿はない。

 店番のあきらに聞いてみる。


「赤羽さんと片岡は?」

「もう帰ったよー」


 そうか。アレについてどう思ってるのか聞きたかったんだがなー。

 まあまたの機会に、か。どうせまたあきらに会いに来るだろう、あの子は。


「なあ……あきらってさ、あのお兄様ともリアルであった事あるのか?」

「……えっと――まあ何回かは。でも聞かないほうがいいと思う……」


 あきらの表情はちょっと蒼ざめている。

 まあ、これ以上聞かないほうがいいか。


「それにしても――いろんな人がいるのね。この学園は……」

「だねぇ。こないだのデュエル大会で見た双子の先輩も対人厨とアイテム厨でしょ? 上級生はキャラが濃いですし」

「三年にもなると自分のプレイスタイルも固まって、それぞれ突き詰めてるんだろうな」

「にしたって、雪乃さんほむらさんと竜太郎さんを同列にしたら可哀そうだよ」

「竜太郎さん?」

「フルフェイス裸族さんの名前」

「ああ、下の名前まで覚えてなかったわ。気にしてる暇がなかったと言うか……」

「まあ、アレ見てると高代が可愛く思えますし……」

「衝撃だったわね――」

「マッチョは好きだけど、さすがにああいうのはスクショに残したくないよねえ……」


 みんな呆気に取られ過ぎて、嵐が去った後のように気が抜けていた。

 そんな中、再びショップの入り口の扉が開いた。

 お。お客さんだな。さて気を取り直して商売商売!


「「「「いらっしゃいませー!」」」」


 四人の大きな声がハモった。みんな悪い夢を早く忘れたかったのだ。


「まあ、活気のあるお店ね」


 やって来たのはプレイヤーではなく、NPCのお客さんだった。

 二人連れで、一人は目深にフードを被った少女。

 背格好から年齢は15、6歳くらいの設定かな。

 フードの端からこぼれる長い髪は、輝くように美しい銀髪だった。

 キャラの名前は――リリィちゃんね。

 もう一人は旅の戦士風の背の高い女性キャラ。背中に槍を背負っている。

 こちらはフードなどは被っておらず、少し癖のある茶色の髪の美人だった。

 キャラ名はアニタさんだって。仲田先生と同じくらいの年齢な感じだな。


「どうぞご自由に見て回ってくださいね」


 と、あきらが声をかけると、リリィちゃんの方がにこやかに返してくる。


「はーい。どうもありがとう♪」

「ひ――いえお嬢様、あまり人前で声をお出しにならないように……!」

「いいではありませんか。ナウでヤングな話題のお店を直接訪れるなんて――こんな機会は久しぶりなのですよ……!」

「ああああおやめ下さい、喋らないで下さい……!」


 なんてボソボソと言い合っている。

 何だろ。身分の高い人のお忍びって感じか……?

 でも『ナウでヤングな』って……なんという言語センス。

 聞こえた俺達は、思わず顔を見合していた。いつの言語だよ、って。

 わざわざこんな癖がついているあたり、結構重要なNPCと見たぞ。

 キャラが作りこまれてる感! きっと死語使いの美少女なんだな!


 で、そのリリィちゃんは鼻歌交じりに店内を見て回り――

 ある商品に興味を持ったようで、それを手に取ってこちらを向いた。


「これは、何のためのものなのですか?」


 彼女が持っているのは、俺が企画した『いぢめないでシールド』だった!

 密かに『マッチョアーマー』シリーズと売り上げを競っているあきらが、不満そうに舌打ちしていた。

 俺は喜び勇んで彼女に説明する。


「お目が高い! それはですねー。涙目の美少女を前面に押し出すことによって、見た相手が攻撃をし辛くなる効果があるんです!」

「まあ、つまり精神攻撃用途ですね! 相手のメンタルをチョベリバに陥れるとはなんて恐ろしい……!」


 チョベリバ……?

 あきらを見たら首を振られた。矢野さんも。知らないらしい。


「超ベリーバッドを省略したのよ」


 おお前田さんが知ってた。


「よく知ってるなあ……」

「これはむしろ雑学の範囲ね。クイズのゲームとかでたまに見るわ」


 ああなるほど――さすが俺達の学力王。


「面白い用途の装備ですね。アニタ、これがあればあなたのお仕事も助かるかしら?」

「か、勘弁してください……! 恥ずかしさで逆にこちらの気が滅入ってしまいます」

「まあ、このデザインは可愛いと思いますけど……?」

「いえそういう問題ではなく……」

「まあ、こちらも面白そうね! これはどういう効果なのですか?」


 あ、今度は『マッチョアーマー』に興味を示した!

 あきらが嬉しそうに解説する。


「バッキバキの筋肉を誇示することで、弱い相手は見ただけで戦意喪失する効果です!」


 ホントかよ嘘くせーな! 単なる趣味で描いただけだろ。

 俺の『いぢめないでシールド』に説明を被せてきやがった。ずるい!

 俺のにはホントに効果あると思うが、こっちにはないだろ。


「まあ。ではこちらも精神攻撃用途――! では両方を一度に装備したら、光と闇が両方備わり最強に見えるのでは?」

「「見えますね!」」


 俺とあきらの答えがかぶった。だって売れて欲しいし!


「そうですよね! ではアニタ、いつも頑張ってくれるあなたにこちらをプレゼントしようかと思います。ちょっとつけて見て下さい」

「ええ!? 私がですか……?」

「はい。そちらに試着室がありますよ? 店員さん、ちょっと使わせてくださいね」

「「どうぞどうぞ!」」

「うううう……」


 肩を落としながら、試着室に入っていくアニタさん。

 なかなか苦労してそうだなーこの人。


「は、初めて売れるかも……! 『マッチョアーマー』が……!」


 あきらが興奮で目をキラキラさせていた。

 『いぢめないでシールド』は既にほむら先輩とか何人か買ってくれたからなー。

 営業成績では、今のところ俺のほうが上回っているのだ。

 で、可哀そうなアニタさんが着替え終わるのを待っていると――


 ――バタン!


 勢い良く店のドアが開いた!

 何だそんな焦って駆け込んで来なくても……

 入って来たのは三人の男。こちらもNPC。皆黒づくめで、顔も隠していた。


「いらっしゃ――」


 言い終える前に男の中の一人が、床に何かを投げた!


 バァン!


 破裂音。するとモクモクと、すごい勢いで煙が立ち上った。


「! な、なんだよ……!?」

「ええええっ!? いきなり何!?」

「何も見えないわ……!」

「ひょっとして、ドロボーですし!?」


 一瞬にして店の中は煙で一杯になり、視界が塞がれて見えなくなる。


「何事だ!?」


 アニタさんが試着室から飛び出してくる気配。


「窓開けよう窓!」


 俺は窓に近寄ろうとする。

 そんな中、リリィちゃんの声がした。


「きゃあああああっ!? お、お先にドロンしますうううぅぅっ!」


 バタン! と再びドアが開く音。


「お嬢様っ!? お嬢様ーーーっ!?」


 煙幕が少しだけ薄まり、店内が見えるようになる。

 しかしそこに、リリィちゃんの姿はなかった。

 おいおいおい、人さらいかよ……!? 一体何事だ!?


「た、大変なことになった……おじょ――いや、姫様が……!」


 姫様だと!?


 ピロリローン ピロリローン


 急にシステム通知音が! そしてメッセージも表示された。


 限定クエスト『お忍び王女様誘拐事件』が発生しました!


 【クエスト概要】

  ナウでヤングな話題のショップに、ティルーナ王家のリエルリィズ姫がやって来た!

  だが、姫は謎の集団に連れ去られてしまう。姫を無事取り戻さないと――!

  下手をすればギルドショップの評判にも関わってしまう……!


 【発生条件】

  クエスト発生判定時に、ギルドショップを最も繁盛させていること


「「「「限定クエスト!?」」」」


 俺達は一斉に声を上げていた。

 『レイブラの魔筆』パワーでギルドショップを流行らせたのがトリガーになったのか。

 俺達がやってなかったら、別のギルドでクエスト発生してたんだなこれ。

 これは急展開だ! 全くの想定外な事が起きたな!


「と、とにかく追わねば――! 君達! 良かったら協力願えないか!?」

「了解です! 追いましょう!」


 俺達はアニタさんと共に、ショップを出て捜索を開始した。

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