第76話 赤羽さんちのお兄様
さて、ギルドショップ正式オープンから三日。
客足は好調。売り上げの方もいい感じだった。
やはり『レイブラの魔筆』によるラッピングアイテムは珍しいからな。
元々はまだまだ低レベルな俺の合成スキルでも作れるアイテムなのに、メッチャ売れてくれている。
これも一種の魔改造だよな。
誰も見向きもしないありふれたアイテムに、ちょっと手を加えりゃ売れるんですよ。
デザイナーの矢野さんのセンスもいいしな。
こういうのは、先に手を付けた奴が有利なのは間違いない。
『レイブラの魔筆』の供給が増えて出回るまでは、いい感じで稼げるだろう。
今のうちに稼げるだけ稼ぐぞ!
そして儲けをロマン砲に装填してぶっ放すんだ!
なんて有意義な金の使い方なのか!
「こんにちは。お邪魔しますわよ」
赤羽さんだ。片岡もくっついてきている。
もう三日間連続で店に来ている。赤羽さん頑張ってるな。
まだ笑顔で挨拶を交わすなんて友好的な雰囲気には遠いが――
「あ……いらっしゃいませ」
三日連続でさすがに慣れたか、あきらが「うげっ」って言わなくなった。
昨日まで言ってたけどな。
「ふっ……ようやく人に対する礼儀というものを、少しは身に着けたようですわね」
ちょっと嬉しそうだな赤羽さん。
「まあ、見慣れたといいますか……」
やはりちょっと、身構え気味のあきらである。
ここは少し、援護射撃でもしてみるかなーと思った。
「なあ、あきら」
「ん? なあに蓮くん」
「もうちょっといつも通りに愛想良くてもいいんじゃね? せっかく赤羽さんも、打ち解けようとして毎日来てくれてんだし」
サラッと言った俺の発言が、二人衝撃を与えた。
「ええええええぇぇっ!?」
「な、ななな……! 何をバカなことを仰られますの――!?」
なんかこう、ドーンと雷でも落ちたみたいな感じに。
「ちちちち違いますわよ、何を勘違いなさっているのかしら!? わたくしがそんな事するはずがないでしょう!?」
いや、あきらはまだしもなぜ赤羽さんまでそんなリアクションなのか。
顔を真っ赤にし、バタバタ手を振って否定するのだ。
そこまでせんでもいいのに……天邪鬼なんだなー。
「そう思いたければご自由に」とか言って受け流せばいいのに。
「おっと用事を思い出しましたわ、では失礼します! 行きますわよ片岡君!」
あ、逃げるつもりか……!
赤羽さん的には刺激が強すぎたのだろうか。
ちょい失敗か? 直球過ぎたか? あの子への援護射撃難しいな。
赤羽さんは立ち去ろうとショップの出口に向かうが――
ちょうど店の外側から扉が開かれる。そして一人のお客の姿が。
「たのもう」
「!?」
そいつは一言で表すと――変態だった。
フルフェイス型のツヤ光りする鉄仮面。その奥の表情は全くうかがえない。
クリムゾンレッドの小さなスカーフマフラー。
同じくクリムゾンレッドのブーメランパンツ。
――のみである。あとは裸だ。
ちなみに体つきは引き締まった見事なものである。
……こいつ、この間から俺の視界にちらちら入って来てた変態じゃねーか!
気のせいじゃなく、やっぱ実在したのか――!
ていうかこいつは何なんだ!?
いや普通のネトゲだと、見た目ちょっと変な装備を愛用しちゃう奴って確かにいる。
ファッションへの拘りの一種だよな。
けど自分イコールキャラなVRMMOでこんな奴が――!?
そしてその見た目も驚きだが、もっと驚くことが……
「お兄様!」
赤羽さんがそう声を上げたのだ。
「何いいいいいいいいぃぃぃぃっ!?」
「えええええええええええっ!?」
赤羽竜太郎(3-A)
レベル208 ソードダンサー ギルドマスター(真実の姿)
赤羽……!?
え、これまじで赤羽さんのご兄妹なのか!
そしてなぜにこんな変なのが雪乃先輩よりレベルが高い!?
ってか男のソードダンサーって初めて見るな!
「やあ妹よ。お前から聞いたペイントとやらを、早速試しに来たぞ」
「あら、そうでしたの。きっと気に入ると思いますわ」
「うむ……では君、早速頼めまいか」
「え? えーと……じゃあ奥にどうぞ! あきら店頼むな!」
あきらは余りにショックなのかフリーズしていたし、これを他のお客さんに見せるとドン引きされるだろうし――とりあえず奥に隔離だ!
で、奥の工房に通して椅子を用意するが――
やっぱりこれ、触れなきゃダメですかね?
まあ一応聞くか……
「あの――何なんですか、その恰好は?」
「うむ。実は――こう見えて私は露出狂でね」
「いや見たまんまじゃないっすか! ストレートすぎるでしょ! こう見えてもって、どう見えてる想定ですか!」
「ふっ……だが待って欲しい。何物にも流されず己のスタイルでゲームを楽しむというのが、ゲーマーとしては正しい態度なのではないかね? 私はそう思うのだが?」
「いくら何でも内容によるんじゃないっすかね……」
リアルなら捕まるよなー。これ。変態だし。
「だが待って欲しい。ならば私の事情を聞くがいい。こう見えて私は露出狂でね……」
「いや同じですって! ループしてます!」
ここまで私は露出狂でねとしか情報が入って来てない!
しかも二回も! 大事な事なので二回言いましたってか!?
いや見れば一発でわかるし!
「だが待って欲しい。リアルで露出すれば捕まるが、ゲームの中は治外法権だろう? であるがゆえに、私はここで思う存分本当の私を開放しているわけだ。このゲームのリアリティは、リアル露出に近い感覚を与えてくれるからな。このゲームは私のような者の業をも汲み取ってくれるのだ! 何と素晴らしい! ここはまさにユートピア!」
立ち上がってびしりと腕を組むポージング! キモッ!
おいおいこの人、完全なる確信犯の露出狂じゃねーか!
赤羽家ってこれで大丈夫なのか!? 政治家とかもやってるセレブの家柄なんだろ!?
あー早くVRMMO内の変態を取り締まる法律出来ねーかなー!
こいつは早く何とかした方がいいと思うんだが!




