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第73話 コスプレと変態

 それから二日後――授業開始前のギルドハウス一階ギルドショップ。

 店舗内には、様々な商品が陳列されていた。

 店の中央にはテーブルや椅子などの家具類を。

 壁の棚にはコップやお皿などの小物や雑貨類。

 通りに面したショーケースには防具を装備させたマネキンを。

 その近くには杖や剣などの武器類も並べてある。

 もちろんこれら全てがデフォルトのものではなく、矢野さんデザインの様々なペイントが施されたラッピングアイテムだ。

 全体的には明るい色遣いが多くて、女子受けしそうなものが多いかな。

 まあうちのデザイナーがギャルですし。

 とはいえ男としても気になるアイテムもある。

 涙目の美少女がプリントされた盾とかね。

 これで防御されると精神的にめっちゃ殴り辛いぞ!

 他にも美少女プリント系のアイテムは結構用意したぞ。

 痛車的なノリでな! こいうのもありだろ。


「うむ! 結構商品は揃ったなー!」


 店内を見て俺は頷いた。いい感じじゃないか。


「んだねー♪ こいつのおかげで作業が早い早い!」


 矢野さんが、すっかり手に馴染んだ『レイブラの魔筆』をくるくるさせながら言う。

 いやーよく頑張ってくれたな、本人も楽しそうで何よりだった。


「これだけ揃ったら、もうお店オープンできそうだねー」

「そうね。流行るといいわね」


 矢野さんのデザインも大分パターンが出来たし、店に並べる商品も揃いつつある。

 もうそろそろ、正式オープンも可能だ。

 そうなると、やるのは――


「ああ――じゃあ明日から正式オープンにしよう。今日は宣伝活動を行う! ショップに客を呼ぶためには宣伝がいるからな!」

「宣伝? どうするの蓮くん?」

「ま、ビラ配りだな。放課後やるから、みんなそのつもりでよろしく!」

「ええ、確かに必要よね。わかったわ」

「おけー。んじゃビラのデザインも『レイブラの魔筆』でやっちゃいますか」

「ああ頼む」


 てな感じで、後は放課後を待つばかりなわけだが――

 ただビラ配りしたんじゃインパクトが足りませんよね!

 ギルドマスターとして、打てる手は全部打っておくのだ!


 ――というわけで昼休み。俺は昼食を早めに終え、三年生の教室を訪ねていた。

 3-Aの、ほむら先輩のクラスだ。

 先輩は廊下に面した窓際の席だった。

 ぼーっ廊下の外を眺めている所に、俺は声をかけた。


「ほむら先輩! 例のブツ、受け取りに来ました!」

「ん? お、高代君。来たわね、はい用意しといたわよ」

「ありがとうございます!」

「だけどこれミュージアムの展示品でもあるから、用が済んだらすぐ返してよ? それから――」


 とほむら先輩の台詞を聞きつつ、俺の目は変なものを捕らえていた。

 教室の外を歩いて行く生徒達の姿は、まあ問題なくて、その中に――

 明らかに変なのがいるんですが?

 何が変かって、フルフェイスの鉄仮面に下裸のヤツを変と言わずになんと言う?


「……!」


 俺は見咎めてびっくりしてしまったが、ほむら先輩はノーリアクション。

 あれ、見えてないのかな?

 いやでも窓の外見てたよな先輩。


「これは貸しだからね。今度はあたし達のアイテム収集に付き合ってもらうから」

「あ、はい――」


 と、俺はもう一度さっきの姿を探したが、既に見えなくなっていた。

 んん? あれ? 見間違いか?

 なんか俺疲れてんのかな……? 変な幻が見えたか?


「じゃあ借りていきます! ありがとうございます!」


 まあ、いいや。気にしないでおこう。

 俺はほむら先輩に礼を言って、教室を後にした。


 そして放課後――俺達はギルドハウスに集まっていた。


「よしじゃあビラ配りに行くけどその前に――!」

「ん? 何かあるの?」

「衣装チェンジだ! 目立つ格好で行こう! ほむら先輩から借りて来たから!」


 最大の宣伝効果を得るには、安直だがやっぱこれだ!

 と、俺はほむら先輩から借りた衣装をアイテムボックスから取り出して見せた。

 『サキュバスドレス』『サキュバスローブ』『サキュバスハーネス』の三種類ね。

 それぞれエロい悪魔風な大胆な衣装のソードダンサー用、学者用、空賊用だ。

 コスプレ用途なので、装備的には強くないが。


「えー!? これにぃ!? そりゃまあ目立つだろうけど……」

「こ、こんなの恥ずかしくて着れない……!」


 あきらはジト目になり、前田さんは首を振ってイヤイヤする。

 矢野さんは慌てた様子で――


「あ、あたしはホラ、まだ用意したいデザインとかあるし、ギルドハウスに籠ってたいかなーなんて……それにお色気担当キャラじゃありませんしー」

「……許可」

「よっしゃ許されたし!」


 まあデザイナーを表に引っ張り出して宣伝活動させなくてもよかろう。

 まだ増やしたいデザインがあるってのを信じよう。


「じゃ、じゃあ私も――」

「ダメ! 二人は販売・宣伝担当だしギルドマスター的にはこれは義務だ……! まあ看板娘ってやつだからな」

「で、でも……!」

「大丈夫だって! 前田さんならきっと似合うから!」

「え……? そう? いやでも、やっぱり恥ずかしいわ、そんな服……!」

「ことみーことみー」

「なに優奈?」


 と、矢野さんが前田さんを引っ張って何やら耳打ちしていた。

 それを横目にあきらは『サキュバスドレス』を手に取っていた。


「……うーん。まあショップのためだもんねえ」

「お? あきらはやってくれるのか!」

「うんまあ、わたしは普段とそんなに変わらないし……恥ずかしいは恥ずかしいけど」

「……でもだんだん慣れてきたと?」

「まあこの間のアレに比べれば大したことないと言うか……」

「ああ『エンジェルチャーム』な。あれは大好評でしたね」

「あの後だとね、このくらいなら――って」

「さっすがあきらは頼りになるぜ!」

「もー。蓮くんのせいだからね! あーあ、わたし蓮くんにどんどん汚されていっちゃうよお……しくしく」

「人聞きの悪いことを……」

「事実だもーん。それじゃあまあ、着替えてビラ配り行こっか!」


 と、あきらは装備を『サキュバスドレス』にチェンジし、ニコッと笑う。

 うーんいつも白系だったのが黒くなりましたね。

 黒だと肌の白さがいつもより際立つ気がしますな。

 うーん。やはりなんという美少女。何着せても似合うなー。ため息が出るぜ。


「わ、わたしも……」

「お!? 前田さんもやってくれるんだな! ありがとう!」

「ええ……が、頑張るわ」


 で、前田さんもお着替えタイム。

 おおおー! あきら以上に肌が白いかも。

 スレンダーでキレイだなー。

 滅茶苦茶恥ずかしそうにしてるのが逆にちょっとほっこりしますな。


「おおー二人とも似合うぞ! これなら絶対目立つ!」


 よしじゃあこの二人の看板娘と共に、ビラ配り行ってみよー!

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