第72話 開店準備
というわけで春の新人戦の翌日の放課後――
俺達は早速『レイブラの魔筆』を使ったギルドショップ繁盛計画を打ち合わせていた。
「おー! いいねこれ! 色塗るのも楽だし!」
『レイブラの魔筆』を持つ矢野さんが嬉しそうにしている。
デザイン土台にと俺が作った『ウッドテーブル』に、矩形指定して花柄のデザインをペイントしていた。
四角だったり、円だったり、星形だったりと、図形の形も色々変える事が出来る。
色んな太さのラインを引くことも簡単だし、ライン自体をロードしたデザインにすることもできる。
あっという間にシンプルな『ウッドテーブル』が、様々な柄にペイントされて行く。
「うんうん。やっぱこいつだと、色塗るにしろ絵描くにしろ早いよな」
「んだねー。読み込んですぐペイントできちゃいますし」
「じゃあ大量生産もできそうだよね! デザインさえできちゃえば、わたし達でもペイントはできるし! 後は優奈ちゃんにデザインを作ってもらって登録すれば――」
「まーあたしがドンだけやれるのかは知らんけど、あっきーも高代も必死こいてゲットしてきたんだし、出来るだけ協力するべしってねー」
「じゃあ、後は土台になる商品がたくさんあれば、ショップに並べて売れるわね」
「ああ、それは俺の役割ですね!」
俺が作ったアイテムを、矢野さんのデザインでラッピングして売る!
これを『ラッピングアイテム』って銘打って売っていくのだ。
『仕込杖』の素材のインゴット系は尽きたが、テーブルとか椅子用の木材系の素材はまだちょっとある。
とりあえずこの辺を全投入して、ショップの商品にするか!
それから店前に置いとく立て看板とかも作らねーと。
「じゃあわたし達は――?」
「宣伝・店番・仕入れの手伝いって感じかな」
宣伝は重要だよ宣伝は。
店番もな。幸いあきらも前田さんも見た目は申し分ないので、看板娘にぴったりだ。
まあそこらのテコ入れには俺にアイデアがあるぜ。
「とりあえず暫く開店準備だな! 矢野さんはガンガンデザインを作って行ってくれよ。俺はベースのアイテムを用意するから」
「じゃあ琴美ちゃん、わたし達はアイテムの合成素材集めに行こっか! 蓮くんの手持ち素材ももう無くなって来てるしね」
「ええ。分かったわ」
「あ、インゴット系多めで頼むな。木材系はまだちょっとあるけど、金属の素材がもう全然なくてさ」
「おっけー!」
と、いうわけで俺達はそれぞれ行動を開始した。
あきらと前田さんは素材確保に出かけて行き、矢野さんは2階のリビングで『レイブラの魔筆』での様々なデザインパターンの作成に専念。
で、俺は一階の工房に籠り、アイテム作りに。
あきらにも言ったが、木材系はまだ手持ちが余ってるからなー。
まずはテーブル作るかな。
工房で合成することにより合成にさまざまなボーナスが付く。
まず合成スキルのレベルが底上げされるのに加え――
失敗のリスクを軽減する『指定素材セーブ』。
規定より少ない素材数で合成できる『素材知識』。
NPCを雇って代わりに合成をして貰える『職人雇用』。
等々だ。その他にもいろいろなものがある。
これらは、工房の設備により付く効果が違う。
いい設備にいい効果が付くのは当然だな。
学校の合成ルームでは『指定素材セーブ』だけはつけて貰えるが、まあ基本の基本って感じのサービスだ。
ちなみに合成には複数の技術系統があり、それぞれレベルがある。
俺は鍛冶、木工、錬金を主に上げている。
何でこの系統かと言うと、暗器の自作のためだ。
いずれは全合成あげて行きたいけどなー。
取り合えず鍛冶で金属系の武器防具、木工で杖や家具類を作成できるから、このあたりのラッピングアイテムを作っていこう。錬金は薬作ったり、素材の特殊加工が主だから、ラッピングアイテムには不向きかなー。
「よしまず『ウッドテーブル』!」
家具はラッピングアイテムにはいいよな!
別にバトルに使うものでもないし、性能が問題にならないから。
「『ウッドチェアー』!」
一人用のノーマルな木の椅子ね。
「『ウッドベンチ』!」
木のベンチな。
「『ウッドコップ』! 『ウッドディッシュ』!」
コップにお皿。雑貨系だな。
「『木のマネキン』!」
ショップの展示用としてね!
ショーケースがあるから、武器防具を装備させて飾ろう。
「『オークシールド』! 『オークスタッフ』!」
よしよし。
まあ武器防具に関しては展示品がそのまま売れるの期待じゃなく、武器防具持ち込みでそれにペイントするサービスのアピール目当てだ。
自分の愛用の武器に好みのペイントをしたいってニーズは絶対あるだろう。
「よっしゃー! いくつかデザイン出来たよーん。高代ちょっと試し塗りさせて~!」
と、矢野さんが二階から工房に降りて来た。
「お! けっこー色々出来てんねー」
「おう。そこらにあるの、どれでもやってくれよ!」
「んじゃこれ借りるよー」
と『ウッドディッシュ』を手に取り、『レイブラの魔筆』でさっと白一色に塗った。
その上で、くるくると先端を宙に回すとメニューが起動。
デザインデータを選択する画面が浮かび上がって来る。
そこから、いくつかのフルーツが描かれた画像を選択。
で、さっきの『ウッドディッシュ』に魔筆の先端を触れさせ、トントンとやる。
するとそこに、先程の画像がペーストされる。
白地にフルーツの絵がペイントされた『ウッドディッシュ』が出来上がり!
加工時間は一分もかかっていない。はえー!
「どうどう? けっこーいい感じ?」
「おぉー! いいんじゃね。雑貨屋とかで売ってそうな感じ!」
元々シンプルで何の飾りもない『ウッドディッシュ』が化けたな!
これは、いいんじゃないか! 売れると思う!
オープンが楽しみですな!




