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第6話 続・ステータス

「でもこのタレントのシステムって自由度高そうだし、スキルチェーンで奥義作成とかも面白そうだね、いろいろ試せそうだし。ねえ、これどうやって取ったの? わたしも奥義作りたい!」

「トリニスティ島の最初の街のクエで取れたな。まあ『野兎の肉』3000個集めなきゃダメだったけど」

「うわマゾい何それー! やだー!」

「素材集めがてらできたから、俺にとってはご褒美でしたが」


 アイランドバニーっていう、最弱レベルの敵から戦利品を集めるクエストだった。

 敵レベルが低すぎて、レベル4で経験値が入らなくなったのが逆に都合が良かった。

 低レベルを維持してあきらを待っていられたから。


「トリニスティ島の一層でひたすらウサギ狩りしつつ、そこらの岩場で鉱石採掘したり、森で木こりしたり、古墳で穴掘りしたりな。おかげで合成スキルは結構上がったし、うなるほど素材が貯まって貯まって――」

「わ、わたしのせいとはいえ……さすが蓮くんはルーチンワークに強いねぇ」

「ルーチンワークとローラー作戦は俺の得意技ですから」


 多分俺、工場とかのバイトに向いてる。やった事はないけれど。

 心を無にするのがコツなんだよ。

 そしたらいつの間にか素材の数とか、合成のレベルが上がってるから、積みあがる数字を見てニヤニヤできる。


「……わたしは別の方法でスキルチェーン取ろうっと。450MEP(メリットポイント)だっけ。うーんMEP(メリットポイント)貴重だし迷うなあ」

MEP(メリットポイント)はいくつあるんだ?」

「465だよー」

「! すっげ!? 五教科平均で93点とかじゃねーか!?」

「運だよ、運。問題が簡単だっただけかな」


 俺は五教科合計で241点なんだけどな……まあ今はいいか。


「俺のあとのタレントは『暗器使い』が初期タレントで、『ファイナルストライク』はMEP(メリットポイント)と交換して、『流れ作業』もクエで取ったな。こっちのクエは『ウッドテーブル』256個合成して納品だったから楽だった」

「256個合成が楽かどうかはグレーゾーンだと思うけどなあ、わたし」

「そういえば、あきらの初期タレントは何がついた?」


 キャラの初期設定をした時点で、一つだけタレントが貰える。

 何が貰えるかはランダムで、完全に運試しのくじ引き感覚だったりする。


「んー? 『闘神の息吹』だよ」

「ええええっ!? マジかよ!?」

「うん。へっへー、ラッキーだよね?」


 滅茶苦茶いいタレントだった。MEP(メリットポイント)なら1000とかするはずだ。

 効果はAP(アーツポイント)が時間経過で自動的に増えるというもの。

 敵を殴るかダメージを食うかしないと貰えないAP(アーツポイント)が勝手に増えるのは相当大きい。

 全てのアーツ使いにとって獲得推奨の良タレントだ。攻略本でも納得のA評価。

 特にAP(アーツポイント)を回復力に変換するソードダンサーには、AP(アーツポイント)はいくらあっても足りない。

 まさにうってつけ。ピンポイントにズバッと引いてくる。

 昔からあきらはとんでもなくヒキが強く、類稀な豪運の持ち主だったりする。

 一緒にアイテム取りしてても、まずあきらが先に出すしなー。


「あ、相変わらず運いいなー……俺なんて『暗器使い』なのに」


 安定のEランク評価なんだが。身も蓋もなく言えばゴミタレントだぞ。


 俺たちはとりあえず、俺のステータスの2ページ目を見ていく。


■PAGE2/3


【魔法一覧】

 ディバイトサークル(消費MP5~∞ 再使用時間 0/10秒)

 <効果> 侵入者のVIT(耐久)を25%引き下げる効果のある紋章陣を設置

      紋章術師専用


 ディアジルサークル(消費MP5~∞ 再使用時間 0/10秒)

 <効果> 侵入者のAGI(敏捷)を25%引き下げる効果のある紋章陣を設置

      紋章術師専用


【スキル一覧】

 ターンオーバー(再使用時間 0/300秒)

 <効果> 現HPとMPを入れ替える 紋章術師専用


 ファイナルストライクLV1(再使用時間 0/300秒)

 <効果> 次の一撃で武器が消滅するが大ダメージ


【アーツ一覧】

 チャージスペル(消費AP(アーツポイント) 100)

 <効果> 杖技 MPを最大値の20%回復する


 抜刀術(消費AP(アーツポイント) 0)

 <効果> 暗器技 不意を打つ強烈な抜き打ち 1回攻撃

      1戦闘に1回のみ発動可能 現HPが低いほどダメージ上昇

      防御力無視 スウェイ不可


 と、こうなっている。

 あきらが注目したのは『抜刀術』だった。


「『抜刀術』が暗器のアーツかな? 暗器ってクセが強くて扱い辛い上に入手ハードルが高く、しかも肝心の暗器技は一発芸仕様で実用性皆無って書かれてるけど……ホントにそうなんだ?」


 攻略本片手に質問が飛んでくる。


「だなー。基本暗器のアーツって、HP減ってないとよえーんだよ。HP満タンだと通常攻撃と変わらんし、一戦闘に一発のみだし。消費AP(アーツポイント)が0だからいつでも撃てるのだけはいいけど」


 暗器ってリアルには不意打ち用の隠し武器だ。

 一回正体見せたら隠す意味がないことのゲーム的再現で一戦闘に一発なんだろう。


「じゃあHPをぎりぎりまで減らして撃てばいい感じ?」

「結構いいダメージだけどな……けどHPを限界ギリギリまで減らすのってむずいぜ」

「まあそうだねえ。ガチな相手にそんな余裕かましてたら死んじゃうし。パーティ組んでるヒーラーの人にも余計な心配させるしね」

「そう。だから安全に使おうと思うと、ソロで舐めプできる雑魚敵相手にまったりHP削って貰ってゲージ赤くして、おもむろに『抜刀術』叩き込んでダメージ見て喜ぶ、っていうのがベストになるわな。まあアイランドバニー師匠には何回もお付き合い頂いたけど」

「あはは……やったんだ」

「しかも暗器系って全部OEX属性付いてるんだよな」

「OEX?」

「Oが同時に一つしか持てない、EXが他人に渡せない」

「……じゃあ自分で作るか拾うか?」

「そう。自分で合成必須」


 隠し武器だし人目に触れないように自分で仕込むっていうのをゲーム的に……以下略。

 とりあえず、頑張って作れるようにはした。

 暗器作成を目指して一層で素材集めをして、合成スキル上げもして。

 目標を定めてコツコツやるのは楽しいから、俺的には苦に感じなかった。


「うーん……」

「しかもデフォルトで暗器装備できるジョブはないんだよ。タレント枠は絶対一個消費するっていう。タレント枠って五枠だけだろ? その貴重な枠にこれ入れますかって話」

「うん、いらないね。貫禄のEランクだね」

「だよな。そこは俺も認める。流石にこれが初期タレントじゃなかったら、俺だって選んでねえよ」


 最終的に試しに取ってみる事はあったかもしれない。だけど絶対優先度は低かった。


「まあじゃ次、3ページ目な」


■PAGE3/3


【奥義一覧】


 デッドエンド(ターンオーバー⇒ファイナルストライク⇒抜刀術 発動可能)


 3ページ目は今のところ奥義だけしか表示するものがなく、短い。

 だがそれを見たあきらの表情が変わった。

 さすがにあきらにここまで見せれば、大体察しはつくだろう。


「んむむぅ!? あ! なるほど……こ、これはなんか怪しげな魔改造臭がプンプンするんですけど……」

「やあ、お客さんお目が高い!」

「ねえ、あとで試し打ちするのを見せて……」


 と、あきらが途中で何かに気が付いて俺の後方を指さした。


「あれ? ねえ蓮くん、向こうから黒い飛空艇が近づいてくるけど、あれ何?」

「え? んー見たことねーな」


 結構あっちこっちが痛んでいる感じがする。

 蜃気楼みたいにゆらゆらしてるようにも見える。

 何と言うか、不気味な感じ。それが急速にこっちに近づいてくる。

 俺達に続いて、船員さんNPCも接近する飛空艇に気が付いたようだ。


「ゆ、幽霊船……! 幽霊船だーっ! あの噂は本当だったんだ……!」


 幽霊船? そんなのあったのか。低確率で発生するレアイベントか?

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