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第66話 痛恨の大当たり

「これでどうかしらっ!?」


 赤羽さんがトンと地面を蹴る。

 ふわりと舞って、スケートのジャンプのようにくるりと回転。

 これは――ソードダンサーのダンスの一つだ。


「『バニッシュフリップ』!」


 声と同時に、赤羽さんの姿が掻き消えた。

 そう――これは姿を消す隠密行動用のダンスだ。

 主に視覚感知の敵モンスターに気付かれないように移動する時などに使う。

 だが対人戦ならば、姿を隠して攻撃出来る強力な選択肢にもなる。

 片岡の盗賊(ローグ)なんかも、似たような隠密行動用スキルを持っている。

 あちらは、姿を隠した状態からの不意打ち攻撃にダメージボーナスが乗ったりする。

 その分闇討ちに関しては盗賊(ローグ)が上回るのだが――

 ソードダンサーのこれだけでも十分脅威ではある。


「せええぇぇいっ!」

「っ!?」


 右後方から飛んできた斬撃が、俺にヒットした。

 『ハヤブサの極光石』効果の二撃目は防いだものの、一発目はまともに喰らった。

 更に攻撃が飛んでくる前に、俺は『ウィンドミル』でその場を離脱し距離を取る。


「っててて……! 貰っちまったか!」

「二撃目に反応しただけでも、大したものですわ。完全に見えない攻撃でしたのに」


 笑みを見せる赤羽さんの姿が、ゆっくりと現れた。

 姿を消した透明状態から何かしら攻撃を行えば、効果が切れるのだ。

 だが即座にぱっと現れるではなく、数秒置いてゆっくり現れるという感じになる。

 つまりその数秒間は、透明のままコンボに持って行ける。

 盗賊(ローグ)の透明化は切れる時は即出現なのだが――

 このあたり微妙に細かい性能差がつけられている。

 ダメージボーナス付きの単発でごっそり持って行く盗賊(ローグ)

 徐々に切れる透明化によって、コンボを叩き込みやすいソードダンサーって所か。

 ちなみに空賊は透明化は持っていない……何故だ。

 ――と、ウチの守護竜さんが仕事しているログが!


 リューは『樫の木の枝』を見つけた!

 蓮は『樫の木の枝』を手に入れた!


 うーん惜しい! 次だ! 次行ってみよう!


「『バニッシュフリップ』!」


 赤羽さんは再び姿を消す。

 『バニッシュフリップ』にはAP(アーツポイント)が必要だ。

 が、『闘神の息吹』持ちの彼女なら『バニッシュフリップ』で常に姿を消しながら攻めることも可能になって来る。

 そして特にこんな場所では、この攻撃は脅威が増す。

 こんなというのは、人が大勢いて、騒がしい場所だという事。

 ここが無音で静かな場所なら、足音で攻撃の方向が判断できないでもないんだが――


「……仕方ねえか!」


 余り解決にはなりそうにないが、今は時間を稼ぐ必要があった。

 俺は素早く『ディアジルサークル』を詠唱し展開する。

 範囲はそれほど大きくはない。俺自身の足元中心に配置した。


 そして、意識を周囲に集中する。出来るだけ耳を研ぎ澄ましてみる。

 サークルの中に赤羽さんが踏み込んだら、光が反応してシルエットが見える――

 ――とかであればいいですがね! 残念! そんなウマい話はない!


 展開された『ディアジルサークル』は緑色の光の円陣。

 そこから光が立ち上り、円柱状にフィールドが形成される。

 そしてその中にいると――外からの音は多少遮られる。

 これなら――!?

 もう俺は目も閉じて、音だけに全神経を集中した。


 タタッ。


 聞こえた! 左斜め前!

 俺は音から推測した攻撃の軌道に『狂信者の杖』の杖を構えた。

 直後、重い手応えが杖に伝わる。

 もう一発同じ軌道が来る! そのまま待機。またガードできた。

 次のモーションは下段からの斬り上げ!

 脳内再生される攻撃モーションにタイミングを合わせ、ガードしに行く!

 ガンガン! と二連打の衝撃、これもガードできたか。


「なっ……! 見もせずにガードを……!?」

「ようし――! ソードダンサーのモーションはさんざん見せて貰ってるからな!」


 方向と距離さえ分かれば、見なくても流れでガードできる!

 『バニッシュフリップ』から攻撃されるのも、あきらとの模擬戦で慣れてるしな!


「その程度でそんなことができるなんて、非常識ですわ!」

「知るかよ! 出来るものは仕方ねーだろ!」


 しかしこれが出来ても、根本的な解決にはならない。

 赤羽さんにサークルの効果切れを待たれたらそれまでだ。

 なのでサークルを維持するため、効果切れの前に再展開し上書きをする必要がある。

 しかしMPは有限。いつかは尽きる。

 それに通常攻撃はガードできるが、アーツではガード削りを受ける。

 なので結局のところ、待たれてしまえばそれまでにはなるが――

 だが引き延ばしの効果はある。今の俺には時間が必要だ。

 これでしばらく行くぞ!

 俺が目を開けると――


 リューは『隼のアイアンソード』を見つけた!

 蓮は『隼のアイアンソード』を手に入れた!


 ――はぁ!? なんかおかしなログが見えたんですが!?


「何いいいぃぃぃぃッ!? あいつなんてモノを……!」


 200万ミラ再びッ! すげーーーーーーーっ!

 これあれだろ! 奇跡的な低確率なやつだろ! スカイフォール的なさぁ!

 あきらみたいな豪運ちゃんと違い、アイテム運は並み以下の俺だ。

 これは年イチどころか、卒業までの間で最もツイてた瞬間かも知れない。

 すげーなこれはよし保存だ! ナイスですリューさん!

 さぁ次行け次!

 赤羽さんの攻撃を先程の要領で受け流しつつ、俺はウキウキして次を待った。

 が――!


「きゅっきゅー♪ きゅっきゅー♪」


 俺は見たのだ……闘場の天井近くの窓から満足そうにリューが入って来た。

 で、観客席の前田さん達の所に。

 で、抱っこされるとそのまますぴーっと寝始めた。

 うん寝た! 寝たね!?

 寝たらしばらく起きねえぞ、あいつは。数時間は。


「……おいマジかよ。これは……!?」


 他に『仕込杖』を作れるものは無し。

 リューさんは寝たから、数時間は『オート採集』してくれないだろう。

 さすがに数時間も試合を引き延ばすのは無理だ。途中でやられる。

 つまり勝とうと思えば――『隼のアイアンソード』使うしかねええええええ!


「『ブロンズソード』で済むのにまた200万ミラだと……!」


 年イチどころか一生に一度の幸運を、速攻でブン投げるのかよ俺!

 ぐぬぬぬぬぬぬ……! ちょっとしたケアレスミスがこんなことになるとは……!

 もったいねえええええぇぇぇぇ!

 俺のアホ俺のアホ俺のアホ俺のアホーーーっ!

 いつか自分の金で『デッドエンドV』撃ちたかったけどさ――今じゃないでしょ!?

 いやしかしもう勝つにはこれしかないこれしかないこれしかない……!


「うおおおおぉぉ! やああぁぁっっってやるぜえぇぇ!」


 俺は半泣きで、雄叫びを上げたのだった。

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