第63話 オート採集
『試合終了ーっ! この試合は青柳あきらさんの勝利でーす!』
仲田先生の実況が会場に響くと、野太い歓声が会場を包み込んだ。
「「「あきらちゃあああぉぉん!」」」
で、あきらは『魔導式映写機』によるスクショをバシバシ取られていた。
うーん人気だ! なにせ見た目が素晴らしいからな。
ソードダンサーの美少女とか、皆大歓喜だろう。
それでいて姫プレイでもなく普通にプレイヤースキルも高いとか、非の打ち所がない。
そりゃまあみんなのアイドルにもなるわな。
改めて思うが、何であんな子が俺のフレなんだろうなー。
柔道部が似合いそうな、ガチッとした感じのオタク男を想定してたはずなのに……
おかしな話だ。どんなルート選択でこんな奇跡のルートに入ったのか。
――さて、それはさておきあきらを出迎えに行くか!
「先生、じゃあ俺失礼します!」
「ほい、おつかれー。またよろしくねー」
俺は実況席を立った。
この試合は俺がプレイヤー解説をやっていたのだ。
結構キンチョーしたが割と楽しかったぞ!
で、先に控室に降りあきらを出迎える。
「お疲れ! ナイスナイス!」
「きゅーきゅーきゅきゅきゅー!」
俺に合わせてリューもパチパチやっていた。
「ふふふっ。ありがと蓮くん! リューくんもね」
「危なげなかったなー」
これで俺もあきらも準決勝まで残る事が出来た。
あと一つずつ勝てば、決勝で対決できるな!
「うん! 問題はあれかなー。この格好をあんなに大勢に見られると恥ずかしいって事くらいかな……」
「俺も楽しませていただきました! 皆を代表してお礼を言います! あざーす!」
俺が体をくの字に折り曲げて礼をする。
俺の真似をして、リューもぺこりとやっていた。可愛い。
「もー。はいはい、どういたしまして。でもいい加減見慣れて来ない?」
「いや? いいものは何回見てもいいものだからな」
「ふぅ~ん。まあ飽きられるよりいいけど……」
「赤羽さんなんか堂々としてるけど、あきらもそういう風にはいかないのな」
「そりゃそうだよお。わたしには羞恥心ってものがちゃんとありますから」
「聞き捨てなりませんわね。人を恥知らずみたいに言わないで下さるかしら?」
赤羽さんが聞こえる所にいたらしく、割って入って来た。
あーまたアレな感じになりそうだなー。
と思ったので、俺は強引に会話を別の方向にやってみる。
「あ! なああきら、そういやEFでさ、スカーレットがいるだろ?」
「? スカーレットくんがどうしたの?」
あきらは突然話題が飛んできょとんとしている。
で、俺は赤羽さんの様子にこっそり注目する。
口を挟む様子は無く、目の前で話題を出されて聞き入っている感じだ。
うん気になってる気になってる。
「雪乃先輩のスノウとはこの間遊んだけど、スカーレットはご無沙汰だろ? 近々一緒にスカーレットと遊ばねえかなと」
「うん! いいよー。じゃあ今日これが終わった後とかEFやっちゃう? スカーレットくんがいればだけど」
「おお。じゃあ俺後であいつにメッセ送っとくから」
「楽しみだな~。暫くぶりだもんねー、スカーレットくん。また絶景ツアーに連れてってあげなきゃ!」
と、絶景マニアのあきらが嬉しそうに語る。
で、それを目の当たりにしたスカーレットの中の人であるらしい赤羽さんは――
あ、なんかニヤニヤしてる。そっぽを向いて隠してるが、口元が嬉しそうなのだ。
あきらがスカーレットと遊ぶのを楽しみにしているのが、嬉しいらしい。
なるほどこれはやっぱり、本人だろうな。
と、俺の視線に気が付いたか、赤羽さんはフンと鼻を鳴らすとそのまま離れて行ってしまった。うーん何と言うか、ツンデレな感じだなあの子。
「あら? 行っちゃったね」
「全然関係ない話したから、なんか面倒になったんじゃね?」
「そうかなあ……まあいいや! 次蓮くんたちの試合だよね、頑張ってね!」
「おうよ絶対勝つぜ! の前にちゃんと装備とか見直しとかねえと……解説とかやっててヒマが無かったんだよ――っと更にその前に、ほらリューおやつ食べていいぞ」
と俺は、アイテムボックスからリンゴを取り出しリューに手渡す。
お腹が空いたらかわいそうだからな。
ではセッティングを――
「きゅーきゅー! きゅーきゅー! きゅきゅー!」
あ、リンゴを頬張ったリューの体が光り出した!
これはあれか……!
リューの成長段階が上がりました! 習得するスキルを選んでください
キターーーーー!
「おおおおおー! また来たね! これあれでしょ? 新スキル!」
「だな! ねんがんの新スキルを手に入れたぞ!」
「で、どんなのどんなの?」
「ああ、今出すわ」
リジェネレート(常時発動)
<効果> 守護竜の近くにいるプレイヤーのHPが
徐々に回復するようになります
マスター以外のPTメンバーにも有効です
回復量は1秒あたり5HPです
オート採集(常時発動)
<効果> 近くに素材の収集ポイントがある場合、
時々自動で素材を回収してきます(採集道具は不要)
マスターがログアウトしている間にも、素材を収集してきます
ベビーブレス(戦闘中)
<効果> 幼竜のブレスを吐き、マスターを援護します
ブレスの対象は、マスターのターゲットと同じです
本スキルによるヘイトは、マスターが引き受けます
「ほほぉう! 戦闘系スキル来たね!」
「ああ、残り二つは前から一緒か――なるほどな」
「……で、どうするの?」
「どうすると思う?」
「『ベビーブレス』があると、普通のPT戦とかでもちょっと固定火力が出来て助かるんじゃないかなあと思うもののここは『オート採集』かな? いずれは両方欲しいよね」
「だなー。ここは完全同意だわ。じゃあ『オート採集』で!」
『ターゲットマーカー』程の破壊力は無いだろうが『オート採集』も魅力的だ。
俺は『オート採集』を選択して決定。どんなもん拾ってきてくれるのかなー。
「きゅきゅ?」
リューがぴくん、と何かに反応する。
「ん?」
「きゅーきゅーきゅー!」
で、そのまま控室にある窓から外に出て行ってしまった!
ここは闘技場の地下ではあるが、元々闘技場は人工浮島に建っている。
ゆえに地下部分にも窓はある。
外には人工浮島の庭園や、真っ白な雲や青い空が見えた。
「おいどこ行くんだよリュー!」
「『オート採集』しに行ったのかな……?」
リューは窓の外に見えた庭園部分に降りて行き――
リューは『ヒールポーション』を見つけた!
蓮は『ヒールポーション』を手に入れた!
「おお! 『ヒールポーション』見つけてくれたっぽい!」
「へー! 早速能力発揮だねーリューくん!」
「きゅっきゅーきゅっきゅー♪」
得意げな顔をして戻って来るリューである。
ああこれいいなー。この常にガチャ引かせてもらえる感じ。
取って正解だろう。この先どんなもの引いてくれるかね。楽しみ楽しみ。




