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第59話 国民的人気スキル

 さぁて――雪乃先輩は魔剣士だ。

 攻撃役(アタッカー)で一番の優遇ジョブである。

 装備できる武器は短剣、片手剣、片手斧、片手棍などの片手武器全般。

 ステータス的にはSTR(筋力)は並み以上、DEX(器用)AGI(敏捷)はかなり高く、素早い上に攻撃力もある感じだ。

 更にいくらかの攻撃魔法も扱えるためINT(知性)も低くはない。

 ステータス的に見るとスピード型の魔法剣士って感じか。

 魔法剣士ってみんな好きだよな。

 だが、それだけでは人気NO1攻撃役(アタッカー)の座を決定づけるには弱い。

 何がいいのかと言うと――


「さあやろうか、蓮!」


 先輩は左右の手に一本ずつ、獲物である両刃の片手斧を構える。

 そう、左右に一本ずつ――だ。

 魔剣士最大の特徴はやはりこの『二刀流』である。

 そう――みんな大好き『二刀流』ですよ!

 やっぱりどんなゲームでも強いし、優遇の象徴と言うか、むしろ『二刀流』が存在してるゲームで、それが弱かったら文句が出るレベルだ。

 これはもはや国民的人気スキルと言っても過言ではない。

 誰もこれが弱いのは望んでないんだよ。まあカッコいいしな。

 だが――俺にとっては、どんなゲームでも立ちふさがる目の上のタンコブだ!

 許すまじ――! またもや俺の前に立ちふさがるか『二刀流』め! 負けんぞ!


「はい。ダメジョブマイスターとして『二刀流』には負けられないんで!」


 俺も『狂信者の杖』を構えて戦闘準備。


 ――で、魔剣士についての続きだが、まずレベル1から『二刀流』が使える。

 『二刀流』モーションは攻撃が素早く、手数が稼げるためAP(アーツポイント)の溜まりが良く、アーツを高回転で撃てる。

 また、攻撃のモーションパターンが一刀時より複雑で読みづらくなるため、特に対人戦ではその事が有利に運ぶ。

 常に相手に対し、左右のどちらが出てくるかという択を突きつける事が出来るのだ。

 装備できる武器種類も多く、モーションもそれにより変わって来る。

 『二刀流』自体は、他にも覚えるジョブがあるが、レベル1からは魔剣士だけだ。

 装備武器の種類も魔剣士が一番多い。


 そして、そこをスタートに魔剣士専用の『魔剣術』の存在がある。

 これはAP(アーツポイント)消費で様々な効果を引き出す専用アーツ群と言っていい。ソードダンサーのダンスみたいなものだ。

 これにより武器に魔法の力を付与して攻撃能力を引き上げる事が出来、まず火力が全攻撃役(アタッカー)の中でもトップを争うレベルだ。

 更に『魔剣術』の中には『シャドウスレイブ』なる補助技もあり、これが地味にこのジョブの性能を爆上げしている。


 単体攻撃に対し、発動率100%の分身回避技なのだ。

 AP(アーツポイント)消費技なので再使用時間(リキャスト)時間が短く、AP(アーツポイント)の続く限り分身が維持できてしまう。

 『二刀流』でAP(アーツポイント)の溜まりがいい魔剣士なので、常に分身を維持することは難しくない。

 そしてバトルでタゲを取ってしまっても、分身で回避してしまうため、範囲攻撃を連発する敵や、相当な格上相手の長期戦でもない限り盾役(タンク)にフォローしてもらわなくてもやられることがない。

 攻撃力と生存能力を兼備しているため、前衛を魔剣士で固めれば、盾役(タンク)すらいらないかも知れない。


 正直『シャドウスレイブ』を維持しながら『二刀流』でズバズバ殴っているだけですげー強いのだ。

 どうせ分身で回避するからタゲを取っても構わない。

 どうせ分身で回避するから余計なガードモーションなど考える必要もない。

 むしろその間攻撃に専念できるから、余計にダメージが伸びるのだ。

 うーん『シャドウスレイブ』やべえなー。

 みんなこいつが悪いよ、こいつが。


 そんな甘えに甘えた脳死プレイでもパフォーマンスを発揮するし、『二刀流』と装備武器の豊富さは多岐にわたるモーションパターンを提供してくれるので、雪乃先輩みたいな

対人厨のやり込みにも応えてくれるという、初心者にも玄人にも愛される人気ジョブだ。

 俺みたいに、ボンクラーズに拘ろうという思考は先輩にはないからな。

 いいレーサーがいいマシンを選ぶのは、ある意味当たり前だろう。


『それでは、二人とも準備はよろしいですね! デュエルスタート!』


 仲田先生の号令。カーンとゴングの音が響き渡る。

 わっと客席から歓声が上がる。


「行くぞ! 蓮!」

「うっす先輩!」


 さて今回の俺の作戦は――勿論決まっている。

 先・手・必・勝!

 魔剣士の雪乃先輩相手にAP(アーツポイント)を溜めさせてしまうと『シャドウスレイブ』による分身が来る。

 まだAP(アーツポイント)の溜まっていない試合開始直後こそ、一番のチャンスなのだ。ここは俺は仕掛けるぞ! 一気に行く!

 想定シーケンスは眠りの矢を仕込んだ『ソウルスピア』からの『抜刀ツバメ返し』だ。

 『ソウルスピア』から『抜刀術』だと削り切れないが、『抜刀ツバメ返し』なら削りきれるはずだ!

 200万の花火こと『デッドエンドV』も撃ちたいが『ソウルスピア』で動きが止められる分こちらが確実性で上だろう。

 そこは冷静に勝てる戦い方をするぞ、俺は!


「よし奥義――!」


 と発動させる前に――


「ふっ!」


 雪乃先輩がアイテムを使用した。

 それは――『毒薬』だった。

 自分自身が毒になるアイテムだ。

 毒になると数秒おきにHPがスリップする。


「あっ! くっそ! やられた……!」


 ああこれは、『ソウルスピア』はだめだな……!

 眠り状態は、ダメージを負うつまりHPが1でも減ると解除される仕様だ。

 つまり、毒状態なら眠ってもすぐ起きてしまう。

 雪乃先輩はそれを利用して――

 眠らせてからの大ダメージ攻撃のパターンを潰しに来たのだ。


「眠っている間にやられるなど、つまらんからな! 真っ向から殴り合おう!」


 先輩は不敵に笑うと、今度こそ真っ向から突っ込んで来た。

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