第58話 従者なら仕方ない……のか?
さて俺以外の二回戦の結果だが――
まあ雪乃先輩は当然勝利。やっぱり次は俺と雪乃先輩になったな。
で、あきらもしっかり勝ち残っている。流石マイベストフレンド。
『スカイフォール』の剣から衝撃波を発する攻撃性能。
タレント『闘神の息吹』によるAPの自動回復。
同じく『AP限界突破』によるAP最大値の上昇効果。
そして『スキルチェーン』による奥義で大ダメージも取れる。
『スカイフォール』の衝撃波で敵を牽制しつつ『闘神の息吹』でAPを蓄積。
それをかいくぐって相手が近寄って来た所を、溜まったAPによる奥義で迎撃というカウンター気味のスタイルがバッチリはまっていた。
『スカイフォール』の牽制力とAP自動回復が好相性過ぎる。
相手があの衝撃波に手を焼いている隙に、あきらはどんどんAPが溜まって奥義による処刑OK状態になってしまうからな。
多少攻撃を貰ってもダンスで即回復だし、やっぱりソードダンサーは強いな。
ただ、今日は『エリアルクレセント』は自重しているみたいだが――
使わないのか聞いたら『こんな所で使えるわけないよ!』ってジト目で睨まれました。
何はともあれ、逆サイドであきらも順調に勝ってくれて何より。
できれば決勝であきらと戦えるといいな。
あと、あきらのリアル知り合いの赤羽さんも残ってた。
俺か雪乃先輩の勝った方が、次彼女と当たるっぽいかな。
――と、そんな状況だ。
そして俺と雪乃先輩は、闘場への階段を並んで上っている最中だった。
これから、俺と雪乃先輩の試合が始まるのである。
「いよいよだなあ、蓮! いい試合をしような!」
「お願いしまっす!」
グータッチ。お互いの健闘を祈る!
「ふふふ……このゲームはいいよなあ。何せ本当に人やモノを殴ったり斬ったりする感触がするんだからな。他のどんなゲームの対人戦より刺激的だよな? ふふふ……」
「いや怖い怖い! なんか物騒なんですが!」
「む? おおすまんすまん。ワクワクし過ぎてな」
だ、大丈夫かな? この人……若干心配になって来たぞ!
「まあ、とにかく全力でかかって来るんだぞ! 何の遠慮もいらんからな」
「はい、そのつもりです!」
言われなくても、200万ミラの花火をぶっぱなすつもり満々です!
出来るんだから、やらない手はない! 俺自身撃ってみたいしな。
それに『レイブラの魔筆』は俺達に必要だ。
目的のためなら容赦のない残虐ファイトだろうが、俺はやってやる! 鬼になるぜ!
俺達が登場すると、会場がわっと歓声に包まれる。
『さぁ! 続いての試合は、紋章術師でここまで勝ち上がった期待の超新星、高代蓮君対この大会を主催する神秘の武技のギルドマスター山村雪乃さんの対決です! 今大会屈指の好カードと言えるでしょう! プレイヤー解説の青柳あきらさん、どうですか?』
そう、さっきあきらが放送席に連れて行かれてたんだよなー。
『えーっと……そうですね、二人ともプレイヤースキルがすごく高いですし、ハイレベルな試合が期待できると思います。わたしも楽しみです』
『なるほど、ではどちらが有利と予想されますか!?』
『分かりません。どちらも頑張ってほしいですね』
『おっとぉ! 模範的回答ですが、実は高代君を応援しているんですよね!?』
『え……?』
『お二人は入学以前からのゲームフレンドらしくとても仲が良く、今では付き合っているようにしか見えないとのもっぱらの噂ですが? 彼氏を応援するのは当然かと!』
との先生の実況に、会場がざわざわし出した。
「何ィ!? 久しぶりに現れてくれた美少女ソードダンサーなのに……!」
「俺達のあきらちゃんがああああぁぁぁっ!」
「リア充は死すべき――! 死すべき――!」
「爆発しろおおおおおぉぉ!」
うっ。何か俺の方に殺気が向いて来るんですけど!
もう既にこの会場では、あきらと赤羽さんはアイドル的人気だからな。
『ち、ちちち違いますって……!』
あきらは否定するのだが、観客のヘイトは俺に向いたままだった。
そんな中、観客席でスッと立ち上がった男がいる。
「馬鹿な事言って騒いでんじゃねえぞ! あいつらはそんなんじゃねえんだよ! 付き合う付き合わないなんぞどうでもいい、崇高な関係なんだ……! 分かるか!? 青柳さんは高代のHimechanなんだよ! あいつは従者頑張ってるだけだ! 馬鹿にするやつは俺が許さねぇぞ!」
まあ、発言内容から容易に想像はつくが――
うん片岡。お前観客席にいたのな。
庇おうとしてくれてるらしいのはいいんだが……意味が分からんぞお前。
「なるほど従者なら仕方ない」
「おk。理解した」
「そういう事なら許可する」
「お仲間かよ。そうか、頑張るがいい」
通じたあああぁぁぁ!
何、みんなHimechanが一人はいるのが普通なのか!? んなわけないよな?
何かよく分からんが、観客のヘイトは抜けたらしい。一応片岡ナイス!
「ははは。大変だなあ、蓮も」
「……やれやれ、って感じですね」
「まあいいさ、それでは私達のバトルを始めるとするか」
「ですね!」
俺と雪乃先輩は、少し距離を取り向かい合った。




