第53話 対策装備?
というわけで――
一回戦のその他の試合は、あきらに雪乃先輩、ほむら先輩、それから赤羽さんには問題なく勝利していた。で、片岡は残念ながら一回戦負けと……
赤羽さんにはすっげー冷たい目で見られていたが、それがちょっと快感だったらしく、なんか若干喜んでいた。あいつの考えはよく分からん……
あと、ソードダンサー姿のあきらは大人気でした!
本人はとても恥ずかしそうだったが、会場にいる男子はすげー喜んでた。
赤羽さんもソードダンサーだから、あきらと同じで大注目を浴びていた。
けど赤羽さんはそんな会場の空気はどこ吹く風で、平気な顔をしていたのがあきらと正反対だった。
ただ、二人とも観客のハートを鷲づかみにしていたのは間違いない。
さて一回戦はそんな感じで終了し、大会は二回戦へと移る。
俺とほむら先輩の試合はもうすぐだ――
「次の試合を始めます! 山村ほむらさんに高代蓮君! 入場してください!」
ギルドのスタッフの人が呼び出しにやって来た。
「よし来た! 行ってくる!」
「頑張って蓮くん!」
おれは準備オーケーだったが、ほむら先輩は少し慌てた様子だった。
「ちょ、ちょっと待ってちょうだい! まだ準備が――必要な物が届かないの! もう少しだけ時間を……!」
「後もつかえていますし、そういった要望にはお応えできません。入場を拒否されるのであれば、不戦敗になりますが……」
……ふーむ。
「あいたたたた! 痛い、腹が痛い――! すいませんちょっとトイレに……!」
と、俺は大声を上げてうずくまった。
「だ、大丈夫か!? すぐに行って来いよ!」
「す、すいません――!」
これは認められるらしく、不戦敗とは言われなかった。
俺は一度ログアウトし、暫くそのまま待った。
多分あきらが気を利かせて――
ん。端末にメッセージ来た。
『ほむらさん、装備を届けてもらうのを待ってたみたい。大丈夫、もう届いたよ』
よしじゃあ戻ろう!
「すいません! もう大丈夫です!」
「そうか――じゃあ二人とも入場をお願いします!」
闘場に向かう階段で、ほむら先輩が俺に話しかけて来た。
「ありがとう。待ってくれたのね、下手な芝居だったけど」
「え? けっこう上手いつもりだったんすけど……」
「ははは。君、雪乃の友達の割にいい奴ね。でも試合は負けないから……!」
「どんな手を用意したのか、楽しみにしてますよ!」
みたところほむら先輩の装備は、ローブが黒一色のものから、真っ赤な羽飾りがあちこちに付いた、白基調のものに代わっている。見た目豪華でカッコいいな。
これがその待っていたアイテムか? 俺への対策用装備――なのだろう。
さて何が飛び出すかね――俺達は闘場に足を踏み入れた。
『さて二回戦の続いての試合は――先程は驚愕の一撃で魅せてくれた高代蓮君に全覧博物館のギルドマスター、山村ほむらさんの試合でーす! 全覧博物館はギルドランクでもトップ10に入るほどの有力ギルドですが、ギルドマスター自らの出場とは気合が入っていますね! 解説の雪乃さん!?』
今度の試合も、仲田先生の実況でお届けされるらしい。
『今大会の副賞のレイブラの魔筆が目当てでしょう。アイテムに目がない集団ですから。ですがアイテム収集ばかり行っているため、対人戦に関しては経験不足は否めません。蓮は一年ですが、プレイヤースキルは確かですし、ほむらに勝ち目はないでしょう。一撃でやられればいいと思います』
それを聞いてほむら先輩が怒っていた。
「おいこらうるさいわねー! 公平に解説しなさいよ! 公平に!」
『なるほど、果たして雪乃さんの予言の通りになるでしょうか!? 私としては、ほむらさんの装備するローブが気になりますが……あれは――?』
『あれは……ほむらが使っても宝の持ち腐れでしょうが――使う人間が使えば、かなり蓮を苦しめるでしょう。どんなものかは、見て頂ければわかると思います』
『なるほど分かりました、皆さん注目しましょう!』
どんな装備なんだ――? 気になるな。
『それでは――試合を開始してくださいッ!』
仲田先生の号令がかかる。
「ふふふ……待ってくれたのは感謝するけど、それが君の命取りになったわ。これが届いた以上は負けないからね! かなりのレアものだけど、使わせてもらうわ! レベル制限はあるけど、使う装備のレアリティは制限無しだもの!」
ほむら先輩はそう不敵に笑うと、高らかに叫ぶ。
「さぁフェニクスクロークよ!」
号令一下、ほむら先輩は淡い緑色の光に覆われた。
それは数秒の事で、光はすぐに小さく消えていく。
そして、ほむら先輩のステータス表示には、天使の輪のようなアイコンが。
「む――! これは……!」
自動復活のアイコンだ!
戦闘不能になると、一度だけ即座に復活することができるという状態だ。
これはアイコンの右上に1の文字があるから、レベル1の自動復活だな。
レベル1は最大HPの30%回復で復活だ。
なるほどこれが対策か……!
雪乃先輩も言っていたが、HP1からの一撃必殺スタイルの俺に、自動復活する相手は相性が悪い。一撃必殺スタイルなのに、二撃を要求されることになる。
自動復活後即攻撃されると非常に危険で、俺は瀕死かつスキル各種の再使用時間待ちの状態で、敵の攻撃を凌がねばならない。
そして奥義後もう一発撃てるまで待つ間に、敵側に再び自動復活になられてしまうと、それこそもうどうしようもなくなってしまう。
『おおぉっと出ましたエンチャント効果! 自動復活がかかったようです! そして、これが――レベル30制限下では、私の知る限り唯一の自動復活手段です! 僧侶の自動復活魔法習得も、レベル35です! ただしこのフェニクスクロークは、幻の剣と言われるスカイフォールに匹敵するレアリティを誇る装備! さすがアイテムコレクター集団! いい装備を取り揃えていますねー!』
ほむら先輩はにやりと不敵に笑う。
「これをミュージアムから運ばせていて、時間がかかっていたの。間に合った以上、君に勝ち目はないわよ! さぁ覚悟しなさい!」




