第47話 闘技場へ行こう!
UWの中で、俺達は浮遊都市ティルーナにあるレイグラント魔法学園の生徒という事になっている。
レイグラント魔法学園は世界最高の教育機関として名高く、その生徒達の有志による課外活動にはティルーナ王家からの公的な補助も約束されている。
それがギルドシステムであり、補助とはギルドハウスの支給なわけだ。
で、更に抜群の活動成果を残したギルドは、浮遊都市ティルーナ周辺に点在する人工浮島の領有をも認められる。
下賜された人工浮島をどう使うかは、そのギルドの自由だ。
今俺達の目の前には、最も趣味に走った使い方の例があった。
「おー……! あれが――」
ギルドショップ街から外れた都市外縁部に、巨大な折り畳み式の桟橋が架かっていた。
桟橋で接舷しているのは一つの人工浮島である。
そこには巨大な石造りのドームが鎮座しており、あちらこちらをお祭りみたいな大バルーンで装飾されていた。
NPCもプレイヤーも、桟橋を伝って多くの人がドームへと向かっていた。
これから始まるイベントを見物するためだ。
「どうだ? 立派だろう? あれがウチのギルドの闘技場さ!」
雪乃先輩が、誇らしげに胸を反らす。
そう、これは先輩たちのギルド、神秘の武技が所有する巨大闘技場の人工浮島らしい。
先輩がギルドマスターだから、彼女がここのオーナーとも言える。
神秘の武技は対人戦大好きっ子の集まりで、それが高じてこんな闘技場を造ってしまったそうな。対人厨恐るべし。
この巨大な施設が物語る通り、大手の有力ギルドの一つだ。
この専用闘技場でバトルイベントを色々企画し、その入場料や試合結果のトトカルチョ
で収益を得ているらしい。
で、今日は御覧の通り興行があるわけだ。
俺とあきらはその出場選手として呼ばれたのだ。
相手が雪乃先輩みたいにレベル200近いとか勝てる気がしないが、今日はレベル30制限の掛かる春の新人戦だそうな。
毎年やってる恒例イベントで、直前のクラス対抗ミッションのMVPには出場オファーが行く事になっているそうだ。
とはいえレベル制限はかかるけど、上級生もエントリーできる。
雪乃先輩も出るらしいし。俺達とデュエルしたがってたしな。
上級生はアイテムやタレントが俺達より豊富だろうから、きっと手ごわいだろう。
だが呼ばれた以上、俺は全力を尽くす所存です!
ここで無双して、ロマン砲の威力を世の中に知らしめてやんぜ!
魔改造からの覚醒! そしてジャイアントキリングですよ!
ボンクラーズの筆頭と呼ばれし紋章術師に光を!
「うわー。人がいっぱいだねえ。こんな大勢の前で戦うのは緊張するねー」
「まあ、あきらの場合は肌色成分的に嫌でも注目浴びるだろうしなー」
「うううう……だよねえ。ちょっと恥ずかしいなー……対人戦は好きだけどー」
「大丈夫さ! あきらは可愛いから、何を着ても似合うさ! こんなに可愛い子だったとは、EFのあのキャラからは想像もつかなかったぞ! なあ蓮もそう思うだろう?」
「ですねー。男と思ってたから、こっちで会って死ぬほどビビりました」
「はははは。だろうなー。しかし蓮達とこっちでも遊べて、私は嬉しいよ。今日は負けないからな! 当たっても手加減なしで行くぞ」
今日はトーナメント戦らしいから、先輩と当たるかは分からない。
まあ決勝まで行けばどっかで当たりそうな気はするが……
組み合わせはまだ決まってなくて、後で抽選するそうだ。
「もちろん、こっちも全力で行きますよ!」
「ふふふ、蓮くんは楽しそうだね~。目がキラッキラしてるよ?」
「そりゃまあ絶好のアピールチャンスだからな! 賞品も出るらしいし!」
あわよくば金欠も脱出できますね!
「きゅーきゅきゅー!」
「リューも気合入ってるな! よーしよし、優勝したら美味いもん買ってやるからなー」
「この子はリューって名前なのか? 守護竜の子供は可愛いなあ」
「雪乃さんは守護竜は持ってないんですか?」
と、あきらが問いかける。
「ああ。デュエルの仕様上、守護竜は原則禁止だからなー。対人戦で使えないものは、私はあまり――な」
「ははは、相変わらずゴリッゴリの対人戦厨ですねー」
「蓮こそ、筋金入りの不遇ジョブマニアじゃないか。蓮がその変な拘りを止めて対人戦に専念すれば、きっと私も勝てないと思うがな」
「いやー、でもそこに拘らないと俺じゃないというか……楽しくないんで」
「ふふっ。まあそうだな、蓮はそうじゃないと面白くないからな。紋章術師で何をするのか楽しみにしておくよ」
と、俺達は談笑しながら桟橋を渡りドームのエントランスへ向かう。
そこは入場チケットを買う人達で賑わっていたが、先輩がそれを避けるように俺達を誘導する。
「選手の入り口はこっちだ。ついてきてくれ、控室に向かうぞ」
神秘の武技のギルドメンバーらしき人達が警備に立っているが、雪乃先輩を見るとビシッと敬礼らしきポーズをしていた。
やっぱギルドマスターなんだなー。ほー、すげー。
「神秘の武技って先輩が作ったんっすか?」
「いや、私が入る前からあったさ、この闘技場もな。私は受け継いだだけだよ。ギルドマスター決定戦で優勝してしまったからなー。正直あまりガラでもないんだが」
そうだなあ、今まで別ゲームで触れ合ってきた雪乃先輩って組織のリーダーっていうよりストイックな職人気質で、一人で自分と向き合ってるタイプだからなー。
「まあ、基本的にみんな趣味の方向は一致しているから、特に問題はないがな」
と、地下に降りて少し行った扉の前で雪乃先輩が立ち止まる。
「よし着いたぞ」
扉を開けて中に入り――
するとすぐ近くに、見知った顔があった。
「あれ? 片岡かよ?」
「おお? 高代、お前もエントリーしてたのか」
片岡真一(1-B)
レベル31 盗賊 所属ギルド 知識の泉
で、まあこいつはHimechan好きの従者プレイヤーだ。
Himechanに尽くすためのゲーム知識を得るために情報屋ギルドに入るようなヤツだ。
ある意味ストイックなやつだわな。理解はできないが……
で、こいつのいる所には――
赤羽希美(1-B)
レベル34 ソードダンサー 所属ギルド 真実の姿
うん片岡のHimechanだ。一緒みたいだな。
でも前にちらっと見た所――この子、あきらの知り合いっぽかったような?
「うげっ!?」
あきらが苦虫を噛み潰したような顔になっていた。




