第45話 吹き矢からホーミングレーザーを放つ
「じゃあ次はHP減らすからなー」
というわけで俺は大範囲のディアジルサークルを放ち、MPを空にした。
で――ターンオーバーを発動しHPを1に持っていく。
これで『影矢』の効果は最大限になるはず。
では発射!
蓮の影矢が発動! バンディットウルフに25のダメージ!
バンディットウルフは毒になった。
うんうん発動したな。
で――
「おースリップダメージ増えるなー!」
3秒で50ずつ削ってる! おおこれは中々の威力か?
効果時間はどうなってるか見たかったが――残念ながら毒スリップが強力すぎて、30秒も経てばバンディットウルフが倒れてしまう。
これも20回ほど試したが、今度は発動率100%で必ず敵を削り倒していた。
「流石にHP減らすといい感じになるね~」
「ああ、このくらいやってくれると使えそうな感じするなー!」
攻撃手段の乏しい俺にはいいオプションかもな。
ただ、暗器のアーツが1戦闘に1回のみ発動可能っていうのが響いてくるが。
『影矢』を撃ってしまえば同時に『抜刀術』も使用不可になるのだ。
それぞれの判定が独立してたらかなり助かるんだがなー。
そうは問屋が卸してくれないらしい。
両方使いたければ、片方は後から合成していく方がいいな。
例えば『眠りの矢』を仕込んだ『影矢』で相手を眠らせた所を『デッドエンド』で一撃必殺とか、なかなかエグそうだが――
これをやるためには『影矢』⇒『仕込杖』合成⇒『デッドエンド』と手順を踏むしかない。
初めから『吹き矢』『仕込杖』がアイテムボックスにあると『影矢』を撃った時点で『デッドエンド』も巻き添えでその戦闘中は使用不可になってしまうからだ。
さて次は『眠りの矢』でHPの『影矢』行ってみよう!
「……ほーこっちは眠りの効果時間30秒が3分に延長と――あ、倒してどうぞー」
「『エリアルクレセント』っ♪」
あーいい眺めだー。
と、目の保養をしながら俺はメニュー画面からタレント『スキルチェーン』の奥義エディット画面を呼び出す。
今は『ターンオーバー』『ファイナルストライク』『抜刀術』の三種合成で奥義の『デッドエンド』がアクティブ状態だ。
アホみたいなダメージを叩き出す俺達のロマン砲なわけだが――
この編成をちょっと崩す。
具体的には『ターンオーバー』『ファイナルストライク』『影矢』にした。
合成成功! できた奥義は――『ソウルスピア』か。ほうほう――
「よしじゃあ最終段階――『スキルチェーン』に組み込んで奥義行くぞー」
「わかった。次ね~」
あきらは手近なところに沸いているバンディットウルフにスカイフォールの衝撃波を放ってダメージを入れる。それに釣られて、敵はあきらに攻撃を始める。
相変わらず便利な剣だなー。スカイフォールは。
さて行くぞ奥義!
これは武器もぶっ壊れるし、今の俺の懐にはかなり痛いので何回も試せない。
よーく見とかないとな!
「いつでもいいよー蓮くん~」
「オーケー、行くぞ奥義『ソウルスピア』!」
ビシュウウウウウウウゥゥッ!
おおおおお――! なんか凄いぞ!
吹き矢の先端から放たれたのは、最早矢の形をしておらず、紫色の光線だった。
貫くような細い光はかなりの高速で空中をグネグネと不規則に進み、バンディットウルフを貫いて高空へと消えていった。
蓮のソウルスピアが発動。バンディットウルフに251のダメージ!
バンディットウルフは毒になった。
ダメージは『デッドエンド』に比べれば全然しょぼいか……
おおでも毒スリップがさらに増して80になってる!
ああ、バンディットウルフが力尽きたか。
そして俺の持っている吹き矢も『ファイナルストライク』の副作用で崩れ落ちていく。
ああ、また一文無しに一歩近づいたぜ。
「おおおおおおおー! なんか凄い派手だったね! 綺麗だったよ!」
「ああ、すんげー光がぐねぐねして飛んでったなー!」
あの光線のスピードと複雑な動きは……あれって誘導弾なのかな?
なんかもうホーミングレーザーって感じだったが。
だとしたら、撃ったら毒や眠りを必中で入れられる奥義と考えても?
うわー当てたら一撃必殺のデッドエンドと真逆の特性だな。
あれは当てる所がネックになる奥義だからな。
ふむふむふむ――!
これは是非ともこの『ソウルスピア』のホーミング性能を確認せねば!
つまり、本気で逃げてくれる的が必要だ――!
あんなモブでは話にならない。
「あきら、場所変えようぜ! ちょっと訓練場行こう!」
訓練場は街中にある施設で、時間いくらでスペースを借りて対人戦の練習や指定した敵モンスターとのバトルが出来る。
経験値は入らないが、敵のモーションの研究とかに使うわけだ。
バトル好きならよくお世話になる施設だろう。
俺達も何回か対人戦しに遊びに行ったこともある。
あそこだとデュエル戦績には記録されずに戦えるから、気楽にやれるのだ。
まあ、格ゲーの練習部屋的に考えればいいと思う。
「うんいいよお。でも、何するの?」
「『ソウルスピア』がどのくらい追尾するか知りたいんだよ。あきらに向かって撃つから思いっきり逃げてみてくれ」
「なるほどね。おっけー、じゃあ行こうか」
「ああ、それからさ――」
「?」
「『エリアルクレセント』さ、下からスカートの中見えるから気を付けた方がいいぞ」
「ちょ……!? だ、だったらはじめから言ってよお! 散々見てから言わないで欲しいんだけど!? 蓮くんのえっち!」
あきらが顔を真っ赤にして抗議してきた。
「いや~つい言い忘れまして」
「ウソだ……! 絶対ウソだ……! も~!」
と言うわけで、場所を移して検証続行だ!




